《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第147話 願い

「レイン・グランデュク・ド・オリオン、前へ!」

陛下からのお聲が掛かり、突然のことで混し、呆然とする。

だが、お父様が俺の背を押し、前に出す事で自然と足が進み陛下の前で跪く。

何が始まるのか、今の俺には想像も付かなかった。

「最後に一人、皆の者に紹介したいものがおる! この者は先の戦で第一功の活躍をしたオリオン大公爵の倅、レインである!」

陛下がそうぶが、市民達も、何人かの貴族達も何事かと騒つく。

そりゃ事知らなければ突然なんだと思うのは當然である。

俺の事を知っている貴族達も眉を顰めている。彼等の反応からも予定にはないことをしているのがわかる。そんな中でお父様と陛下だけが訳知り顔をしていた。

「先の戦爭において、今まで挙げた英雄達の活躍は皆の聞いた通りである。だがしかし、それらにも劣らない活躍をしたものがおる。それがこの者、レインである」

その言葉を聞いた民衆からおおー、という嘆の聲がする。

しかし、まだその聲は小さい。疑問九割嘆一割と言ったところだろう。

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だが、陛下は気にすることなく続ける。

「このレインは若干12歳にして類い稀な才覚を持っておる。なにせ此度の戦爭を予見し、誰よりも早く、そして的確に対応した。そのおで前線各地での被害は最小限に抑えられたと言っても良い!」

「おおおおお!!」

その言葉を聞き、ようやく民衆から歓聲が上がる。

「更には手薄の北方より突如現れたガルレアン帝國軍との戦において仮にではあるが魔導將としてこれを迎撃した!」

「おおおおぉぉぉぉぉー!!!!」

「そして、その一番の功績はあのガルレアン帝國の六魔將の一人、風のウィンガルドの首をその手自ら討ち取り、北の帝國軍との戦いを決定的なものとした!!」

「うぉぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!!!」

ウィンガルドの首という分かりやすい手柄に、ポルネシア王國民の歓聲は最高に大きくなる。

その歓聲を聞きながら陛下は改めて跪く俺を見下ろす。

「臨時ではあったものの、そちの働きは他の將軍達と比べても何ら遜のない働きであろう。そこで一つ、褒としてむものを授けよう。何がしい?」

民衆や貴族達の興や熱気と違い、俺の頭は冷めている。

どういう事。意味がわからない。俺は何も聞いていない。貴族としてここに呼ばれている以上、急に呼ばれても恥ずかしくない服裝はしている。

しかし、心持ちは違う。側から見れば薄く笑いこの場に見合う風格で跪いているように見えるかもしれないが、俺の心は焦りに焦っている。

何も聞いていないからだ。

それに何がしいかって。そんな、金に決まっている。

オリオン家は今回の戦爭における軍隊などの自費出費、俺の奴隷軍を集めるための奴隷購費、スプリング改造を施した戦車製作費などでかなりの大枚を叩いており、ポルネシア王國で王家に次いで金のある家という地位を失いかけている。迷いの森の希素材や希薬草、その他特権の數々を足しても頭を抱えるレベルなのだ。

また、戦爭に參加した兵士達への給料、戦死した者達の家族への弔金、オリオン家の傘下にいる被害にあった西部一帯を収める貴族達への見舞金などもあり、これからの出費も決して安くない。

事前に想定された事態故、対策は講じているが、貰えるものは貰えるに越したことはないのだ。

そう結論づけ、金がしい、と言おうと顔を上げる。

そしてこちらを真っ直ぐ見ていた陛下と目が合う。その瞳には何かを期待するような眼差しが見て取れた。

ますます意味がわからない。まさかここで無私の神でポルネシア王國への忠誠を誓えとでも言うのだろうか。

それはおかしいだろう。

俺は貴族だ。だから浮浪者のように道端に落ちてる小銭を拾ったりしないし、誰かに頭を下げて金を恵んでもらうようなことはしない。

だが、今回は大戦爭を勝利した褒賞である。を張って貴族として金を下賜されても何も問題はない。

しかしどうも雰囲気がおかしい。この狀況で一何をんでいるのか。

俺は陛下を見つめたまま何か報はないか神眼で周囲を見渡す。

まずはお父様を見る。先程の言葉からもこの話は事前に知っていたものと思われる。ならばお父様にヒントがある筈だ。

そう思ったのだが、お父様はお父様で怪訝な顔をなさっている。いや何でだよ。

誰か答えを教えてくれ。

「どうした、レイン? 六魔將の一人をその手自ら討ち取った褒だ。遠慮することはないぞ」

陛下が急かしてくる。

俺は冷や汗を流しながら周囲を神眼で確認し続ける。

そして、一人のをその眼に捉えた時、俺は今の狀況の全てを理解した。

そう言えばそんな約束をしていた。すっかり忘れていたよ。なるほど。お父様も呆れるわけだ。

「ふぅ……」

一つため息を吐く。お願いされた時は、まあ出來たらね、くらいの覚だったのだが、まさかここまでお膳立てされるとは思わなかった。

もう逃げ場がないじゃないか。ここでお金がしいなんて言ったら天地ひっくり返る。

狀況は分かった。ならば俺がする事は、彼とした約束を果たすだけだ。

心が決まれば頭が冴え、気持ちが整ってしまう。貴族としての教育の賜だろうか。俺は今度は心からの真剣な眼差しを陛下に向けてこう上告する。

「私が陛下にむ褒。それは陛下のご息、アリアンロッド・アンプルール・ポルネシア姫のです」

「ほぉ?」

陛下が興味深そうに眉を上げ、こちらを見下ろす。その瞳を真っ直ぐけながら、俺は答える。

「陛下もご存知の通り、私とアリアンロッド姫はき頃より許嫁として將來を約束されたの上でございます。しかし、それは貴族としての契り。ですが、私は一人の男として、心からアリアンロッド姫をしております。もしお許しいただけるのであれば、この場を借り、アリアンロッド姫に誓いの言葉を述べさせていただければ、これ以上の喜びはございません」

「ほぉ……それが貴公の願いか? 葉えるみは一つだけであるぞ?」

陛下が念押しをしてくる。それに対し、俺ははっきりと力強く頷く。

「はい。これが私の願いです」

「よかろう! その願い、聞き遂げよう!」

陛下は力強く頷くと參列者に向かって響き渡る聲で目的の人を呼ぶ。

「アリアンロッド! 前へ出なさい!」

「はい! お父様!!」

カツカツというヒールを響かせて歩いてきたのは、この場の誰よりも著飾り、この上なくしく裝飾されたアリアンロッドだった。

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