《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》874 閉鎖空間

ボクの予想を聞いて、ミルファとネイトは揃って不快をあらわにしていた。なぜなら、仮にこの予想が當たっていたとすれば、凸凹コンビはいつからなのか分からないほどに長い年月を、この無限ループに閉じ込められていることになるからだ。

しかも、質が悪いことに本人たちが気付かないうちに、だ。

そして彼らとの會話から察するに、とても殘念なことながらこの予想は高い確率で的中してしまっていると思われるのだった。

「えげつないですわね」

「まだそうだと決まった訳じゃないからね。そこだけは注意して」

萬が一間違っていたら大事だ。例えば暗示とか催眠でそう信じ込まされているだけかもしれないし、斷定するのは確認を取ってからですよ。

「違っているのでしょうか?」

「本音と言えば違っていてしいかな」

ウルトラ、じゃなくてウラシマなタロウさんのエンディングを思い出してもらえれば分かるように、本人がまないタイムリープなんて不幸でしかないからね。

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「當時のことに詳し過ぎませんか?」

「『學園都市パーイラ』で歴史を専門に研究している人なら、それくらい知っているものかもしれないよ」

「なぜこのような場所にいるのでしょう?」

「フィールドワークに來ていたんじゃないの」

「自分たちのことを『大陸統一國家』時代の人間だと思い込んでいるようですけれど?」

「きっと演劇部に所屬しているんだよ」

「毆り合いをしていたのはどうして?」

「意見が対立して麻績追わず熱くなっちゃった」

「……それに該當している方がある意味恐ろしいと思いますわ」

「それでも可能はゼロではないよ」

「それ、逆に言えばゼロではないだけですよね」

ほほう、それに気が付くとはやるね、ネイト。まあ、かくいうボクだって最初からそんなビックリ展開だとは思ってもいない。あくまで真相はまだまだ闇の中だから、予想を覆されるかもしれないということだけは頭の片隅に置いておいてしかっただけの話だ。

「いずれにせよ、彼らに聞いてみればみれば分かるよ」

騙されるとか噓をつかれるといった心配はしていない。だって、あちらにはボクたちを騙すメリットがないもの。ボクたちと同じように『大霊山』の調査に來た人たちで、所屬とかを隠そうとしている?それならもttマシな噓をつくでしょう。わざわざはるか昔の人間を予想必要なんてない。

「話し合いは終わったのか?」

相談を終えて二人へと向き直ると、すぐに背の高い方が待ちくたびれた満載で問いかけてくる。その割に待っていてくれたのだから、何というか妙なところで律儀だよねえ。

「ええ。で、さっそくで悪いんですけど、一つ確認というか質問。お二人は『大陸統一國家』の関係者ってことになるんですか?」

「その通りだぜ」

「まったく違います」

しかし、返ってきたのはイエスとノー、両極端なものだった

「えーと、どういうことなのか説明してもらってもいいですか?」

「簡単な話だ。俺は國家に忠誠を誓う者だが、そいつは反逆を企てている不屆き者ってやつなのさ」

「圧政を敷き人々を搾取している今の國家など敬うに値しません!」

ああ、そういう意味なのね。毆り合っていた訳だから立場的には対立したものだと予想しておくべきだったわ。とはいえ、これで彼らが同時代の、そしてボクたちからすれば遙か過去の人たちであるということが分かった。

「了解。それじゃあ、今度はこちらが話す番ね。かなり衝撃的な容になるけど、できれば騒ぐのは最後まで聞いてからにしてしいかな」

こう言っておけば律儀な彼らのことだから、いきなりブチ切れて暴れ出すようなことはしない、といいなあ。

ボクの願いが通じたのか、凸凹コンビは最後まで大人しく話を聞いてくれた。が、さすがに信じてくれるまではいかなかったようで、終わるや否や文句を言い始めた。

「はっ!俺たちが時間と空間が巻き戻る場所に捕らわれているだと?そんな世迷言を信じろってか?」

「國家が滅亡してからどれだけとも分からないほどの時が過ぎている?いくら作り話と言っても笑えなさ過ぎです」

ボクが彼らの立場だとしても信じられないだろうし、似たようなことを言っただろうから、苛立つこともない。逆に、これで信じたと言われた方がビックリで胡散臭いというものだ。

「そう言うだろうと思ったよ。なら、ちょっと実験してみようか。二人ともここから離れてみてよ。ボクの想像通りだとすれば、どこかで先に進めなくなるはずだよ」

半信半疑どころか八割以上疑いの目でこちらを見ながら、二人は思い思いの方へと歩き出す。そして……。

「なぬっ!?」

「うわっ!?」

見えない壁でもあるように、または見えない鎖で繋がれでもしているように、ある一點から先へ進めなくなってしまった。

「ど、どうなってんだ、こりゃあ!?」

「まさか!?本當にこれ以上向こうへはいけないというのですか!?」

やっぱりね……。恐らく、彼ら二人はこの閉ざされた空間を構するための重要なピースの一つにされてしまっているのだろう。だからこそ離れることができなくなってしまっているのだ。

「……『天空都市』には『古代魔法文明期』由來のマジックアイテムがいくつも収蔵されていると聞きますし、そのような閉鎖空間を生み出すようなもあったのかもしれません」

聞けば背が低くて格の良い彼は、その強さもあって反側の象徴的な人の一人として祭り上げられていたらしい。

「ふん!曲がりなりにも俺と対等に戦うことができるくらいだからな。そんな扱いをされるのは當然だ!」

対するこちらもなかなかに大で、國家守護を擔う軍において、個人の戦闘力としては右に出る者がいないとまで言われた剛の者、なのだとか。

「彼たった一人に、何度も我々は作戦を潰されてきました。その強さは疑う余地もありません」

際立った強さゆえにお互いでなければお互いを止めることができない、という狀況を利用されたのかしらね。もっともそれは反側も同じだったようで、二人が戦っている隙に『大霊山』改め『神々の塔』への侵を果たす計畫だったようだ。

「ところがどっこい、この閉鎖空間を作られてしまった、と……」

「そう、ですね。……この際だから言ってしまうと、戦って押し切れるようであればそのまま、無理ならもっと広い場所におびき寄せる作戦でした」

二つの雑木林の間にできた通路のような場所だから、戦っている橫をすり抜けるのは難しかっただろう。現にボクたちも、ダブルノックアウトで気絶していたはずの二人に捕まってしまったしねえ……。

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