《【書籍化決定】公衆の面前で婚約破棄された、無想な行き遅れお局令嬢は、実務能力を買われて冷徹宰相様のお飾り妻になります。~契約結婚に不満はございません。~》今後の予定を確認致します。
水道視察から、さらに二日。
中一日で異國からの輸品の価格調査結果と実態のすり合わせと、並行して現地商人への聞き取り取材を行ったイースティリア様とアレリラは、ペフェルティ本邸に戻り、そこからダエラール領へと発つ為の準備を終えた。
り口まで見送りに來たペフェルティ夫妻に、イースティリア様が聲を掛ける。
「世話になった。ペフェルティ領の更なる発展を願う」
「えーと、旅のご無事をお祈りします〜!」
「幸多き道行きでありますように〜!」
「ありがとうございます。ペフェルティ夫妻のご多幸をお祈り致します」
別れの挨拶を終え、二人が馬車に乗り込むと。
「「また遊びに來てねぇ〜!!」」
ボンボリーノとアーハの二人は、馬車が見えなくなるまで大きく手を振り続けてくれた。
「何度會っても、気持ちの良い者達だ」
「そう思います」
と言っても、ボンボリーノは一つ、大変迷なこともしてくれたけれど。
「一度、ご予定の確認をしておきますか?」
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「ああ」
これは書になってしばらくしてから、定番になったやり取りだった。
イースティリア様ご自も予定はきちんと把握されているが、どこかへ移する際は、必ず一度は行う。
「これから二日かけてダエラール領にある、ダエラール本邸へ向かいます。道中の宿泊は、一度目はペフェルティ領の砦になります」
と言っても、さほど大きなものではない。
関所の石門に々兵舎が併設されている程度の小規模なもので、常駐する兵士も二、三人程度。
そして住み込みの管理者が一人居て、基本的には彼の住む小屋に泊まることになる。
「今回は大規模な人數ですので、ペフェルティ伯爵に許可を取り、事前に管理者に早馬で手紙を出しました。夜番に當たる者以外は、兵舎に泊まらせていただく手筈です」
「ああ」
「その後、領にれば半日程度でダエラール本邸に著きます」
ペフェルティ領と比べればダエラール領は雀の涙程度の領地なので、二日も走れば一周出來る。
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石門の管理者も含めて、アレリラがよく知る土地と人々である。
予定が一日ずれているので、滯在中に顔馴染み全員に會うのは難しいだろうけれど、領の様子を多見て回る程度の時間はある筈だ。
「滯在予定は二日です。その後はウェグムンド領を通って、大街道計畫予定地を北上してタイア領にります」
ダエラール領には、里帰りとフォッシモに対する領地課題の洗い出しと伝達を兼ねていたけれど、それに加えてアレリラはもう一つ、やらなければならないことが出來た。
母、タリアーナ・ダエラール夫人に祖父の話を聞くことである。
あまり親しく話す姿を見なかった祖父と母だけれど、なくとも嫁りの18歳までは共に暮らしていたのだ。
なら、アレリラよりも祖父について知っていることも多いはず。
「タイア領の後は、ロンダリィズ領へ向かって大陸間橫斷鉄道の視察。後に飛竜便にて南下し、海を越えてライオネル王國にある薔薇園に向かいます」
飛竜便は、現在帝都とロンダリィズ領にのみ存在する、特別な移手段である。
複數の飛竜によって車を吊る、『飛ぶ馬車』のようなもの。
しかし飛竜そのものが希であり、同時に乗れる人數もないため、現狀は資の運搬手段としての役割が主となっている。
相応に値段も張るのだけれど、薔薇園へ赴くには船では時間が足りない為、イースティリア様が手配して下さったものだった。
「大まかなスケジュールに関しては以上です。何か気になる點などございましたか」
「いや。アレリラは、飛竜便に乗るのは初めてか」
「はい。そもそも、外國へ足を運ぶのが初めてです」
薔薇園そのものも、以前と意識が変わったからか楽しみではあるものの、アレリラとしては飛竜便に乗れることの方が興味深い。
元々、新技や渡來品など、人の生活に関わる新しいものにれるのは知識を刺激される気質だった。
その點では、上下水道の査察も楽しく、またボンボリーノが提供してくれた甘薯(スイートポテト)も、育てやすさや量の観點から存在を知ることが出來たのも、非常に有益と言える。
「飛竜便と言えば、航空運搬に関して、最近々興味深い論文が島國から渡って來たのを知っているか?」
「存じ上げません」
アレリラは、素直にそう答えた。
イースティリア様は、帝都の中で誰よりも忙しいはずなのだが、業務以外の事柄に関してもよく報を仕れておられる。
いつやっているのか分からなかったのだけれど、以前聞いたところ、どうやら帝立図書館の司書長と仲が良く、彼から、目新しいものがあると提供されるらしい。
「どのようなものでしょう?」
「魔法生種であるグリフォンの繁に関する論文だ。今まで、飛行する大型種の育に関しては職人の技や、乗り手の適に頼ることが多かった」
「それは、存じ上げております」
飛竜も、生まれた時から世話をした者や、特別な適がある者でなければ乗り手になれず、それが數のなさに繋がっている。
運搬に関しては、國家間橫斷鉄道や船などであれば大量の荷を運べるが、地上を移するのは地形や移ルートを考慮する必要があり、どこにでも同じようにを運べるわけではない。
空を移出來るのであれば、その範囲が劇的に広がるので、どうにか飛竜や乗り手の數を増やせないかと、様々な組織や個人が試行錯誤しているが、今のところあまり上手くいっていなかった。
「グリフォンは、飛行大型種の中ではまだ気が大人しく、馴らし易く乗り手をさほど選ばないという話だ。人工的に繁が可能な技が確立すれば、運搬に関して、鉄道に匹敵する革命が起こるだろう」
「そうなれば、素晴らしい話ですね。帝國として支援を行うご予定が?」
「今のところ、學會での発表は繁に功した個がいる、という點に留まっている。的な技公開に関しては、島國首脳部がどのように考えているかによるな」
「なるほど。調べておく価値はある、ということですね」
「國際魔導研究機構や、他國も目敏い者であれば注目している可能はある。もし何らかのきがあった場合、即座にけるようにしておいてくれるか」
「畏まりました」
「島國には、幻獣種の研究をしている公爵がいて、その人がロンダリィズ伯爵家の嫡男と仲が良いという話もある。かの領に向かった際に、その話をしておくのも良いだろうと考えている」
「畏まりました」
おそらく、その話し合いそのものはイースティリア様が行うのだろう、とアレリラは察した。
「様々なことが、楽しみです」
「そうか」
アレリラが呟くと、イースティリア様が微かに笑みを浮かべる。
「君も楽しんでくれているのなら、嬉しいことだ」
ただの予定確認をしているだけなのに、どうしても仕事の話になる何とも言えない夫婦ですが、本人たちはだいぶイチャついているつもりですね。ワーカーホリック乙。
ちなみに、この『グリフォン』の話は『うちの王太子殿下は今日も愚かわいい』と言う作品に出てくる話です。こちらの話にキャラクター等が関わってくるわけではないですが、小話ですね。
ロンダリィズ家の話は、一部『悪徳領主一家の役立たず妖は、善良な搾取に邁進するようです!』という話に出てきます。長の話。ウィルダリアも登場しますので、合わせてお願い致しますー!
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