《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第103話 旗を掲げろ①

わたしは、病院の屋上にいた。みんながいる資材置き場に小型(ポータブル)重力子エンジンを屆けた後に。

「お~~い。依~~~」

「麻妃ちゃん」

目いっぱい手を振る。早朝3Dプリンターで製造したを、ここまで運んでもらったんだよ。早速設置をしていく。

わたしが(はい)れた場所は、大きな病院の中央部、金網で囲まれたバスケットコートくらいの広さの屋上だ。よく醫療ドラマの舞臺になりそうな所。そこから簡易的な鉄製の階段を上ると、出口の建屋の屋、國旗とかを掲揚するポールのある場所に登れる。

依。旗をつけるロープわかる? 先端をこっちにちょうだい」

あれあれあれ? 麻妃ちゃんはKRMなのに、そのアームでするすると用にロープを旗に通していく。‥‥‥‥もしかして、素手の時のわたしより用じゃない? KRMのマニュピレーターなのに‥‥!

「何ぼ~~としてんの。紐結ぶのは依だよ。さすがにそこまではできん」

そのセリフにちょっとほっとしてしまった。でもKRMでホバリングしたまま手作業とか、素人のわたしでも玄人並みの縦テクニックだとは解る。

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「ありがとう。じゃ、わたしがんばるから」

「お~~う。カメラチェックしてあるからな。じゃな!」

麻妃ちゃんはそのまま戦場に一旦向かった。

屋上はやっぱりし、風がある。

バサッ! って、部屋ほどの大きさのある旗が風をつかんだ瞬間、頑丈なポールがししなった。建屋の屋には手すりがない。よろけたわたしは思わずポールにしがみつく。

わたしは、地平の先に見える戦場を見ながら、目いっぱい息を吸い込んだ。そして屋の隅に設置したカメラをONにする。

「がんばって~!」

耳のインカムを通して、遠くの砂塵にエールを送る。あれが、あそこが、わたしの赤ちゃんが戦ってる場所だ。

そして、武を扱えないわたしの、これが一杯の援護撃。

*****

「SAVE A BABY。赤ちゃんを救え、か」

敵が一旦後退した。僕も遠で旗を直接みた。大きな旗、‥‥‥‥なんか既視のあるピンクだ。そこに、はっきり見覚えのある犬とうさぎのアップリケ。中央にメッセージの文字。

依の醫務室でのエプロンと、あの僕用の前かけと。同じデザインじゃないか!?

依、大丈夫かな。一度決めると意固地な所があるから」

「あの旗」は確かに効果てきめんだった。「赤ちゃんを救え」なんてあからさまに掲示されたら、攻撃する方はやりにくいどころじゃない。ただでさえ子さんの「読書想文風味の宣戦布告」で攻める側の國の大義が揺らいでるんだから。

あの超大型も後退して距離を取っている。「あの旗」は敵の痛いところをついている。

しかも畫を世界中に畫像配信をしているってのは、今聞いた。

ドオォン!!

このタイミングで陣地の前面がぜた。敵襲だ。炎と舞い上がった土砂で視界が塞がる。渚機のKRMで俯瞰の視點をもらう。

その煙の向こうに、蜃気樓の様な大きな影が浮き出る。あの超大型だ。

「!!」

咄嗟に盾を構えた所に、凄い衝撃が走った。

「パワー差がある。まともにけちゃ駄目!」

渚機だ。今までマジカルカレントで高出力を得てそれで敵に何とか勝ってきた僕も、敵の高出力に曬らせる事態になった。

それに、さっきと違うのは、周りの大型DMTも攻撃してきた事だ。これは全く躱せない。――――が!

ドギィン!

辺り一帯に響く低い音。桃山機が陣地からその長距離レールガン有質量弾を撃っていた。

「私も戦う!」

「「私も!」」

「わ、私も」

「逢初さんがを張って旗を立ててくれた。‥‥‥‥やれるよ! まだ!」

その聲と共に、陣地からの一斉撃。不意を突かれた敵の、戦列がれた。

*****

「熱源知! ここにいるぞ!」

岸尾麻妃の聲だった。KRMがペイント弾を速でばら撒く。何もないハズの空間に、3機の大型DMTが浮かび上がった。場所は、病院の駐車場だ。

「やっぱり。コソコソ部隊いた!」

一旦戦場に戻ると見せかけて、病院周囲を警戒していた。

敵DMTの縦席では。

「なんだ。見つかるとは手際が悪い。――こういう仕事のためにお前らゴミクズを船に載せているんだ。しっかり仕事しろ」

「‥‥‥‥けっ! 言ってくれるぜオッサン。まあ見てろ。仕事はキッチリやるからよ‥‥‥‥!」

DMTが麻妃のKRMを弾き飛ばそうとするが、麻妃も巧みに避けまくる。病院屋上の旗は、風にひるがえったままだ。

「オジサン達はなあ。こういうピュアなお嬢ちゃんが政治的メッセージを送るのが、すっっごく困るんだってよ? その旗降ろしてくんねえかな?」

縦席の人はあの、謎の戦艦に乗っている男、アギオスマレーノスだった。

「岸尾さん! なるべく報ちょうだい!」

ラポルトの艦橋が一気に慌ただしくなった。渚が、新手のDMTの解析をする。

「アングリア王國の隠部隊、死神アギー。ヤバいのが來た。しかも」

戦艦の舵手、泉が振り返る。

「そんなに危険な部隊?」

「ああそうだ泉さん。だいたい表に出ない裏仕事。その類を専門とする機関だ。しかも、アングリア王國が參戦してるって事は」

莉。4キロ先に複數個所。戦艦とDMTの反応。來てるわよ!」

「そうだよ。盟主アングリアが來てるんだ。他も來るよね? 歐圏の急進派は」

「帝政イオルギアとはやりたくないわ。傭兵で行った人、あそこの現場すごかったって。あ、アングリアのDMTはアレスチカE90と判明、ガーデンバッハ社の名機、90番代は隠専用機よ」

「隠? 専用機?」

また泉が後ろを振り返る。

「言葉の通りよ。このラポルトも、敵の索敵、レーダーから逃れる『隠蔽(コンシール)』機能があるでしょう? それに『學迷彩』、本を調整してカメレオンみたいに周りの景に溶け込む技

渚のその言葉を、子が引き継いだ。

「この艦も持ってるそういうステルス機能を、DMTにもつぎ込んだのが隠専用機だ。現代の忍者だね。‥‥‥‥このラポルトもそうだったように、エンジン起時の熱源とか、骨格(スケルトス)の金屬反応までは隠しきれないんだけどね?」

「なるほど。よくわかりました。それで周囲を警戒してた麻妃さんには見つかったのね?」

が腕を組んだ。

「うん。そうだよ。‥‥‥‥しかし、ここへ來て歐圏連合が參戦。しかもかに病院狙って潛んでいた、と。こちらも病院にフォロアーを配置しないと」

「これは躱せないって~!」

岸尾麻妃が悲鳴が上がる。業を煮やしたアングリア王國のDMTが、3機で飽和撃をした。逃げ場を含めた空間をすべて塞がれた麻妃のKRMは、あえなく墜落する。

「手間かかっちまったな。じゃあ」

3機のDMT、アレスチカE90が、肩裝甲の側から白の煙が吹きだす。煙幕をたき、旗に近づいていくためだ。病院はたちまち白煙の中となった。

「撃ち抜こうか‥‥‥‥いや、ポールごとへし折れば、替えの旗すら掲揚出來なくなるか」

部隊のアギオスマレーノスは、縦席でそう獨り言ちながら、DMTの反重力裝置(フローター)を起させる。病院棟の屋上、ポールのある部分へと顔を浮かせて驚嘆する。

「なんだオマエ! ここで何してんだ‥‥‥‥!?」

ポールの傍らにひとつの影。白セーラーに紺のプリーツスカートが風にたなびいて。

逢初依が、そこに立っていた。

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