「ここか」とベルトは呟く。

場所は町。　北國で、吹雪けば雪に視界を奪われるような土地でも町はある。

まして、長距離ワイバーンレースのコースとして選ばれた場所。

何も、隔離されてるような辺鄙《へんぴ》な場所を選択するよりも、

「今日は天候が良いから、選手を応援するために見に行くかぁ！」

と近隣住民が移しやすい場所が良い。

――――とは言え、雪國の民を基準としての話であり、ベルトたちの基準とはし違う住みやすい場所なのだ。

もっとも、ベルト本人は魔王討伐を目指していた時代に世界中を旅していたので、雪國の知識がないわけでもない。

閑話休題

ベルトとメイルは地図を確認して、目的地に到著する。

「集合住宅《マンション》ですね」とメイルの印象。

レンガ作りの大きな建。　複數の住民が暮らしている。

そんなイメージ通りの集合住宅《マンション》が地図に描かれていた場所だった。

「地図では、ここで間違いは……ない」

「ろう」とベルトは歩むを進めた。

扉を開けると広い空間。

奧に階段が見える。それも２つ、上に進む階段と下に進む階段……

「ここには地下が？」とベルト。

それは問いかけの言葉だった。　メイルに問うたのではない。

ベルトは、自分たち以外の存在に気づいてたのだ。

部屋の隅。気配を殺すように老人が床に座っていた。

「……冒険者ですかな？」と老人。

何がおかしいのだろうか？「かっかっか……」と笑い聲を鳴らす。

「俺たちは冒険者です。冒険者ギルドからの正式な依頼ではないのですが……」

「はいはい、聞いてますよ。教授《プロフェッサー》は下の階。地下で待っています」

「ありがとうございます」と頭を下げたベルト。　メイルも続けて「ありがとうございます」と禮を言った。

「なんだい？　そんな謝される事なんて……」

「いえ、案のために待っていてくださったのでは？」とメイルは不思議そうな顔。

今度は老人が驚く番だった。

「こいつは驚いたね。冒険者って言うから、どんな荒くれ者が來るかを構えていたけれども、存外禮儀正しいね。覚えておくよ……フランチャイズ家のギルドね」

再び老人は「かっかっかっ……」と笑い、ベルトたちを見送った。

階段を下がる最中に、「凄い方でしたね」とメイル。

「あぁ、おそらくは何らかの達人だ。言葉をえながら、こちらを観察していた。」

「やっぱり、そうでしたか」

ここで驚かずに、気づいてた事にメイルの長をじたベルトだった。

やがて、階段が終わる。　そこには1階と同じ広さの部屋。

なんの仕切りもなく、空間が広がっている……そんな印象の部屋だ。

しかし――――

「な、なんて言いますか……雑です」

メイルは綺麗好きだ。　もちろん、ダンジョンに潛り、返りを拭う事も許されない日々も送るので、許容範囲が広いはずなのだが……

どうやら、この汚部屋は、メイルの許容範囲から多越えているようだ。

「し、しかし、どこにもいませんね。教授と言われている方……」

「いや、いるぞ。そこだ」とベルトが指した場所。しかし、そこは――――

「本が積まれているだけに見えますが……」

そんなメイルの言葉に反応したらしい。本が崩れた。

「いるよ、ここ！」と手が本の隙間から生えている。

どうやら、本を布団の代わりにして寢ていたらしい。

「私がこの研究施設の責任者。教授《プロフェッサー》だ」

そうやって姿を現したのは、だった。

彼は、眼鏡をかけ白を著ている。

教授らしい恰好をしているが――――

（凄い綺麗な髪。銀の髪が腰まで……）

メイルはそのしい髪にため息に似た稱賛を送っていた。