《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第4章 1963年 プラスマイナス0 - すべての始まり 〜 8 智子の両親(3)
8 智子の両親(3)
昭和三十九年六月、あと三ヶ月ちょっとで、待ちに待った東京オリンピックが開催される。しかし東京中が沸き返っていようが、勇蔵にはまるで関係のない出來事となるだろう。
最初剛志はタクシーに乗って、城に出ようと思ったのだ。まだは高かったが、壽司屋にれば酒は飲めるし、落ち著いて話を聞くことだってできる。
ところが林を出たところで、「うちに、來ないか?」とポツリと言った。それから返事を待つこともなく、勇蔵はよろよろ自宅方面に歩き出した。
剛志は一瞬戸ったが、ついて行けば智子の母親にだってきっと會える。
ただ一方で、こんなにすぐ會ってしまうことに、多の恐れをじたりもしたのだ。
――きっと父親以上に、その苦しみは大きかったはず……。
そうしてそんな恐れは、予想以上の現実となって剛志の前に現れた。
思った以上に、家の中はきれいに片づけられている。
ただテーブルに、ウイスキーの瓶と飲みかけのグラスが置かれたままで、酔った勢いで林にやってきたことがうかがえた。
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「あの、奧様は……?」
リビングに通され、いきなり出されたウイスキーをひと舐めしてから、剛志は黙ったままの勇蔵へそう切り出した。
「奧様は、お元気ですか?」
「あいつは……寢ている」
「合が、悪いんですか?」
「悪いと言えば悪いし、そうでないと言えばそうではない。なんだ? 今度はうちの房のことを載せるつもりか?」
「いえ、違います。そういうつもりじゃないんです。えっと……実は……」
その瞬間、不思議なくらいスラスラと、頭に大噓が浮かび上がった。
昔から、奧様を存じ上げているんです――そこだけは、唯一本當のことだったが……。
「わたしの娘が、行方不明の智子さんと中學まで一緒でした。そしてあの事件の後すぐ、わたしらは仕事の都合で、この土地を離れることになったんですが、つい先日、転勤でまた戻ってくることになりまして……」
そう続けて、剛志は深々と頭を下げる。するとすぐ、勇蔵の目つきが明らかに変わった。突き刺すような印象が消え、僅かながら目元までが大きくなったように見えるのだ。
雑誌の記者でないと知って、この時間を意味ないものと切り捨てるかとも思ったが、そんな心配はこの瞬間に杞憂となった。
それからは、多気を許したようで、勇蔵自らいろんなことを話してくれた。途中、家政婦だというが二人して、いきなりリビングに現れる。ところがチラッと目を向けただけで、勇蔵は二人になんの反応も見せなかった。
家政婦を二人も雇う。となれば、やはり佐智は病気なのか?
何気なくそんなことを思って、ふと、軽い気持ちで剛志は尋ねた。
「家政婦も二人だと、けっこうお金がかかるでしょう」
すると、そんなことは知らんと言ってから、あらぬ方へ目を向ける。そうして視線をかしながら、彼は剛志への答えを口にした。
「なんだかよくわからんが、昔、うちのに世話になったというが來て、そうそう、ちょうどあんたと同じくらいの年頃だ。確か、役所に勤めているとか言ってたな。そいつがいきなり、ここにやって來てな……」
の回りの世話をさせてほしい、ぜひ、家政婦をけれてくれと言ってきたらしい。
にわかに信じ難い話だが、さらに費用もいらないからと、床に額をりつけんばかりに頼み込んだと言うのだった。
そうして當初拒んでいた勇蔵も、そこまで言うならとけれる。すると今では、食事の世話から何から何まで頼むようになっているらしい。
昔世話になって、その恩返しがしたい。
父、正一にもそんな人がいて、そのおかげで剛志もずいぶんと助かった。
――この時代にはこの手の話、けっこう多かったのかもしれないな……。
なんと言っても戦爭があったし、きっと多くの人が誰かに助けられていたのだろう。そして、それから三十分も経たないうちに、勇蔵は酔いが回って目を開けていられなくなった。なんとか出ていた聲も聞こえなくなり、気づけば完全に寢ってしまう。
だから剛志は仕方なく、起こさぬようにしてリビングを出た。それから家政婦に聲がけしようと、長い廊下に立って「家政婦さん」と呼んでみる。
ところが一向に返事は返らず、代わりに妙な音が耳に屆いた。
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