《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》890 ベリーべりーハード

いやはや、新報や歴史の裏話が目白押しなスラットさんとの會話だったけれど、ここにきて死霊化のと『天空都市』の浮遊機能が連しているという、特大に有用でなおかつ厄介な報が飛び出してきた。

いや、知らないうちに墜落全滅ルートを走していた可能もあったと考えれば、厄介だけれど有用といった方が正しいかしらん。とんでもないデストラップを仕込んでくれているものだよ……。

「あらかじめ出方法を選定しておかないと危険だわね。時間制限があるとなれば、道順も頭に叩き込んでおく必要があるか……」

ゲームシステムのオートマッピングとそれを反映したミニマップがあれば何とかなるとは思うのだけれど、反対に言えばそれらがもしも働いてくれなければ呆気なく詰んでしまうということでもある。これまでにもイベントの演出等で停止していた時もあるし、當てにし過ぎるのは危険だ。

「こうなると『天空都市』部の地図がしいところだなあ……」

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「ですが、建が倒壊するなどして道がふさがれているというケースも考えられますわよ。仮に地図を手にれられたとしても、それに頼りきっていては思わぬ所で足をすくわれかねませんわ」

ミルファの言い分も一理ある。あそこの住人たちは自我をなくして久しい死霊たちだ。傷んだ建や道の補修に植の手れなどができているとは考え辛い。荒れ放題で建の基礎部分だけが殘った跡のような狀態になっている箇所があったとしても不思議ではない。

加えて、ワイバーンのような強くて空飛ぶ魔がいつの間にか住み著いていて……、なんてこともないとは言い切れないのだよね。

クンビーラ近郊の地下跡で発見したミルファのご先祖様こと數代前の公主様が殘した石板には死霊のことしか書かれていなかったけれど、そもそも彼らは『天空都市』をほとんど探索できていなかった。

さらに今からなくとも百年は昔のことだから、その間にも狀況や環境が変化した可能だってある。

「すまない。無理を言うつもりはなかったんだ。危険なら拒否してくれても構わない」

悩む僕たちに気を遣ったのか、スラットさんが申し訳なさそうに言う。対してボクたちは、首を橫に振ることで彼への答えとした。

「危険なのは間違いないだろうけど、死霊たちを消すことができるのだからやるだけの価値があることだよ」

そもそもボクたちが死霊たちに面と向かって事を構えようとはせず、『転移裝置』を破壊して孤立化させるという消極的な対策を行っていたのは、戦ったところで勝ち目がないと判斷していたからだ。

旅立つ前に比べれば大きくレベルが上がって、ステータスも技能の練度も増したとはいえ、この考えは覆(くつがえ)ってはいない。

「あ、スラットさんなら分かるかな?正面から死霊たちと戦うとして、ボクたちが勝てる見込みはあると思う?」

「また、唐突な問いかけだね。……君たち三人でということなら、良くて數十というところかな。これ以上ないというくらいそれぞれのきが嚙み合ったとしても、三桁には屆かないと思う」

「おおう!思った以上に多かった。……ちなみに、死霊の総數は何ほどでございましょうか?」

「長い年月の間にり切れて消えていった者たちもいるだろうから……。まあ、なく見積もって千、かな。最大ならその十倍以上にはなるだろう」

うわお!この圧倒的な量差よ!

なお、千人というのは國家の要職に就いていた人たちプラス兵士といった戦闘系の人たちの総數なのだとか。

ここでし本題から外れるね。

前にも書いたけれど、『天空都市』の住人になるということは國家の権力の中樞にまで上り詰めたことと同義だった。要するに権力大好きっ子たちの集まりなのだ。

とはいえ、そんな人たちばかりではなく、その家族もいれば従者もいる訳で、中にはそうした方面に興味を持たない人や関心が薄かった人たちもいただろう。

『天空都市』に居た以上は全員がの対象となり、挙句自我を失って死霊となってしまった。やつらは最も強かったのだろうアンクゥワー大陸の支配をという妄執に取りつかれてしまったのだが、さて、生前にその執念が弱かった人たちはどうなってしまうのか?

その答えがさっきのスラットさんの言葉の中にあった、「長い年月の間にり切れて消えていった者たちもいる」だ。

これからそこに乗り込んでを解いて墜落する前に逃げだすという超高難易度ミッションに挑もうとするボクたちにとっては、この數がしでも多い方がありがたいというのが本當のところだ。

ただ、世界設定的にはあまり好ましくはないらしい。 ニポンのメーカーが作りニポン在住者をメインターゲットにしているためか、『OAW』の世界ではいわゆる廻転生が採用されているのだ。

から離れてしまった死霊という存在は、いわば魂がむき出しになっているようなものです。そしてそれがり切れて消えるということは、すなわち魂が消滅していることを意味します」

ネイトの言葉はいつになくひっ迫していた。

「一度消えてしまった魂は二度と生まれ変わることはありません。つまり、この世界から生命の數が減ってしまっている、ということなのです」

世界がなければ生命は生きてはいけないが、反対に生命がなければ世界が存在することもできないのだ。何やら哲學的だけれど、とりあえずそういうものだと思っておけば問題ないです。

結論、死霊が消えていくのを放置するのは世界的にもよろしくない。

「ということらしいので、を止めるのは既定路線になるね」

ベリーハードモード決定ですね。

「わたくしたちが無事に逃げ延びることも大切ですけれど、天空都市の落下先のことも考えておかないと大変なことになりますわよ」

「『大陸統一國家』時代の技が流出するようなことになるのも問題ですが、街に落下するようなことがあれば未曽有うの大災害になってしまいます」

……ベリーべりーハードモードだったようです。おにょれ、責任者出てこい。

「誰もいない上に簡単には手出しができないような場所かあ……」

そんな都合のいい所が本當にあるのだろうか?強いて挙げるならボクたちが今いる『神々の塔』周辺ということになるかしら。

だけど、大都市一個分だから落下しているところは絶対に目撃されてしまうだろうし、そうなれば各國が國を挙げて調査に乗り出してくるだろう。

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