《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》85 ギルベルト宰相とビアージョ騎士団総長 3
私の質問をけたフェリクス様、ギルベルト宰相、ビアージョ総長の3人は、これ以上ないほど真剣な表を浮かべた。
それから、ギルベルト宰相は椅子に座り直すと、姿勢を正して深く頭を下げる。
「私には王妃陛下を敬う心が不足しておりました。覚悟と慈の心を持って我が國に嫁いできてくださった王妃陛下のことを、これっぽっちも理解していなかったのです」
一大事とばかりにそう口にする宰相を前に、私は首を傾げた。
「言葉にされていない相手の気持ちを理解できないことは、當然のことだわ。それに、私がこの國に嫁ぐ際に、覚悟や思いやりを抱いていたとしても、それは誰もが抱くものと同じで特別ではないわ」
ギルベルト宰相は頭を下げたまま、自分のズボンの太もも部分をぎゅっと握りしめる。
「……そんな言葉をさらりと口にされるような方だということを、10年前の私はこれっぽっちも気付いていなかったのです。いえ、王妃陛下は嫁いで來られた時から変わらず、優しさに溢れたお言葉を口にされていましたが、その思いの深さに私が気付いていなかったのです」
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「…………」
宰相がものすごく思い詰めている様子だったので、否定してはいけないと思い口を噤む。
「私はい頃からフェリクス王を見てきました。そして、何一つ劣るところがなく、誰よりも努力しているにもかかわらず、1の髪というだけで王太子に就くことができないことに憤りをじていました」
ギルベルト宰相の気持ちは理解できた。
なぜなら私もい頃からずっと、髪を理由にフェリクス様がご両親から大事にされない姿を夢で見ており、納得できないものをじていたからだ。
「だからこそ、誰にもこれ以上文句を言われぬよう、王の隣に立つ方は複數の虹髪であるべきだと、ずっと考えてきました。しかし、その考え方こそが誤りだったのです。私は髪によって不當に差別された王を見てきたはずなのに、同じことをしていたのですから」
10年前、ギルベルト宰相は「虹の乙」であるアナイスを側妃にと勧めてきた。
だからこそ、私はい魔の心を封じなければならないと思ったのだ。
「王妃陛下、あなた様は私が想像もできなかった完璧な方です。それなのに、私は髪だけを理由に、……別のを王の隣に立たせようと考えました。1人で勝手に、獨善的に、話を進めようとしたのです。私は王妃陛下をこそ敬い、我が國唯一の王妃として崇めるべきだったのに」
ギルベルト宰相は顔を上げると、心底悔いているような表を浮かべた。
「王妃陛下の価値を理解せず、正しく敬わなかったこと。獨善的に虹髪のを王家に迎えようとしたこと。どちらも許し難い私の罪です」
「ギルベルト宰相……」
何と返事をするべきかしら、と躊躇っている間に、彼の隣に座っていたビアージョ総長が膝の上に置いた手をぐっと握りしめる。
どうやらビアージョ総長は、次は自分が罪を告白する番だと考えたらしい。
黙って見つめていると、総長はごくりと唾を飲み込み、張した様子で口を開いた。
「ルピア妃、まずはご懐妊されましたことについて、心よりお喜びを申し上げます。私は10年前、ゴニア王國から戻った際、そのことを1番にお祝い申し上げるべきでした。にもかかわらず、私はそのことを1言も口にすることなく、それどころか……フェリクス王に別のを勧めたのです」
まずは黙って話を聞くべきだと考えていたにもかかわらず、総長の張と反省する気持ちが伝わってきたため、思わず口を開く。
「ビアージョ総長は武のトップにいるのよ。何よりもそのお役目が優先されるのは當然のことだわ。あなたはその時知り得ていた報の中から、正しいと思うことを口にしただけでしょう?」
「私が持っていたのは、誤りばかりの報です! ルピア妃について正しい報を、何一つ持ち合わせていませんでした! あなた様は王の命を救われたのです! 本來であれば、私が守るべきであった王の命を!! そんなあなた様に対して、無知蒙昧なる私は、口にしてはいけないことを口にしたのです」
ビアージョ総長の格から鑑みるに、彼は私が魔であることを知らなかったか、信じることができなかったかのどちらかかもしれない。
だからこそ、私が魔だと思いもせずに、それ以外の報の中で判斷を下し、あのような発言をしたのじゃないだろうか。
「もしかしたら総長は、私が魔だということを聞いていなかったのではないかしら?」
「…………」
答えられないとばかりに口を噤んだ総長を見て、呆れた思いが浮かんでくる。
何てことかしら、総長は私が魔であることを一切聞いていなかったのね。
自分に都合が悪い事実は全て口にして謝罪するのに、都合がいい事実が出てきた際には口を噤むのだから、総長は自分自を庇う気持ちが全くないようね。
「ビアージョ総長、10年前のあなたが、私が魔であることを知りもしなかったのであれば、咎められることは1つもないわ」
私は當然のことを口にしたのだけれど、ビアージョ総長はそうではないと首を橫に振った。
「お言葉を返して申し訳ありません。ですが、私には目も耳も付いています。ありがたいことに、ルピア妃の側に侍る機會も何度もいただいています。いくらでもヒントはあったのですから、気付かなかった私が不出來なのです」
総長の驚くべき発言を聞いて、彼は自分に厳し過ぎるわと思っていると、ビアージョ総長は悲壯な様子で言葉を続けた。
「そもそも私は己の職分を果たすことができませんでした。戦場において、王をお守りすることができませんでしたし、王都の警備に手薄な面を殘し、やはり王の命を危険に曬したのですから」
いつも読んでいただきありがとうございます!
3/7(火)発売のノベル1巻に、店舗特典SSをつけていただけることになりましたので、お知らせします。
対象店舗は、とらのあな様、TSUTAYA BOOKS様+その他全國のフェア店様、アニメイト様、ゲーマーズ様、メロンブックス様、WonderGOO様、電子書店様です。
活報告に詳細を記載していますので、覗いてみてください(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
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