《天使と悪魔と死神と。》

青斗せいとさん。

多分私より年下だろうな。

の子って言ってたけどすごくたくましかった。

……それに比べて私はアペルさんの力になれているだろうか……?

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「……〜い!杏樹ちゃ〜ん?元気ですかぁ〜?」

その心配そうなアペルの聲で杏樹は目が覚めた。

目の前にはアペルの顔がある。

いつの間に倒れてしまっていたんだろうか。

「わわっ……!アペルさんか……。元気です……たぶん……?」

驚いた杏樹は飛び起きた。ふわふわとしたあの寢起きの覚も驚きでどこかに吹き飛んでしまった。

ここはいつも朝のような、晝のような、夜のような……そんなじのする場所だ。

空のも明らかに人間界とは違い、見る時々に変わっていて、時間帯がまるで分からない。 そこまで考えて初めて杏樹はここのことをあまり知らないことに気づいた。アペルからも聞かされていなかった。

(そういえば、アペルさんに會ってからずっと頭にモヤがかかっている覚がする……何も思い出したくない、そんなじがある……)

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そんな杏樹の心境も知らず、アペルは「元気」という言葉を聞いて安心し、今までのことを話す。

「『終わったね……』なんて言ったら、急に倒れて來るんだもん!びっくりしたよほんと!」

アペルは立ち上がる杏樹に手を貸しながら、不服そうに口を尖らせてそう言った。

「そうだったんですか……ごめんなさい、心配かけちゃって……」

杏樹はその手を借りて立ち上がる。暗い表にはアペルへの申し訳なさもあった。だが、本當はもうひとつのが杏樹の心の中で蠢いていた。

人を殺めてしまった……。

それは、ふとした瞬間にうずくまりたくなるほど杏樹にとって重いだった。

しかし、ここでうじうじしてはいられない。次は西門に行かなければならないのだ。西門の守人はどんな人だろうか……。

高揚と不安が杏樹を襲った。

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暫く歩いたあと、アペルが急に立ち止まった。

ずっと下を向いてアペルのあとを歩いていた杏樹はアペルの背中に派手にぶつかり、転けそうになる。しかし、アペルは振り向かず、前を見據えていた。

もう西門に著いたのだろうか。東門のような大きな門は見當たらないが……

杏樹はどんな人がいるのか、どんな門が建っているのか、嬉々としてアペルの背中から顔を出した。

しかし、そこには見たことのない男がいた。

にしては長い白髪の髪が、どこから吹いているのか、ぬるい風になびいていた。

「よォ、お姫さん?俺がわざわざ迎えに來てやってんだ、栄に思えよ?」

男はそう言って顔を出した杏樹に聲をかける。

杏樹は自然とが固くなるのをじた。

この人とはあったことないはずなのに、懐かしさと恐怖が杏樹のを締め上げていく。金縛りのようにかない。

アペルは杏樹を守るように手で制し、男を睨む。

「まだなにか用か?」

杏樹には狀況が把握できていなかった。〝まだ〟という言葉から自分のの知らないうちに何かあったのではないかと、杏樹は不安になる。この男のことをアペルは知っているようだ。

「あの、アペルさん……?」

杏樹は小聲でアペルに男が誰なのか聞こうとする。未だにかない。たが、アペルは答えずに男を見る。

両目は見えなくても、靜かな怒気をはらんでいるのが杏樹にもじられた。

「決まってんだろ、お前もわかってんじゃねぇのかァ?」

男も杏樹の問いかけには答えず、1人、不気味に笑う。反対にアペルは眼帯と前髪で隠れて目で男を睨む。杏樹のはどんなに力をれても何かに締め付けられているようにかなかった。

「おっと、お姫さん?無理にかない方がいいぜ。」

そんな杏樹を視界の端に捉えたのか、また男の視線が杏樹に戻された。杏樹は恐怖で目が離せなくなる。

男は赤い目をしていた。

 

「まさか……!おい、やめろディゼル!」

そうアペルが言ったとき、ディゼルと呼ばれた男がまた不気味に笑う。そしてゆっくり手を挙げーーー

その瞬間、杏樹のはさらに強く締め付けられた。今までじたことのない痛みが杏樹を襲う。

「ぐっ……」

「杏樹ちゃん!?」

アペルはすぐさま杏樹を支えようとするが、もちろん男が黙っていない。口の端を上げて、ぶ。この狀況を楽しんでいるかのようなそんな不気味な笑いも含んでいた。

「そう簡単に近づかせるかよ…!!」

りするものが飛んできたかと思うと、〝それ〟はアペルを正確にとらえた。

冷たいが手首に走る。

杏樹が片膝をつきながらもアペルを見上げると、その白く細い手首には漆黒の鎖が巻きついていた。

「アペルさん……それ……」

心配そうにアペルを見る杏樹の苦しそうな目が、前髪に隠れた右目から微かに見えた。

アペルは鎖に拘束された手首を何とかかし、

杏樹に一歩近づく。

「ごめんね。でも、絶対勝つから。杏樹ちゃんは……休んでて。」

杏樹は見たことの無いアペルの強気な姿を最後に、アペルの冷たい手が額にれた途端、ゆっくりと意識を手放した。

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