ボアアガロンのボスの時はゲートと『麻痺』でなんとか対処したが、今回はどういう訳かそれが効かない。

それにあの魔がどういう能力なのかも判斷がつかない。

さっきは「傷は癒えない」と言い、今は「海を切るこれが本當の能力」と言う。

後者は恐らく『斬れ味の高さ』が本當の能力ということだとしても、魔道は二つの能力を併せ持つことが出來るということか？

そんな話は聞いたことがない。

普段行く武屋や日用品の魔道でも一つにつき一つの能力。

それより上は見たことがない。

しかし俺やキリなんかは二つ以上の能力を有している。

魔獣でも二つ以上の能力を使ってくるもいる。

だから魔道や魔に二つ以上の能力が在ってもおかしくはない。

ただ見かけていないからその真偽も確かではない。

......いや、もしかして魔は二つ以上の能力を持つことが出來るのでは？

神様の話では魔道が進化して魔となるそうだし、強(あなが)ち間違いではないのではないか？

その理屈で考えるならあれは魔道ではなく、魔の段階まで行っていると思っておいた方が良い。

と言っても、魔道より魔力を多く吸って進化した姿としか知らないから、警戒する以外ないが。

......警戒する以外ないなら、危険度が高過ぎる。撤退するか。

「逃げるのは勝手ですが、切られた彼は助かりませんよ？」

こちらの思考を読んでか予測してか、これからのきを先に封じてくる。

「......助からない、だと？　どういうことだ」

「バルバ・ティンで切ったものは癒えない。それは変わりません。貴方はどうしてかは分かりませんが、そちらのには恐らく効いているでしょう。そんな狀態で今逃げれば、助かる方法も分かりませんよ？」

優男は嘯く。

「は？」

その発言に撤退の準備を行こうとしていた俺のきが止まってしまう。

助かる方法がある？

バルバ・ティンの『癒えない』という能力は本當だとは考えてはいない。

しかし萬が一本當なのだとしたら知っておかないといけない。

キリとサナは帰すとしても、切れ味だけなら間違いなくあの金髪のの能力より厄介な剣の能力を相手に立ち向かうのは俺も危険だ。

あののは予備作もないから今回は把握するのがまだ楽な方ではある。

しかし剣の軌道から多く見積もって二百メートルが程距離。のは五、六十メートルが最高だった。

それだけ程がある相手は剣のレベルも高いって......はは、鬼畜過ぎる。

「......悪い、二人共」

「噓っ　︎」

まずは重癥のキリの足元にゲートを開いて、無理矢理家に帰す。

突然足場がなくなったキリは一瞬だけ反応してそこから逃れようとしたが、反応が遅れたため落ちてゲートを潛る。

二人が撤退するのは決定だ。

しかしさっきの様子から見ても素直にけれてくれるか怪しい。

だから強制的に家に送ることにした。文句はあとで聞く。

次はサナ......マズい！

「サ──」

「ざぁぜすえんさせへん！」

「ア、ズヴぁっ　︎　︎」

「っ！　サナ　︎」

サナの足元にゲートを開こうとしたその瞬間。

全く警戒していなかったモリアがどうやってかあの能力を使って、俺の行に何か言おうとしていたサナの脇腹を貫く。