《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第99話 醫務室Ⅳ②

「う、うん。わかった。じゃあ」

顔を真っ赤にして、をこわばらせていた依。

今までのパターンだと、拒絶のボディランゲージだったはずなんだけど、そうじゃない。――これも違和だ。

「じゃあ、いきます」

ピッ! 小さい電子音がして、室が真っ暗になった。ここ「授室」は、醫務室の中央パネルとかからも隔離されて、完全に個室だ。本當に漆黒の闇なんだ。

「じゃあ、パイロットスーツがすね?」

事前打ち合わせ通りに、依がスーツの各所留め金に手をかける。

「大丈夫よ。見えなくてもがせられるように、記憶して練習してあるから。ボタンもジッパーの位置も全部記憶してるから」

出た。依の超記憶。確かにとてもスムーズに、パイロットスーツが外されていく。――まあ元々、怪我した時用にがしやすく作ってはあるそうだ。隔壁縦席(ヒステリコス)が高能だから服の厚みもあまり無かったんだけど、それでも普通の服よりは厚い。

そして。

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シュル。

れの音がした。人間の目では見えない暗闇の中。

‥‥‥‥そうだ。違和の正

いつもキチンと服を著て、特に制服のシワとかを気にする依が、さっきの部屋著は、すごく雑に著ていたんだ。――急いで著替えたみたいだけど、はたして?

依。君は‥‥‥‥」

思わずそう呟いたけど、その聲は暗闇に吸い込まれるように消えていった。

「何も言わないで。『醫學の発展のためなら‥‥‥‥』ってわたし、前に言ったよね?」

今、僕は、首から下がかない狀態で、ベッドに仰向けになってる。

そこに、スーツをどこかに片付けた依が、手探りで僕のを探しあてた。

「んん。ふう」

そして、その僕に巻きつくように、依が添い寢をしてきた。もぞもぞいて場所を決めて、いつのもようにり込んでくる。

依からの熱がすごい。直接が當たっていないところまで、じわじわと赤外線をじる。

普通の服よりはかなり厚手に作られたスーツが、今日は無いから。もう本當に素が直接あたってるような覚だ。

え? 素? 部屋が真っ暗なのは? まさか?

依が言ってた「醫學の発展のため」ってそういう事なのか!

ヤバい! 何考えてんだ。俺。

いつにも増して、今日は特別な夜なんだ。そう思うことにして、無理やり目を閉じた。

*****

暗闇って時間の流れがない。一回目を閉じてどのくらいかの時間が経ってから、また目が冴えてしまった。じっとしていられなかった。

「寢れないね?」

そう聲をかけたのは僕だ。

「うん。寢なきゃいけないのに、ね? わたしが寢てないのよくわかったね?」

「うん。何となく」

何も見えない中で、言葉だけが響きあう。依のが熱すぎるから、とは言えない。

「ミサイルって、舊時代の兵だよね。大変だったね」

「びっくりしたよ。本當にそんなのが降ってきたなんて。ああ、僕達や病院の中の人を本気で殺そうとしてるんだって、強くじた」

「聞いたよ。暖斗くん。自分そっちのけで、私達のこと気にかけてくれたって。DMTのみんなが思考停止して固まる中、本気で怒ってくれたって」

「うん。――――頭にきた、っていうか、すごく哀しい気持ちだったんだ」

「哀しい?」

「だって、ビーム兵だったら、シールドバリアの削りあいでけっこう勝敗が著くじゃん? DMTのパイロットが死ぬ事なんて滅多にないし。‥‥‥‥だけどあのミサイルは違う。あれは著弾した瞬間にや人を々にする兵だよ。問答無用、容赦無しなんだ」

「でも、カタフニアの斉で著弾させなかった。すごいね。カタフニア」

「2撃目はね。迎撃できた。でもカタフニアは敵を殺せる力、だから。アイツをりながら『コレってミサイルとおんなじか!?』って一瞬考えちゃったよ」

「そんなこと考えてたんだ。‥‥ふふ。暖斗くんらしいといえば、そうかもね‥‥」

依は?」

「え?」

依だって、今日はんな事があったんでしょ? 手ったりとか」

「そうね。あれも正に戦いだった。先生方もスタッフさんも、みんなピリピリして」

「はは。お互いこんな一日だったんだ。寢付けない訳だよ。こんな真っ暗だから、今依がどんな顔してるのかもわからないし」

「表はともかく、わたしの顔は暖斗くんの肩のところだよ」

「‥‥‥‥それはわかる。息とかで」

「‥‥‥‥そっか。バレてましたか。ふふふ」

「赤ちゃん、て、かわいいのかな」

「かわいいわよう。暖斗くんだって赤ちゃんのくせに」

「やめろし」

「あ、でも取り上げられた時は、で真っ赤だったよ」

「うわあぁ」

「ごめんなさい。でも思ったの。わたしが醫者になるなら、こういう経験も積まないとだなあ、って。外科処置にも慣れないと」

「あ~。僕が考えてる事と逆だあ」

「あ~。もしかして! わかっちゃた! 先に言うね。わたしが考えたのは『もっと観的手――を見て、慣れること』」

「僕が考えたのは『なるべく人のを見ない方法、戦いのやり方』」

「うふふ」

「はは」

何だろう。今この瞬間だって敵の攻撃があるかもしれないのに、こうやって依と笑いあっている時間が一瞬にも永遠にもじる。真っ暗で時計が見えないからかな?

「さっきから話してばっかりだね。寢なきゃいけないのに」

「そうね。真っ暗だから、ホントにおはなししかしてないね」

「――でもしょうがないか。僕達は今日、お互い特別な経験をしてきたんだから。気持ちが高ぶって寢れないのはしょうがないよ。『こういう時は無理に寢ようとしてもダメだ』って異母姉(あねき)が言ってたなぁ」

「病院のみんなは休めてるのかな? 心配」

「その、オリシャさんや娘さんもだね。大丈夫かな?」

「オペは無事終わったよ。オリシャさんも順調。赤ちゃんは1,500グラムしかなかったけど」

「それって?」

「普通の半分くらいだよ。早産。でも大丈夫。NICUの人達もいるし、先生方も殘ってくれてるから」

「そっか。――でもまた敵が來ちゃったら」

「うん。先生方がね。まだ赤ちゃんかせないって。できればかしたくないって。それにガンジス島全域で侵攻されてるでしょ? かそうにも近場で安全な、設備も人員も整った病院なんてないから」

僕はずっとオリシャさんの娘さん、その赤ちゃんの事を考えていた。病室で見た、オリシャさんのまあるいお腹も思い出す。

「あのね、暖斗くん。わたし持ったの。赤ちゃんが保育ってる時にケースごと。赤ちゃんはね、とっても小さかった。でも重かったよ。わたしには、ものすごく重くじた。これが一個の命なんだって。この子にも、ちゃんとひとり分の人生があるんだって」

「‥‥‥‥わかったよ。依。ふたりで守ろう。みんなで戦おう。あの病院に敵が來れないように、やれるだけの事はする」

「ふふふ。そうね。‥‥何か暖斗くんとお話したら、眠くなってきたよ‥‥」

「‥‥‥‥やっぱり? 僕もそう‥‥」

わかった。お互い々話したい事があったんだ。‥‥それを口にしたから、なんだかすごくスッキリした気分だ。そう。僕はこうしたかったんだよ‥‥明日も‥‥が‥‥ろうね。

そう。依さんは醫學の発展のためなら、ひとげるのです。

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