転生勇者ユリウスが、対校戦を終えて、しばらくたったある日。

理事長ルシフェルは、地上ではない場所へとやってきていた。

「ここは相変わらず、気臭い場所ですねぇ」

そこはの屆かない、闇の世界。

銀の砂漠がどこまでも続く、不の土地。

砂漠のあちこちで、青白いの塊が倒れている。

彼らは、亡者。

死者の魂である。

亡者たちの世界を歩いていくと、やがて大きな宮殿へとたどり著く。

宮殿の前には2つの首を持つ化けがいた。

「やぁどうもぉ。冥界の番人、オルトロスさぁん」

二首の犬、オルトロス。

見上げるほどの威容に、兇悪な顔つき。

見るものを委させる冥界の化けを前にして、しかし、ルシフェルが怯えることがない。

『ルシファー。なんのようだ？』

オルトロスは理事長を見て、そう呼んだ。

おっと、とルシフェルはにやにや笑いながら言う。

「今は明けの明星ではなく、ルシフェルと名乗っております」

それは隠し事であるのだが、暴かれたとしても、別に焦ってる様子はない。

『墮天使が冥界に何の用だ？』

「ちょっと、同窓會に參加しようと思ましてぇ」

『まどろっこしい言い方は好かない』

「そうですかぁ。それでは、冥界神に會いたいんですがぁ」

やはりか……とばかりに、オルトロスがため息をつく。

『ハデス様に會わせろということだな』

「お察しのとおりでぇ」

ずぉ、とオルトロスから殺気があふれ出る。

大気を鳴させるほどの、強い気配だ。

それでもルシフェルはおびえる様子はない。死が迫ってるというのに笑っている。

それは強者故の余裕だった。

……ルシフェル自は全くと言っていいほど、殺気を見せないというのに。

やがて、オルトロスが殺気を収める。

『ついてこい』

「おやぁ？　侵者を排除しないんですかぁ？」

オルトロスは彼を無視して、巨大な建のなかへと進む。

それは……監獄だ。

『冥界の大監獄。冥界は罪人の魂の牢獄であるが、ここは特に大罪人の魂を収監されている。そんな監獄に、貴様は何を求めに來たのだ？』

にやぁ、とルシフェルは笑って言う。

「決まってるでしょぉ？　次なる試練を用意するんです。勇者にねぇ」