《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第100話 布陣Ⅲ②
思ったより仲谷さんのおにぎりはオーソドックスだった。あの「斜め上の味付け師」が、僕らの常識を超えたをれてくるのかと思ったけど。
そして僕は自室に戻ってパイロットスーツに著替える。――もちろん洗い立てのヤツだよ。昨日は依にスーツをがされたし、朝起きたら著替えが全部セットしてあったから、依がいつもみたいにこの自室から持ってきてくれたんだ。
あれ? 今気づいた。マジカルカレントでけなくなるたびに、洗濯が出ていたはずだよね?
もちろんがけば自分でやってるけど、でも「けない時」って、誰かが洗ってくれてたんだ。僕の下著まで。その誰かが。
「もう。男子って、お洗濯は勝手に洗って畳まれて、タンスにしまわれてると思ってるよね?」
ああ、まだ旅の最初の頃だ。こんな事を言われたのを思い出した。
*****
「え? 出撃しない?」
それから2時間後、のDMTデッキ。てっきり桃山、浜ペアの代で、僕が出撃するのかと思ったけど。次の順番は初島、來宮ぺアが行くそうだ。
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「暖斗くん。君にはMK後癥候群があるでしょう? DMTに乗るのは接敵が確定した時にしたい。‥‥いや、大丈夫だよ。『陣地』まではラポルトの速力(あし)で2分だし、でも、このラポルトの姿をなるべく敵に曬したくはないんだ」
今さら、じゃあないのかな? 子さんはこう言うけれど、ラポルトなんて全長550メートルの超巨大戦艦だし、(これより大きいのは紘國旗艦ティムール、皇帝閣下のヤツだけなんだって)ハシリュー村とかの周りをさんざんウロウロ飛んでたんだから、敵にはもうその存在はバレているはずじゃあ?
しかし、ラポルトって戦艦なのに変わった形してるよなぁ。みなと軍港で初めて見た時は「あれ?」って思ったよ。何でこんな形にしたんだろ? これじゃあまるで‥‥。
と、そこで、東トゥマーレ軍がいたとの報がった。後方展開してた敵陣地から、DMTが大量に、戦列を組んで前進開始したらしい。僕は機の縦席にって慌てて確認する。
「紅葉ヶ丘さん! 西の敵は? 砲撃は?」
昨日みたいにまた、ビームと弾道ミサイルを織りぜた『ミルフィーユ砲撃』をしてきたら、僕のカタフニアで対処しなきゃならない。
「‥‥西の洋上艦隊にその気配は無いよ。昨日こっちの応で海ごと煮込んでやったからね。ただ今後も無いとは斷定できない」
「そうね。暖斗くん。敵が『そうしてきた時』用に、こちらもカタフニアを溫存するしか無いわ。カタフニアの使用はこちらの指示でいいかしら?」
「了解。渚さん」
そっか。と、いう事は、昨日みたいにカタフニアで敵DMTのシールドバリアを剝ぎ取る戦法が使えないんだ。敵が手札を溫存するなら、こっちも溫存するしかない。東トゥマーレのDMTは、オプション機のドローンを壊せば本機は撤退してくれるって聞いてたから、昨日より戦いやすいって思ってたんだけど。
地平線に立ち上る戦塵が見えて、敵が近づいてくるのがわかった。正直今までり行きというか、その場その場の流れで參戦してきたから、こうやってじりじり敵と正対するのはかなりのプレッシャーだ。
麻妃が送ってくるDMT支援ドローン、KRMの畫をじっと見ていた。敵の最前線が停止した。距離15戦闘距離(スタディオン)。2700mだ。後続もあの後に順次著くんだろう、と思ってたら。
「みんな、発艦して。暖斗くん。降下したらカタフニアを呼んで!」
インカムから渚さんの聲だ。今僕らがいるのはまほろ市の北東。市の南側にある市民病院から2km、その南にある僕らが作った防陣地からは4kmは離れている地點だ。
僕のUO-001、初島來宮機のUO-004、005が順次発進て地面に降下していく。
「來い。カタフニア」
僕がそう呼ぶと10秒強でカタフニアが現われる。いつも上空に隠れているコイツは無人機だから、Gとか無視してマッハ3で降りてくるんだ。
「契約通り電源(エネルギー)を呉(く)れてやるから働け。僕達を運ぶんだ。‥‥いいか? 絶対に落とすなよ」
カタフニアは無言でDMT懸架アームを降ろしてくる。來宮機と初島機がホールドされた。僕は、外部電源接點ポイント、「コーヌステレスコープ」にエネルギーチューブで接続される。
「僕らのDMTは有人機なんだ。隔壁縦席(ヒステリコス)の能力でもいきなりマッハ3でかれたらGを相殺できない。お前、ちゃんと考えてやれよ?」
念を押す僕に返事をするように、カタフニアは一度その巨を沈めると、ギリギリの加速をしながら上空へと僕らを運んでいった。
あっという間に上空3000mまで達した所で、一転降下を始める。地點は渚さんが選んでくれてる。僕らがなるべく安全で、敵にとって一番イヤな場所に。
衛星軌道から強襲揚陸艦で降下してDMTを戦場に放出する「隕石(メテオリティス)」に近いきだけど、當然僕らはそこまでの訓練をしてないし、プロ軍人さんみたいな頑強なも持ってない。
だから上空3000mがせいぜいだけど、初手で「カタフニア」砲撃を予想している敵にはこれで十分なんだって。
カタフニアは地上に降りる瞬間に ふわっ って制をかける。ちょっと酔いそうだけど、音も無くてソフトな降り方だ。敵も一瞬遅れる。
僕らが降下したのは、敵から見て右後方の、ちょっと小高い丘陵だった。眼下、整列した敵部隊がこちらに背を向けて整列していて。そこに僕の霧(オミフリ)の疾風(アエーマ)2門砲と初島來宮ペアのSMG(サブマシンガン)で加撃していく。
敵は「カタフニア」を見て明らかに揺していた。そりゃ全幅400mの戦艦用オプション砲臺が突然現われたらビビるよね。応もしてきたけど、僕の001の立方空間バリア、「メガマス」を展開させて防いだ。
あの時、――対ゼノス機戦の後でとっさにできてたのを、練習でモノにしたんだよ。
一辺が1mの「格子フテローマ立方」をDMTの全面空間に漂わせて、だんだん度を上げて壁みたいにしていく。あ、ちゃんと窓になる銃眼は開けとくよ。
そして守りを萬全にしてから、敵集団にビームを打ち込んでいった。
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