《【書籍化】男不信の元令嬢は、好殿下を助けることにした。(本編完結・番外編更新中)》〈番外編〉騎士カーティスの波萬丈な二日間⑪

※明日も続けて投稿します。

祭りの中央部分を橫切る二人。

屋臺通りを抜けようと歩いていた、そのとき。

突然、ノアが握る力が強くなった。

「いた! クレア!」

「え?」

「あそこ! 紫のワンピース!」

兎のごとく駆け出すノア。カーティスが慌てて後を追うが、人混みをうように進むノアのスピードには敵わず、すぐに見失ってしまう。

彼が必死に目をかしながら歩いてると、彼の視界に紫のスカートが飛び込んできた。

(あ! 紫だ!)

それは紺の短めの外套を羽織ってフードを被った。フードの間から恐らく銀であろうと思われる艶やかな髪のがこぼれている。知的な顔つきやだしなみの良さからして、貴族の可能が高い。

(……もしかして、あれが「クレア」か?)

まじまじとを眺めていると、そのに小さな何かが飛びついた。

(あ、ノアちゃん!)

驚いたような顔をする。優しそうに目を細めると、ノアの頭をでて何かしゃべり始める。

カーティスはホッとでおろした。どうやら目的の人に會えたらしい。

(ここに來るまでは長かったけど、見つかるのは早かったな)

そして、二人のところに歩み寄ろうとして。彼は長の男がの橫に立っているのに気が付いた。

漆黒の髪に黒っぽい外套。縁の太い大きな眼鏡をかけても尚、顔立ちが整っていることが分かる青年だ。

カーティスは首を捻った。

(……あの男、なんか見たことある気がする)

誰だっけ。と、顎に手を當てて思い出そうとするカーティス。

そんな彼の元に、ノアがを引っ張ってきた。

「カティン。これがクレア。クレア、こっちがカティン」

偽名を名乗る必要がないのも楽だな。と思いながら、黙って頭を下げるカーティス。

クレアは彼を見て微笑んだ。

「聞きましたわ。ジュレミに依頼をけてノアをここまで連れて來てくれたのですね。ありがとうございます」

禮儀正しいしっかりとしただなと思いながら、いえいえ。と謙遜するカーティス。

隣の男が口を開いた。

「俺からも禮を言わせてくれ。謝する」

いえいえ。と、控えめに微笑みながら男を見て。カーティスは思わず口をポカンと開けた。

(え⁉ み、見たことあると思ったら、こ、これって、ジルベルト王子じゃん!)

ジルベルトの方もカーティスに見覚えがあったのか、形の良い目が若干見開かれる。

他國に侵している貴族騎士と、明らかにお忍びの様子のを連れた第一王子の遭遇。

微妙な空気が四人の間を流れる。

そんな空気をともせず、ノアが真面目腐って言った。

「カティアン。こっちはジークフリード。ジークフリード。こっちはカティアン」

クレアがクスクスと笑い出した。

「さっきはカティンって聞いた気もするけど、ここはカティアンとジークフリードでいいんじゃないかしら」

薄っすらと苦笑いを浮かべながら、「まあ、そういうことにしておいた方が平和そうだな」と手を差し出すジルベルト。

分かりました。と、その手を握り返しながら、カーティスは思った。

なるほど。名前を覚えてもらえないのは俺だけじゃなかったんだな。――あと、名前を間違って覚えられるのも悪いことばかりじゃないんだな。と。

その後、不思議な組み合わせの四人は、祭りを堪能。

とても楽しい時間を過ごし、手を振り合って、それぞれの宿へと戻っていった。

本作の書籍版の発売日である3月2日まで、あと2日!

気分は小學校の遠足です。書影は↓です。

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