《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》272.魔大陸からの刺客を躙する
272.魔大陸からの刺客を躙する
~Sideアリアケ~
俺たち賢者パーティー一行はいわゆるバカンスに來ていた。
オールティ―國の運営も軌道にのり、人魔同盟學校も夏休みである。
そんなわけで安も兼ねて、賢者パーティーで、エンデンス大陸の最南端にある海辺の街『バンリエ』に來ていたわけだ。
ところがだ、いきなりモンスター襲來警報が鳴ったかと思えば、その容はキング・オーガ10という規模だったのである。
「やれやれ。話は後だ、ブリギッテ。行けるか?」
「もちろんです。いつでもどうぞ」
彼の言葉に、俺はスキルの詠唱を開始する。
ちなみに彼のいで立ちは、將の正裝【著】である。
メディスンの町では魔の森から発生したキング・オーガを1000人の冒険者を束ね撃退した。だが、今回は10のキング・オーガとなる。
ゆえに、神の如き力を存分に振るう必要があろう。
「≪攻撃力アップ(強)≫」
「≪スタミナ自回復(強)≫」
「≪鉄壁(強)≫」
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「≪オーガ必滅(強)≫」
「≪クリティカル威力アップ(強)≫」
「≪クリティカル率アップ(強)≫」
「≪カウンター率アップ≫」
俺はブリギッテに七重バフをかける。周囲の人間たちからは多重スキルの使用に驚愕の聲が上がるが、いつものことなので無視する。
時間を置かず、キング・オーガたちにもデバフをかける。ブリギッテの攻撃特を最大限活かせるようにデバフを厳選した。これにも驚愕されるがやはり気にせず続行する。
「≪防力ダウン(強)≫」
「≪回避無効≫」
「≪挑発(ブリギッテ)≫」
「神耐ダウン」
「クリティカル被ダメアップ(強)」
そして、最後にもう2つ!
「≪スピードアップ(強)≫」
「≪攻撃回數増加(強)≫」
そのスキル使用には、周囲から「ええ⁉」という驚きの聲が上がる。
本來、スピードアップも攻撃回數増加も、味方にバフとして使うスキルだからだ。なのにどうして敵であるキング・オーガに使用したのか理解出來なかったのだろう。
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ただ一人を除いて。
「さすがアリアケ君ですね。世界で一番、私のことを分かってます。お姉さん嬉しい。この後お禮をさせて下さいね♡」
「誤解を招く発言は謹んでもらえればと思うんだが……。買いに行ってるからいいものの……」
「では、行きます!」
無視された。
次の瞬間。
ドン‼
「う、うわあああああああああああ‼」
周囲にいた兵士たちが、ブリギッテが著を翻して走り出しただけで、その衝撃で吹き飛ばされる。真上に吹き飛ばされて落下してくる者もいた。
「やれやれ。≪衝撃緩和≫」
ケガをしないようスキルを使う。
「す、すみません! ですが、今は目の前のキング・オーガ戦のためにスキルを使用してください! ど、どこの誰だか存じませんが、名のある方と存じます!」
「自分たちのことより、街のため、民のためか。良いところだな、ここは。だが、心配はいらない」
「え?」
俺の余裕の聲に、兵士たちは虛をつかれた。
「俺がスキルを使った時點で勝敗は決している」
「あっ!」
彼らは目の前で繰り広げられる景に目を見開くことしか出來ない。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼」
キング・オーガに不意打ちで薄したブリギッテが、その神聖魔力をみなぎらせた拳を相手のみぞおちへと叩き込む。
「人間の拳ごときではダメージは通らないですよ⁉」
どこかの誰かが悲鳴を上げる。だが俺は微笑むだけだ。
「グオオ……オオオオ…」
「え?」
ギリギリギリギリギリ……
まるで矢弦を絞るかのような、なめした皮を引きちぎるような、生々しい音が海辺に響く。そして、
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」
パアアアアアアアアアアアアアアアアアアン‼
斷末魔とともに、裂ぱく音が炸裂した。
「はい、まずは一ですね。ところでこの著の洗濯代は経費で落ちますか?」
嫣然とした微笑みを浮かべた現人神が、キング・オーガの鉄よりも固いはずのを貫通し、その息のを止めていた。
「ガ⁉ ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン‼」
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼」
まさかの事態。
本來であれば余裕でこの海辺の街を。人々を。この大陸を躙できると確信していたのであろう、最強と謳われたキング・オーガたちは上陸早々に、可憐なに一を簡単に殺され、焦りながらも怒り狂う。
「ブリギッテに自然にターゲットが向いたか。挑発スキルは無用だったな」
「さ、三もいっぺんに!」
「それだけじゃないぞ。キング・オーガたちには≪スピードアップ≫に≪攻撃回數増加≫のバフもかかっている。10以上のキング・オーガに狙われているのと同じプレッシャーだ」
「ど、どうしてわざわざそんなことを⁉」
「ん? 決まっているだろう」
俺が答えるまでもなく、間もなく答えは拳により出される。
「グオ! ガア! ギイ‼」「グオオオオオオオン‼」「ガァァアアアアアア‼」
兵士たちには恐らく見えていないだろう。恐るべき速さで、その巨軀で連続攻撃を繰り出す。一撃一撃が致命傷。當たればその命はない。
「ひいい! もうダメだ‼」
兵士たちの絶の聲が聞こえる。
だが、俺は彼らに告げる。
「よく見ろ」
「え?」
「あれが絶するような景にお前たちには見えるのか?」
「あ、ああ……。し、信じられない。こんなことが⁉」
まぁ、一般兵士には簡単に信じることが出來ないのも無理はない。
「俺のバフをけたキング・オーガは攻撃をするたびにそのを損傷しているのだからな」
俺は微笑む。分からない、とばかりに混する彼らに説明をしてやる。
「ブリギッテは優れた戦士だ。そんな彼に≪オーガ必滅≫と≪カウンター≫、≪クリティカル≫アップ系スキルを重ね掛けしている。オーガには≪スピードアップ≫や≪攻撃回數増加≫というバフがかかっているが、このスキルには【命中率が下がる】という隠れデバフ効果がある。なら、その時に起こることは明白だ。無駄撃ちされまくるオーガの一回一回の攻撃に対して、ブリギッテは全てを回避して、その一撃ごとにクリティカル攻撃をカウンターとして命中させまくる、というわけだ」
「す、すごい。そこまで計算していたんですか!」
「まぁな。これくらいできなければ賢者は名乗れんさ」
「賢者? あっ、まさか、あなたはっ……!」
ズウウウウウウウウウウウウウウウンンンンッ……‼
次々にキング・オーガをカウンターで撃退する、シスター・ブリギッテ。
既に七を仕留め、殘り三だ。対するブリギッテは著をモンスターので汚しながらも、余裕の笑みすら浮かべている。
「ふむ。だが、すまないな。この奇麗な浜辺をモンスターのでここまで汚すつもりはなかった。浄化などは後でアリシアがしてくれうと思うが」
「アリシア? えっ⁉ あの大聖アリシア・ルンデブルク様ですか⁉ だ、だとすればあなたはやはりっ……!」
「ギアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」
のんびり話している暇はない。余りの圧倒的なこちらの力に、モンスターといえども本能的な悔しさと怒りで絶を上げている。
「本來余裕だと思っていた躙劇が夢想だと、現実を命でもって分からされたのだからな。悔しいものだろうな」
まぁ、それはお前らの都合でしかないし、こちらへしようとしていた殺戮が、自分たちに跳ね返ってきただけの、因果応報でしかないが。
「こちらは被害者で、正當防衛だ。では終わりにさせてもらうぞ、雑魚ども」
「ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ‼」
キング・オーガたちが俺に向かって吼える。
今回の圧倒的な敗北の黒幕が俺だと気づいたからだろう。だが、俺に≪威圧≫は効かない。
「そんなことも分からないから、貴様らを雑魚と言ったのだ。だが、俺も手伝おう。浜辺をこれ以上汚されると、この街の人々の生活に支障が出るやもしれん。お前らはその命で贖罪するがいい」
俺はキング・オーガたちを嘲笑する。
すると、挑発スキルが効いたかのように、ターゲットは俺へと変わったようだ。こちらに突撃してくる。
「スキル≪罠設置≫。おい、お前たちは離れていろ」
「け、賢者様⁉ アリアケ様みずから戦うのですか⁉」
「當然だ。キング・オーガくらいならば、戦士ではない俺でも倒すことなど造作もないさ」
その言葉が耳に屆いたのか、更に激憤して奴らは俺に殺到する。先ほどのは強かった。だが後衛の俺ならば殺すのはたやすいとその目は語っていた。だが、
「やれやれ。これだから馬鹿はしやすくて助かるんだ」
フッ……。
三のキング・オーガたちはその姿を忽然と姿を消したのだった。
「よし、一旦狀況終了だな。ブリギッテ、すまないが結界を張っておいてくれるか?」
「ええ、分かりました! それにしても相変わらず挑発がうまいですね。お姉さんも見習わないと」
そんなことを言いつつ、俺たちは浜辺を後にしようとする。今後の対応のために必要な人員へ連絡などをするためだ。
「ア、アリアケ様‼ あの、最後は一何が起こったんですか⁉」
兵士の一人がぶように言った。ああ、そうか、分からなかったのか。どうしても、皆分かっているものだと思って説明を省いてしまう。大賢者であり英雄である俺の悪い所なのだろう。
「こちらに來て見て見るといい。一目瞭然だ」
「え? ……ああっ⁉ こ、これはもしかして」
「そうだ。単なる落としだ」
「こ、こんなものでキング・オーガを無力化してしまったんですか⁉」
驚愕する兵士たちに俺は微笑みながら言う。
「ははは。落としほど便利なものはないさ。無論、倒してしまっても良かったが、生け捕りにする必要があったからな。あえての落としというわけだ」
「ち、調査?」
「ああ。魔大陸からキング・オーガが渡って來るなんて異常事態だ。殺さずに無力化するべきだろう?」
「そ、そこまで考えてあの戦いを⁉ いきなり員されて、碌な準備もなく!」
「その上、いきなり10のキング・オーガとの戦闘になったのに、その後のことまで考えて戦われたというのですか⁉」
兵士や冒険者たちが驚愕と尊敬のないまぜになった瞳を向けてくるが、俺はそれに対して何でもないことのように答えるしかない。すなわち、
「これくらい大したことじゃないさ」
と。
何はともあれ、魔大陸からの刺客たちとの緒戦。
それを圧倒する形で、その戦いは幕を閉じたのであった。
落としから悔しがるオーガたちの絶の聲が轟いたが、それも俺のスキル≪サイレス≫によって黙らせることで、海辺の街『バンリエ』は完全に日常を取り戻したのである。
ところで、し落ち著いてから、遠くの巖場の方で、
「ん? なんだこのは?」
「ピンクの海藻か何かと思ったが、のようだな」
「いちおうアリアケ様の元に連れて行くか? 気絶はしてるがケガは大したことなさそうだ」
そんな聲が聞こえた來たのだった。
【小説・コミック報】
コミック第3巻、ノベル第6巻が2023年3月7日 発売予定です!
小説・コミック共々大人気です。支えてくれた皆さん本當にありがとう!
ご予約頂けると嬉しいですが、<無料>試し読みだけでも、ぜひぜひご一読くださいませ(o*。_。)oペコッ
https://magazine.jp.square-enix.com/sqexnovel/series/detail/yuusyaparty/
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【1st anniversary記念PV】
SQEXノベル1周年記念に、PVを作頂きました。
https://youtu.be/iNAobmIPNhk
CV:井上 喜久子さん・保志 総一朗さん
公開中!!
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【応援よろしくお願いします!】
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アリアケとブリギッテは一この後どうなるのっ……⁉ あと最後のは誰⁉」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直にじた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本當にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。
スカイリア〜七つの迷宮と記憶を巡る旅〜
空に浮かぶ世界《スカイフォール》に暮らす少年ナトリは生まれながらに「飛ぶ」ことができないという致命的な欠陥を抱えていた。 王都で配達をこなす変わり映えのしない日常から、ある事件をきっかけに知り合った記憶喪失の少女と共に、少年は彼女の家族を探し出す旅に出る。 偶然に手にしたどんなものでも貫く特別な杖をきっかけに、彼は少女と自らをのみ込まんとする抗いようのない運命への叛逆を決意する。 やがて彼等の道行きは、世界に散らばる七つの迷宮に巣食う《影の軍勢》との世界の存亡を懸けた熾烈な戦いへと拡大していくのであった。 チートあり魔法ありダンジョンありたまにグロありの王道冒険ファンタジー、の予定です。 ※三部構成第一部完結済み
8 183僕の前世が魔物でしかも不死鳥だった件
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