《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》83 ギルベルト宰相とビアージョ騎士団総長 1

開かれた扉からって來たギルベルト宰相とビアージョ騎士団総長を見て、私は驚きを顔に表さないようにするのが一杯だった。

まず目にったのはギルベルト宰相だけれど、今日も彼はいかつい鉄仮面を被っていて、こまるように背を丸めていた。

その姿は、私が見覚えているものとあまりに違い過ぎたため、この10年の間に一何があったのかしらと思う。

一方のビアージョ総長はいくつになっても若々しく、生気に溢れていたはずなのに、今日の彼は覇気がなく、まるでこの世の中には不運と不幸しかないとばかりに悲壯な顔つきをしていた。

そのため、何があったのか分からないけれど、総長には元気を出してしいと、小さく微笑みかけてみる。

けれど、総長はびくりとを強張らせた後に、痛みを覚えたような表を浮かべただけで、表が緩むことはなかった。

そんな風に、これまで見たこともないような2人の態度を見て、一どうしたのかしらと疑問に思う。

小首を傾げて考えている間に、フェリクス様と私に向かい合う形で置かれたソファに、2人は並んで腰を下ろした。

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フェリクス様はその様子を黙って見ていたけれど、ついと私に顔を向ける。

「ルピア、早く來すぎた2人が悪いのに、予定時間を繰り上げてもらって悪かったね」

「いえ、この後の予定は何もなかったから構わないわ」

話を聞いている宰相と総長の手前、もう1度はっきりと否定したけれど、フェリクス様は私の言葉を信じていない様子で顔をしかめると、顔を覗き込んできた。

「ルピア、君が目覚めてから數日が経過したから、眠る前に起こった出來事やその時に抱いていたしは思い出したかな。そうだとしたら、さぞ腹立たしい気持ちを覚えているだろう。約束通り、君がギルベルトとビアージョを罵るのであれば、私も彼らを悪しざまに言う手伝いをするからね」

「えっ?」

「あるいは、先日も言ったように、私を含めたところで3人まとめて罵ってもらっても構わないから」

フェリクス様はどうやら勘違いをしているようだ。

そもそも私がこの2人に會いたいと言ったのは、何かを咎め立てるためではなく、お禮を言うためなのに。

だけど、その前に……。

「ギルベルト宰相、1つ質問をしてもいいかしら? 答えたくないのであれば、そう言ってくれたら2度と尋ねないから」

「……何、……何でもお尋ねください」

久しぶりに聞いた宰相の聲は、聞き取りにくいほどかすれていた。

彼は言い直していたけれど、それでもかすれていたため、調を崩しているのかもしれない。

「以前の宰相は素顔を曬していたはずだけれど、どうして鉄仮面を被るようになったのかしら?」

私の質問を聞いた宰相は、びくりとを揺らした後、ゆっくりと両手を組み合わせた。

それから、何かを悩んでいる様子で、組み合わせた両手をぐにぐにとかしていた。

その様子を見て、もしかして言い辛いことなのかもしれないと思い、慌てて質問を取り消す。

「宰相、質問を取り消すわ。言い辛いことを尋ねて申し訳なかったわね」

私の言葉を聞いた宰相は、がばりと顔を上げた。

「王妃陛下が私に謝罪することなど、この世に一つもありません! あなた様は何だって私に尋ねることができます。ただ、私が何と答えるべきかを定めきれていないだけです」

宰相のあまりの勢いに目を丸くしていると、彼ははっとした様子で立ち上がった。

「あっ、申し訳ありません! 私はその……王妃陛下に対して虛偽を申し上げるわけにはいきませんので、事実を口にしようと考えていました。しかし、私は言葉選びが下手なため、王妃陛下がお心を痛めるような言い回しをしないだろうかと心配になって、言葉を発することをためらっていたのです」

「まあ」

私は宰相の言葉にびっくりした。

10年前の彼は、事実を正しく相手に伝えることのみに重きを置いていて、相手がどのようにじるかなど気に掛けたこともなかったはずだ。

それなのに、今は10年前と正反対になってしまったようだ。

彼に何が起こったのかしら、と考えていると、宰相は椅子に座り直し、未だっている様子で口を開いた。

「私が仮面を被っているのは、私がしでかした失態により、王妃陛下にとって私の存在がご不快極まりないだろうと推察されたためです。私の不敬さは正しく処理される予定ですが、それまでには一定の時間が必要なため、処分が下される前に王妃陛下とお目通りする機會があるかと思います。その際に、王妃陛下が私の顔を見なくて済むようにと配慮した次第です」

「えっ」

私がギルベルト宰相の顔を見たくないだろうと考えて、彼は顔を隠しているというの?

「で、でも、宰相は10年前からその仮面を被っていると聞いているわ。もしも私から顔を隠したいのであれば、そんなに前から被る必要はないし、私と會う時だけ仮面を被ればいいのじゃないかしら?」

「その場合、もしかしたら王妃陛下であれば、私がこの仮面を被った原因はご自分にあると考えて、お心を痛められるかもしれないと考えたのです。そのため、王妃陛下と無関係であることを示すため、10年前から仮面を被ることにしました。が……結局、私は全てを口に出しているので、あまり意味はありませんでした」

ですが、王妃陛下に虛偽を申し上げるわけにはいきませんし、なくとも周囲の者には、私の仮面と王妃陛下は無関係だと伝わったかと思います……と言葉を続ける宰相を前に、私はびっくりして二の句が継げなかった。

鉄仮面は重いし、暑いし、に著けることで不自由さをじるはずだ。

それなのに、私に気を遣って、10年も前から宰相は仮面を被り続けていたという。

「ギルベルト宰相、鉄仮面を被り続けたことに、例えば他人に顔を見せたくないといった他の理由はないのかしら?」

重ねて質問したけれど、きっぱりと否定される。

「はい、他に理由はありません」

それならばと、そんな宰相に向かって、私はおずおずと提案した。

「でしたら……今、その仮面を取ってもらえるかしら。私はギルベルト宰相の顔を見たくないとは、これっぽっちも思っていないわ。それに、話をする相手の表が分からないと、話をしにくいわ。そして、あなたが言ったように、私が原因で10年もの間、あなたに不自由を強いていたと思うと心が痛むの」

「そ、それは大変失禮いたしました! 今すぐ外します!」

宰相は慌てた様子でそう言うと、カチャカチャと音を立てながら鉄仮面を両手で摑み、勢いよく頭から抜いた。

すると、無骨な仮面の中から、10年分の年齢を重ねてはいたものの、以前と変わらない青いメッシュがった緑の髪をした理知的な顔が現れる。

「……っ、お、王妃陛下!」

ギルベルト宰相は私と目が合った途端、苦悶に満ちた表で慌てて頭を下げた。

ハッピーバレンタイン!(と言う話でもありませんが)

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