《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》883 暴されてみよう その2

いやはや、これはまた衝撃の事実というやつが飛び出てきたものだね。だけどこれでクンビーラ近郊の地下跡にあった絵の意味が理解できた。

五枚目の草原の中にあった都市は、『天空都市』になる以前のヴィータの街を描いたものだった訳だ。

「あれ?でも『天空都市』は『空の玉座』と合しているんですよね?空と地上にある以外、一枚目と五名目の絵に違いはなかったように思うのだけど……」

あの時は跡の奧へと進むため仕掛けられていた謎を解こうと。五枚の絵をそれこそ目を皿のようにして眺め続けていた。中樞部分が違うといった分かりやすい違いがあれば、絶対に誰かが気付いていたはずだ。

「ああ、風卿縁者の何者かが作ったというやつか。そこまで忠実に再現してとはやるね。答えは簡単さ。ヴィータにあった水郷の居城は『空の玉座』の建群を真似たものだったんだ。一説によればヴィに目を付けられた理由の一つがそれらしいよ」

お膝元で一番の大都市を取り上げられるとなれば、大打撃どころではなかっただろう。

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その頃になると、王と四人の大貴族たちはライバルというよりも潛在的な敵の関係になっていたらしい。顔を合わせれば嫌みの応酬で、ドロドロとした権力闘爭が繰り広げられる毎日だったみたい。

「うわあ……。外敵がいなかった分、余計にひどいことになっていそう」

「一応、僕たちも別大陸の國々を仮想敵とはしていたんだけど、いかんせん海を隔てた遠い場所だったから」

どうしても近にいる相手に目が向いていた、ということか。様々な不満がたまっていった結果、水郷だけでなく土卿と火卿も反側についてしまったのだろう。

「そこででくると明らかに劣勢だと分かるよね。どうして風卿は最後まで王の側に居たの?」

「ドゥエン家は風卿と関係が強い筋だったからだよ。僕たちの母親も先代風卿の姉だしね。初代も風卿とは義理の兄弟だったし、中興の祖として知られるルミド家の三代は水郷と懇意だった。『天空都市』をつくった當時に王位に就いていたビブ家は火卿だけでなく土卿とも強く縁関係を持っていたね」

過去には四大貴族のどことも縁が薄いものが王になったこともあるけれど、ほとんどは後ろ盾になったところと縁関係にある者が王となっていたらしい。いやん、ドロドロだわ。

「それで、君たちが破壊したという門型の『転移裝置』のことだけど、恐らくはヴィータへのり口だったのだろう。僕たちの時代では不審や危険への対策として、都市や施設の出りに『転移裝置』を利用していたからね」

「ということは、あれも『天空都市』とは関係なかったの?」

「そうとも言い切れない。確認なのだけれど、その裝置があったのは湖の南西側かな?」

「そうだよ。ウィスシーに突き出るような形だった」

「……だとすればあの場所か。『天空都市』の南西に出止の一角があったんだ。どういった取引があったのかは不明だけど、多分そこに対応する裝置が置かれたままになっていると思う」

マジで!?普通に考えるなら急時の避難用に殘しておいたというところなのだろうが、王弟だった彼が知らなかったとなると、いきなり不穏で不気味にじられる。なんだかとっても闇が深そうな話だなあ……。

「まかり間違って死霊たちがさまよい出ることを防げたと思えばいいんじゃないかな。なくともただ働きではなかったはずだよ」

まあ、それで納得するしかないか。あの時はキューズなんていう面倒な相手もいたから、いずれにしても放置することはできなかったもの。仮に何かの拍子で『転移裝置』が起してキューズが『天空都市』にたどり著いたりなんかしたら、絶対に厄介なことになっていたはずだ。

そういえば、キューズを始めホムンクルスたちはどこの勢力が生み出したものだったのだろうか?

「ホムンクルス?また珍しいものが飛び出してきたね」

「そうなの?」

「研究コストが割に合わなかったんだよ。人類種に近づけるという名目上、その素は生きに近いものとなる。すると當然、頑丈さではゴーレムに劣ることになる」

ついでに、生っぽいから研究所の絵面が悪かったことも人気がでなかったこの原因だろうという。

「あ、なんとなく分かったかも……」

中學時代、近隣の學校が統廃合するとかで置かれたままになっていた教材の一部をボクたちの通っていた學校で一時保管したことがあった。その荷運びに里っちゃんたち生徒會も駆り出され、生徒會室にり浸っていたボクも手伝うことになる。

と、ここまでは割とよくある話で特に部活もやっておらず時間に余裕があったので軽い調子で了承した訳ですよ。

ところが、いざその教材が屆いて中を確認してみると……。

何の手違いかホルマリン漬けにされたあれやこれやが並んでいるではありませんか!しかも中學生に見せる初心者向けのではなく、大學の研究室に送られるようなガチの代だったのだから、その衝撃はすさまじかった。

その場に居合わせたのがホラーゲーム好きな子など強心臓な子ばかりだったのは、不幸中の幸いだったと思う。そちら系に耐がないと、普通にトラウマものの景だったと思うよ……。

そんな調子で、ホムンクルスの研究もマッドにグロでホラーな印象を持たれがちになっていたため、人気がでなかったのだろうね。

しかも回復魔法で大抵の怪我や傷は癒してしまえるから、リアルのクローン技などのように醫療目的ともいえない。用途が限定的となれば投資したお金が回収できなくなることも考えられるから、スポンサーやパトロンのなり手がなかったのではないかしらん。

「ただ、その一方で高位の連中が囲い込んでかに研究をさせていたのも確かさ」

「限定的な用途が権力者の要と噛み合ったってこと?……あ、もしかして影武者とか代わりに使うつもりだったとか?」

「鋭いね。正解だよ。代わりともなると似通っていなくてはいけないから、近な誰かを犠牲にすることが多かったんだ。だけど、ホムンクルスなら良心も痛まないし、人材を無駄にすることもなくなる」

追い詰められた狀況から起死回生を図ろうとする訳だから、有能な人は一人でも多くしい所だろうね。代わりになろうというほどだから信頼関係も構築できていることが多いだろう。

クローンのように本人をベースにしたものならバレにくくもなるだろうし、なるほど、確かにこれは権力者がしがる技ではあるか。

「でも、そうなるとキューズたちを生み出したやつらを特定するのは難しいか……」

「実を見ればしは絞り込むこともできるだろうけど、推測だけだと何とも言えないよ」

まあ、特定できたからといってどうなることでもないから、分からなくても問題はないのだけれどね。

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