《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》873 時間に埋もれてしまった歴史
さて、『OAW(こちら)』では一瞬でもボクにとっては十日ぶりだ。なのでし狀況を整理したいと思います。
まず、『大霊山』の元まであとしの場所まで來たところで、雄たけびを上げながら毆り合っている二人組に遭遇したのだったよね。関わり合いになるのは面倒そうだったからそのまま別のルートを探すために移した、までは良かったのだけれど、なぜだかその先にも二人組が居て……。
何度か行き來してみた結果、正解の道を通るまで先に進めない無限ループ狀態になっているのではないかと予想する。
で、その正解の道の最有力候補が、爭っている二人がいるその奧だと思われるのだったのよね。
そうなると當然バトルしている二人に近寄らなくてはいけなくなる訳で。相討ちで倒れたのでこれ幸いとササッと脇を抜けて行こうとしたところ、「無視するなんてひどくない!?」と呼び止められてしまった。
その自己中で勝手な言い分にイラっとしてしまったボクは、売り言葉に買い言葉な調子でけんか腰に言い返してしまう。
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これはさすがにまずいと思って、冷靜になるためにも休息期間を設けた、とこんな次第だったわね。
改めて現狀を考えてみると……、あれ?別にボク悪くないよね。まあ、最初からバトル上等な態度はもっとやりようがあったようにも思うけれど、あちらの俺様一番な態度に比べたら可いものだよ、うん。
ちなみに、こちらはひょろっと背が高い人の方だ。
そういえばもう一人、がっしり型の背の低い人の方は敬語的な口調だったからしは話がしやすいかもしれない。険悪ムードな人はいったん放置しておいて、彼と會話をすることにしましょうか。
「まあ、あなたたちが警戒するのも分かりますよ。わざわざ危険を冒してまでこんな何もない所にやって來るような酔狂な人間なんてそうはいないでしょうからね。だからこそこちらとしてもボクたち以外の誰かがいることに驚いているんです」
「……君たちの言い分は理解したよ。だけどいくらの上と役目を誤魔化すためとはいえ、何もないは言い過ぎだね」
???……ボクたちはここにやって來たのは、クンビーラ近郊の地下跡にあった絵畫の一つに『大霊山』が描かれていたからだ。しかもその拠は、他の四枚と同じくもしかして浮遊島に関係あるのでは?という緩(ゆるー)い推測によるものでしかない。
一方で彼は、この地に何かがあることを確信している風な口ぶりだ。
「やはり『大霊山』には何かがありますのね」
「なんだいそれは?あれは『神々の塔』だろう」
なんか仰々しい名前出てきたー!?
「太古の時代に作られたとされるもので、今となっては『天空都市』に通じる唯一の道さ。こんな常識をまさか知らないなんて言わないだろうね」
いやいや、知らないよ!どこの世界の常識だよ?あれですか、うちの常識は世間の非常識とかいうやつですか?……あれ?何か違う?
「はあ?『大陸統一國家』の首都の名前も知らないなんて、君たちは一どんな辺境で育ったんだい!?」
ボクたちの様子に、答えてくれていた人だけでなく背の高い人の方も割とマジで驚いている。そんな彼らの態度にボクたちの側も顔を見合わせてしまう。
薄気味悪くなるほどの噛み合わなさだわね。ここは一度わだかまりを捨てて、本格的にお互いの報を換し合わないといけないかしら。
しかし、どう切り出したものかな?話してみても一本気な最初のイメージとは大きく違わないみたいだから、こちらの無知に付け込んで騙すような真似はしないと思う。
どう見ても口で語るより拳で語る方が得意そうだしね。
そうなると、こちらも下手にな小細工はせず、率直に自分たちの事を話すべきか。
おやおや?この間も似たようなことを考えたような?
ま、まあ、それだけ単純、もといが真っ直ぐな人たちが多いということだよね、うん。決してあれやこれやと考えるのが面倒になっている訳ではないのだ!……多分。
「その、『大霊山』じゃなくて神々の塔でしたっけ?そこから天空都市に行けることは理解しましたけど、それは大昔の『大陸統一國家』時代の話でしょう?今でもその機構は殘されているんですか?」
「大昔だと?何をふざけたことを言っている!空に天空都市がある限り我らが國は不滅だ!」
「大陸を実効支配している四卿のうち三卿までが反旗を翻(ひるがえ)しているんだ。いくら『古代魔法文明期』の産を活用した天空都市であっても、すぐに限界を迎えるはずさ」
四卿?そのうち三つが反旗を翻した?
……もしかして『大陸統一國家』時代末期のことかしらん?そして四卿というのは、國やエリアの名前として殘っている地水火風のアレだよね。
なるほど。火卿、水卿、土卿の三つが大國として殘り続けている反面、風卿だけは小國が立していたのも、これで一応の説明が付くね。
つまり、支配者だった王様もしくは権力中樞に逆らって『大陸統一國家』の打倒を推し進めたから、その後も支配地域を維持することができたのではないかな。
反面、最後まで支配者側についていた風卿は力を削がれて、さらには何かの理由で分裂した、または細切れにされてしまったのだろうね。
三卿が風卿エリアの直接支配に乗り出さなかったことなど、いくつか疑問點は殘っているけれど、おおむねこの流れで間違いないと思う。意外と緩衝地帯を設けることで大國同士の爭いになることを防ごうとしたのかもしれない。
それにしても、彼らとは生きている時代が違うとはねえ。道理で話が通じないはずだよ。
「つまり彼らは大昔の人間の可能があるってことだよ」
「ちょっと待ってくださいまし。エルフなどの長命種族でもそんなに長くは生きられませんわよ?」「……もしや、ローブのやからのようなホムンクルスでしょうか?」
時間がしいと斷りをれて、コショコショと仲間で報を整理する。
「それなんだけど、この場所が無限ループしていることに関係があるんじゃないかと思うんだ」
このループは単に同じ場所に戻されるというだけでなく、あの二人の行までもが巻き戻されていた。
「単に空間的なものだけじゃなくて、時間的にも閉じられた場所なのかもしれないよ」
自分で口にした言葉にゾワリと特大の悪寒をじる。永遠の監獄に他ならないのだから。
- 連載中182 章
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