《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第102話 初島羽と來宮櫻
5機の小隊、そのDMTを僕が掃した時には、もう次の小隊が繰り出してきてた。
「暖斗くん! 次は初島機を狙ってきてる。コレ、悪手のハズなんだけど」
そう、麻妃の言う通りだ。兵力を小出しにせず、十分な戦力で一気に敵を叩くのが常道。それは素人中學生の僕らでもわかる。
でも敵は敢えてそうしてる。――答えは自攻撃だ。東トゥマーレは最初からそれが目的。ミサイルでカタフニアを牽制して、1機で1機を倒す、みたいな消耗戦ができれば、トータルでの損耗はなくて済むから。
小隊があのペアに迫る。前の小隊を僕が相手取ったから、フォローにるのには距離ができてしまっていた。
初島機と來宮機は、陣地から出た。
「パイセン。正念場っスね?」
「あ~あ。結局上には上がいるんだよね? 部活でもこういうのでも」
「――ってか命がけでやってるコッチの方が、本気度高いっスよ」
「そっか。私も本気だったんだけどな。フェンシング」
「パイセン。‥‥じゃなくて羽。ヒザはどう?」
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「櫻に名前で呼ばれるの久々だよね? 部活にって以來?」
「手をすれば?」
「わかってるよ櫻。もう前向くからさ」
「っス」
「じゃ、踴ろ。シミュじゃ完しなかったけど、今なら上手くやれる気がするよ」
「「病院を守れ!!」」
ふたりの聲が聞こえた。え!?
2機は突撃(アサルト)していた。2機まったくの同時で。
初島機が盾(アスピダ)を構えて。來宮機が刺突剣(エストック)を突き出して。
戦ドローンもDMTも関係なく、間合いの敵を蹴散らしていく。まるで単機(ソロ)みたいなきだ。‥‥‥‥あれ? これ2機の時より強くない?
敵が集中で砲火をれる。2機は パンッ って失った腕同士を當てて、それをお互いの足場に左右に分かれた。ふたりがいた空間を弾が過ぎさって――と思ったらもう元に戻ってる。
すごい連攜だ。
片方が右手、片方が左手を失ってるのに、2機並んだら1機分、いやそれ以上のきをしてる。――敵もあまりの事に逡巡してるみたいだ。
初島來宮機は投された自部隊、追加で來た部隊まで葬っていた。無人機とはいえ、すごい戦果だ。
しかし。
ズドドドン!!
東トゥマーレの降下地の方から、太い砲撃があった。吹っ飛ぶ初島來宮機。
「「きゃあああ!」」
「メガマス!」
急いで僕のDMTから、格子フテローマのバリア立方――メガマス――を発生させる。僕のカタフニアの主砲と同じくらいの太さのビームだ。‥‥‥‥という事は!
「暖斗くん! 1,000m後方! 駆音がヤバい! 大型(メガス)以上の出力っぽい」
「麻妃? KRMの姿が見えないけど? 今日出番なくない?」
「実は依の頼まれ事で病院上空。ゴメン!」
え? この決戦中に何やってんの? 依の頼み事って‥‥‥‥!?
「私が手伝うわ。ふたりとも無事よ。初島機は損傷軽微。來宮さんの後退を手伝ってあげて。陣地まで何とか!」
渚さんの聲だ。たぶん來宮機は擱座しちゃったんだ。重量のDMTは、人間でいう転んだ狀態になれば継続戦闘できない。
そして依の「頼み事」? ‥‥‥‥は附屬中3人娘も把握してるって事か。インカムから、その3人の會話も耳にってきた。
「敵がなりふり構わず火力押ししてきたわ。莉。最終シナリオね?」
「‥‥‥‥うん。こちらは狀況を全世界に配信してる。さすがにプロ軍人が、中學生の乗る5機を量で圧し潰す事はしてこなかったね」
「人が悪いよ。子學生はそこまで読んで、あの『中學生の読書想文』みたいな戦線布告をかましてるんだから!」
「そうだね。紅葉ヶ丘學生。『お兄様』との待ち合わせにはまだ時間があるみたいだし」
「澪。結局行けるの?」
「ダメだった。今の時點でどうしても件のノイズが除けられない」
「うん。行けなくても行くしかないよ。‥‥‥‥いや、最初から事が完璧だなんて存在しないよ。ましてや戦場に。腹を括っていこう。みんな、本當によくやってくれた。あとは、軍人たる私達3人が――――」
3人のやりとりを聞いて、舵を持つ泉さんがひとり笑っていた。
「さあいよいよ最終決戦ね。ふふふ」
*****
大きな影。この僕のUO—001、大型(メガス)のDMTよりも2倍は大きい。
最大型(メギストス)、よりも大きいだろう。
今あるDMTの規格の中で一番デカい。――――超大型(アバイロン)だ。東トゥマーレ軍機甲師団の、いや、あの國全の旗機、「パンタソス」だ。あの國に3機しかない超大型の、その1機が出張ってくるなんて。
腕も剣もその肩幅も、すべてが大きくて太い。小學生がプロレスラーと対峙してる畫みたいだ。
ゆっくり歩いてくる。左右に2個小隊を引き連れて。この市街の南部、まほろ市民病院南の荒野地帯に、大きなシルエットが歩みを進める。
僕らを、殲滅するために。
「病院を守れ!!」
ふたりの言葉が脳裏をよぎった。‥‥‥‥そうだ。僕らの戦いは戦爭や、目の前の敵を倒す事が目的じゃあない。あの病院を。あの建の中で生まれた小さな命を守る事だった。
勝たなくていい。勝つ事が勝利じゃないんだ。
僕は、回転槍(サリッサ)の刃部を水平に持ち上げる。各計と出力のチェック。いざとなればカタフニアもある。敵が全員で突撃して來ないのは、お互い切り札が健在だからだ。
敵は、パンタソス1機だった。付隨するDMTは遠巻きに見守るだけ。1対1だ。
「私の宣言が上手くいけば、敵は手を出しくくなる」って子さんが言ってた。こういう事か。中學生に量押しはカッコ悪いと。――どっちみち、僕らには好都合だ。
剛腕から繰り出される大剣が唸り、音と共に自機とその盾(アスピダ)が軋み上がる。そして肩に積む大口徑ビーム砲が火を噴く。――こちらも霧(オミフリ)と再接続して応戦するしかない。
じりじりと削られ、押されていく。その度に何度も全力で押し返す。――もう何度目の突撃(アサルト)だ。
でも、引く事はできない。陣地には4人の仲間がいる。損傷してないのは、僕だけなんだ。「守るんだ。病院を。赤ちゃんを」。何度も反芻して、敵の剛剣をけていく。
縦桿を持つ手が、汗ですべり始めた。
その時。
「がんばって~!!」
唐突にインカムから、澄んだあの聲。
土煙と巖の灼けた戦場に響く、あまりに似つかわしくない聲。
そうか。彼の「頼み事」とは。
明らかに敵がたじろいだ。
麻妃からの映像の同期、そこに映っていたのは依。病院の屋上だ。
「SAVE A BABY」
大きな旗を掲げていた。
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