《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》270.エピローグ

「アリアケ様、本當に行ってしまわれるんですかい?」

俺やアリシア、他の星を救ったメンバーたちは名殘を惜しむ滅亡種人類王國『クルーシュチャ』の國民たちから引き留められていた。

國土の大半が海に沈み、人類は危機的な狀況にある。

もちろん、多の手助けはした。

本當はもっと復興を手伝いたいと思うし、オールティ國王でもある俺の政治手腕を発揮できれば、復興は數百倍のスピードで進むであろうという確信もある。

だが。

「すまない。これ以上、未來から召喚された俺たちがいると何が起こるか分からないんだ」

もともと、俺たちは邪神ナイアによって召喚された存在だ。

特にフェンリルやコレットは同一時間軸に同一存在が併存している狀態である。

システムが停止しているから良いが、いつき出し、何が起こるかは分からないのだ。

「そうですか。いえ、謝らないでください。アリアケ神、そして真の勇者でもあり、勇者の助言者でもあったお方」

國民の一人は言う。その者は新しい王としてこの國をこれから復興して行く。

「スフィアでの戦いは詩人が詠い、書に記し、口伝でもって、將來に伝えましょう。きっと我々がこの人類種を復興させ、あなたの活躍を心から謝していたことを千年後に伝えるために」

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「あれ? もしかして。それって。アー君?」

俺は微笑んで首を橫に振り、アリシアに続きを言わない様に伝える。

隣に侍る神の伝説。

おとぎ話にある、千年前の語。

初代勇者には神が侍り、様々な助言をして冒険の功を手助けしたという。

そして、勇者も大いに強く、魔王を打ち倒したという伝説。

あれが全部俺自のことだったとはな。

「驚くほどのことではないです。だって、先生なんですから」

伝承を知っていたラッカライも察したようだ。

全く、何だか恥ずかしいな。

出來れば止めてしいところだが、とはいえ、神代の救世主となった今、詩に詠われるのを無理に止めるのは不可能だろう。全人類が俺が救世主として邪神を倒すところを見てしまったのだから。

それにあともうし、この時代にやることも殘っているからな。し急いだほうが良いだろう。

俺は別れを惜しむ國民たちに別れを告げて、旅立つことにしたのであった。

さて、滅亡種人類王國『クルーシュチャ』から徒歩で半日歩いた場所に、一つの小屋が立っている。その扉をノックして顔を出したのは、

「遅い! 全くそろそろ完全消滅するところであったぞ! どうせギリギリまで復興を手伝っておったのであろう。この救世主め!」

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「ええ⁉ 冥王ナイア様」

「ひ、ひいいいいいい⁉ い、生きてたのかよ⁉ あの攻撃でえ⁉」

一部の人間は臨戦態勢を取るが。

「剣を下ろすが良い。我はもう冥王ではないぞ、フェンリルよ。あー、えっとい方のフェンリルと言うべきなのか? しかし、改めて見ると、やはり大人フェンリルはっぽくなるのであるなぁ! 我もびっくりであるぞ⁉ おお、あと、ションベン小僧よ、安心せよ、我はもう死にのようなものである! だが、最後に々やっておくべきことがあるのでな。アリアケに使い魔を放ち呼び寄せたまでのことだ! うむ‼」

俺は嘆息しながら言った。

「時間がないんだろう? 邪神ナイアよ?」

「おっと、そうであったな。手短にすまそう。救世主パーティーたちよ。ささ、るが良い!」

俺たちは中にってテーブルへと座る。

ナイアが話し始めた。

「取り急ぎなのだが、我はこの星が結構気にった。というかアリアケが気にったことを伝えておく! 出來れば結婚したいぞ‼」

「一番どうでもいい話題なのじゃ!」

「いやいや神竜よ。実は一番大事な話題であるぞ? なぜなら我が気にったからこそ、今回魔王として破壊させてしまった月《イルミナ》に、我自がなろうと考えておるわけだし」

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「月にって。ナイア様が⁉」

「うむ! この星には大切な衛星であるからな!」

「ああ、なるほどのう。だから未來でも月は天空にあり、イルミナ族は存続しておるのか」

二人のフェンリルが驚き、納得するという相反する反応を示す。

「その通りである! あと、千年後の打倒、偽神ニクスにも協力しようではないか! 今の我は勝てぬから歯がゆいものであるが、とにもかくにも、あんなんに我を倒した人類が負けたら悔しすぎであるからな! あ、でも、既にそなたらは打倒した後か。なら、変なじだな、って思ってるかもしれんな」

「ん? ああ、なるほどなあ。ずっと疑問だったんだが。あれはナイアのおかげだったのか」

「どういうことです?」

アリシアが首をひねった。

俺は微笑みながら答える。

「フェンリルが『呪いの窟』にいた理由と、初代勇者パーティーメンバーなのに、俺たちのことを一切覚えていない理由さ」

大人のフェンリルも頷きながら言った。

「おお、そうであるなぁ。そして、今、実際に神代にいるというのに、この記憶さえ、我が思い出そうとすると霧がかかったようになりおるぞえ。なんというのかの、勇者パーティーとしてハチャメチャな冒険したことは覚えておるし、現代でも、一緒に旅をしている中で度々、神代の勇者パーティーとの旅の記憶を思い出し、口にして來ておるが、顔と名が一切思い出せんかった。しかも、そのことをおかしいと思えぬかったのう。あれはもしや、儂を未來で主様たちに會わせるための、記憶の限定封印だったのかえ?」

「た、確かに『呪いの窟』で邂逅した時も大恩ある俺たちを思いっきり殺そうとしやがった。ああああああ!」

ビビアのトラウマが蒸し返されたらしい。

「フェンリルの言う通りである。ただ、封印する記憶は救世主パーティーや我といった者たちだけであるがな。それ以前に邂逅した者などは特に封印する予定はない」

「なるほどの。ああ、そう言えば將來魔王になるティリスとは、今回の事件の前に出會ったが、記憶に殘っておったのはそういうことか。で、そもそも、なぜ記憶を封印するのかえ?」

「星見……要は我のよく當たる未來予知のことであるが、現在の記憶を殘したまま千年を過ごすと未來は大きく変化するからである。的にはアリアケに偽神ニクスが接する前に、フェンリルが阻止してしまうのだ! その場合、ビビアたちはアリアケの弟子になれず悪墮ちして、世界を滅ぼす偽神ニクスの尖兵となってしまうのである!」

「お前たち最低だな」

俺は軽蔑した視線を勇者たちに送る。

「い、言いがかりだ! っていうか弟子じゃねえええええええ‼」

ビビアが絶するが、スルーして神代のフェンリルが話す。

「い、今の話を聞いてなお、私はアリアケ様を救いに向かうのですか?」

「うむ。それはもう心ゆえ、心配でどうしようもなくなるのだ。ま、仕方あるまい!」

「こ、だなんて……」

「うむうむ。だのと、たわけたことであるぞえ。これはよ。我が主様をしておるゆえ、世界が滅亡すると分かっていても、まぁ、やってしまうかもしれんのう」

「堂々と正妻の前で宣言しないでくださいな!」

アリシアが嘆息する。

だが、とにかく未來のフェンリルのダメ押しもあり、ナイアの言葉に噓はないと分かったらしいきフェンリルは決意を表明する。

「分かりました。では『呪いの窟』99階層で記憶の一部を封印した狀態で千年の月日を過ごします」

「だが、それはつらいことだぞ? 長い孤獨が君を苛むかもしれん」

だから、世界が亡ぶからといって強制出來る話ではない。

俺はそう言った。

しかし、

「いいえ。アリアケ様。逆です」

「逆?」

俺は訝し気にする。

すると、きフェンリルは初めて、心から微笑みを浮かべた。それは戦士ではなく、ただののような笑みだ。

「たった千年我慢するだけで、アリアケ様とまたお會いすることが出來て、生涯連れ添うことが出來るのです。斷る理由がありません!」

「そ、そうなのか?」

その斷固とした意志に俺の方がタジタジになる。

そして、

「ですが、確かに千年は長いですね。だからし前金を頂いておこうかな」

え?

俺が反応する暇もない。

周りが「あっ」としか言えない間に、俺の頬にはチュッとを押し付けたのだった。

「將來、また會った時に、続きをしたいです。アリアケ様」

は頬を染めてそう言う。

俺は思い出す。未來で初めて彼に會った時。確かに同じことが……。

「なるほどのう。ということはあれかえ? 付き合いは我が一番長い、ということかえ? ほうほう。どう思う、アリシアよ?」

「いやいやいや! 絶対ダメですよ⁉ 一番は私ですから! 正妻なんですからね⁉」

「ふーむ。だとすると二番かの。ふふふ、それでも大幅躍進よのう」

「ちょっ、待つのじゃ⁉ い、一概に出會った順番とするのではなく総合評価なのじゃからして⁉」

「むっふっふー。まぁ、未來で子會を開くとしようではないか。むふふふふ」

未來のフェンリルはどこまでもマイペースである。

「うむ、やはりこの星の者たちは面白いな! ま、月になってゆっくり観察させてもらうとしよう! ちなみにフェンリルの封印は萬が一、予知が外れた場合の保険として星神イシスにも協力してもらうので安心するが良い。神に一時的にリソースを與えて目覚めてもらう! 焦っておるから勇者パーティーの唯一の生き殘りを千年後に送るって言ったら協力は惜しまぬであろう!」

邪神だけあって悪い奴だなぁ。

「封印で思い出したが、そう言えばどうして我は未來において十聖のフェンリルと呼ばれるのであろう? ナイアは何か知っておるかえ?」

「無論である。それも実は此度の戦いによるものである。十聖とは十人の救世主たちと邪神……要するに我と戦ったことを讃えた敬稱であるな」

「なるほど、つまり俺、アリシア、コレット、ラッカライ、ビビア、デリア、プララ、エルガー、ローレライ。そしてフェンリル本人か」

全てはこの神代から現代へとつながっていたんだな。

「さて、もう本格的に時間がないな。消滅したらマジで終わりなので早々にそなたらを『未來へ送り還す』式を執り行うぞ! ちなみに、未來に送った時點で大フェンリルの記憶封印は無効化されるのでびっくりするかもしれんの。あ、小フェンリルだけはもうし離れるようにの!」

テキパキと送還の準備をし始める。

「ええ⁉」

「そんなこと出來るんですの⁉」

ビビアとデリアが驚きの聲を上げるが、

「當然であろう。元々ニクスが攻撃を仕掛けて星神イシスが負傷して、いアリアケを千年先に時空転移させた時點でマナは枯渇したのだ。それによってニクスもイシスも眠りに就いた。我は人類飼育計畫を進めるために予備のリソース、星二つ分のマナを使用したのである。アリアケの召喚と神の魔王化などにであるな」

「だからマナが地上にあんなにあったのか」

「うむ。でだ。枯死ユグドラシルに吸い取られはしたが、未來に還すくらいの分はこの星に殘っておる。なけなしであるがな!」

「じゃが、使い切ってしまっては今の人類は困るのではないのか? なのじゃ」

コレットの言うことはもっともだが。

「逆であろうな。今は一時的な休息をしておるニクスが起きてマナが大量にあるとなれば、この星は喰われて終わるであろう。そのためにも、今の人類を生き延びさせるためにも、マナは使い切るべきである!」

なるほどな。

それによって千年の猶予が出來る。

その間に人類はレベルアップし、俺の時空転移が完了する。

アリシアという大聖も生まれるし、星神イシスも聖武の鋳造に取り掛かる余裕も生まれるというわけか。

「了解した。結果としてかなり助けられるな、邪神ナイア。いや、月の神ナイアよ」

「我は自分のしたことがそなたらに許されることだとは微塵も思っておらぬ。しかし、神に打ち勝ったことに最大限の敬意を表させてしい。実に。実に素晴らしい戦いであったぞ、アリアケ、そしてその仲間たちよ。我はこの星に來て良かった! あと、ビビアにはめっちゃ笑わせてもらったぞ!」

「一言余計なんだよ‼」

そう言っている間にもナイアの式は完了を迎える。

「では、さらばだ。救世主一行よ! 月のがそなたらの導きとならんことを!」

「アリアケ様! 千年後にまた! 必ずお會いしましょう!」

二人の言葉に俺は微笑む。

「ああ、必ずまた會おう。二人とも」

俺がそう言った瞬間、目の前が真っ白になった。

そして、次見た景は。

「ああ」

そこはオールティ國の地下牢の階段を上がった先にある草原であった。

時間は夜。

空には煌々としい月が昇っている。

「久しぶりだな、ナイア」

うむ!

と言ったかどうかは知らないが、これまでもずっと俺たちを見守ってくれていたのだろう。確かにあいつは邪神だった。だが、その格はどうにも憎めない奴だったように思う。もしかすると上司が相當嫌な奴だったのかもしれない。

さて、もう一人、再會を誓った相手がいるが。

「主様!」

「おわっと⁉」

俺は草原へ押し倒された。

「フェンリル。久しぶり、というべきなのか?」

「ふふ、そうよな。だが、我は何も変わらんぞえ? 記憶は取り戻したが、それだけであるからのう」

ふむ。どうやらフェンリルの方は何も変わってはいな……、

「ンチュッ」

「うむ⁉」

俺のに、らかいが重なった。

それが何かなど考えるまでもない。

「ぷは。ぬふふ、我がどうやら一番らしいからの。余り我慢する必要もあるまいて。主様、しておるぞ。千年前のあの日からずっとのう。さあ、さてさて、邪魔がらぬうちに、もう一回……」

「こらああああああああああ‼」

「抜け駆けなのじゃああああ‼」

「むう、早かったのう。さすが我がライバルたちであるなぁ」

そう言うと、フェンリルは颯爽と狼の姿になって駆け出す。

しい並みを月になびかせて疾駆するその姿は、いつ見てもしい。

追いかける二人のを笑いながら引き離す狼の姿は、とてもとても、楽しそうであった。

~Side??????~

「ほう。今まで霧があったために渡れなかったエンデンス大陸の霧が晴れた、と?」

その聲は城に響く。

「はい。この魔大陸とエンデンス大陸は今まであの霧のために行き來が困難でした。しかし、それがなくなったとなれば」

その言葉に、この城の主は笑う。

「その通りだ。この魔大陸で普通に生息している者たちにすら、あの弱小大陸どの連中は勝てはしないだろう」

「いかがなさいますか?」

その言葉に、城主は不敵に笑った。

いや、嗤った。

「決まっている。弱き者たちが通る末路がどんなものなのかはな」

クックックックックック。

その不気味な笑い聲は、嗜に満ちたものであったという。

~第6章 Fin~

ここまでお読み頂き本當にありがとうございました!

第6章ではアリアケ達が生きる現代までの伏線がかなり回収されるエピソードになっていたと思います。

いかがでしたでしょうか?

ぜひ想をお聞かせくださいm(_ _"m)

さて、次の第7章からは【魔大陸統一編】を開始する予定です!

ぜひぜひ、お楽しみに‼

また、本作をしでも楽しんでいただけましたら、ブクマや想、↓の★ボタンでの評価など、『ポチっ』とよろしくお願いします‼

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