《【書籍化】絶滅したはずの希種エルフが奴隷として売られていたので、娘にすることにした。【コミカライズ】》第81話 リリィ、ビビらない

「ネットの『推し』とリアルの『推し』が隣に引っ越してきた」

という私が書いているラブコメが本日オーバーラップ文庫様より発売しました!

推しのVTuberや聲優、小さい頃に離れ離れになった馴染と一緒に半同棲生活を送る夢のようなアレになってます!

手に取って頂けたらとっても嬉しいです!なろうでも連載しています!

1年1組は熱狂に包まれていた。

「すげー! なんかさ、手からぶぉわーって出たんだよ!」

「ぼくもぼくも! これが『まりょく』なんだね!」

「これで私もまほうつかいなのね……!」

通常、クラス全員が魔力を放出出來るようになるまでは一週間程度かかる。魔力を知覚させるというのは決して難しくはないが、人によって覚が違う為それなりに時間を必要とする作業だからだ。だが、エスメラルダは1時間足らずでクラス全員の魔力開通を終えてしまった。彼が帝都きっての才媛と呼稱される所以である。

「ヒッヒッ、騒ぐんじゃないよお前たち。お前たちはまだ魔法使いへの第一歩を踏み出したに過ぎないんだからね。それと……むやみやたらに魔力を出すんじゃないよ。最悪、『死ぬ』からねえ、ヒッヒッ……」

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「!?」

當り前に死を口にするエスメラルダに教室が一瞬で靜まり返る。お互いに魔力を浴びせ合っていたお調子者の子供たちは、を震わせてエスメラルダに駆け寄った。

「せんせえ、おれいっぱい出しちゃった……!」

「ぼ、ぼくも……! どうしよう!?」

騒然とする教室の中、リリィも自分の機で深く頷いていた。帝都近くの森にピクニックに行った際、魔力を使い過ぎて倒れてしまったことを思い出したのだ(ヴァイス的には魔法の練習の為の冒険だったが、リリィの頭の中ではピクニックに置き換わっていた)。あの後、リリィはぱぱに心配をかけまいと固く心に誓ったのだった。

「ヒェヒェ、安心しな。それくらいじゃ死にやしないよ。ただ……私の見てない所で勝手に魔法を使うような悪ガキはコロッと逝っちまうかもしれないねえ」

「ひぃぃィィ……!!」

「!? りりー、しにたくない……!」

それはまだ分別のつかない子供たちが魔法で誰かを怪我させたりしないようにするための常套句だったのだが、子供たちはエスメラルダの言葉を真にけて震えあがった。実際に気を失ったことがあるリリィなど涙を浮かべて怖がっていたが、只一人レインだけはそれを噓と見抜いていた。

(なによこの子、泣いちゃってるじゃない。あんなのうそに決まってるのに)

子供騙しにまんまと引っ掛かるリリィを見て呆れるレイン。

レインの目にはリリィは年の離れた子供のようにしか映らない。背も低ければ話し方も子供っぽいのだから、そう思うのも仕方のないことではあるが。

(私がこの子に負ける……? ありえないわね、そんなこと)

確かにエルフは魔法に優れていると聞いたことがあるけれど、だからと言って全員が優秀という訳ではないだろう。リリィはきっと優秀じゃない方のエルフなのだ。そう結論付けたレインはリリィから視線を切り、騒ぐ他の子たちを見る気にもなれず、溜息を一つ吐いて窓の外を見た。

同級生が先生の噓に震えあがる中、私だけはこの空の青さを知っているのだ────そんなことを想いふけるレインの耳に、衝撃的な言葉が飛び込んできた。

「さぁて────それじゃあ魔法使いになった所で、早速冒険に行こうじゃないか」

「ぼーけん!?」

リリィとレインの聲がシンクロする。他の子どもたちもさっきまでの恐怖を忘れ、ワクワク満載の言葉に目をらせていた。

「実はね、帝都の近くにおっきな森があるんだよ。そこで実地訓練といこうじゃないか」

「え、うそでしょ……? さっそくじっせんってわけ!?」

流石のレインもこれには及び腰になる。母親のメディチから、暫くは魔法の基礎を學んだり初級魔法練習をするはずと聞いていたからだ。いきなり魔と闘うなど全く想定もしていなかった。

「そういうことになるさね。大丈夫、死にやしないよ。あそこの森は低級の魔しかいないからね」

「で、でも……まだ皆魔法も使えないんじゃ」

「それを使えるようにする為の冒険さね。いいかい? 生きは命の危険をじた時に一番長するんだよ?」

「命のきけんって言ってるし……」

レインの脳裏に一つのエピソードが浮かぶ。それは擔任がエスメラルダだと知った母から聞いた、噓みたいな話。

────『エスメラルダ先生はね、昔授業で森を燃やし盡くしたことがあるらしいわよ』

(あの話は本當だったんだわ……ど、どうしよう……)

不安になるレイン。さっきまではしゃいでいた多くの生徒も、今のエスメラルダの話を聞いて不安な表を浮かべていた。

そんな中、明るい聲が教室に響く。

「せんせえ、ぽよぽよあえる?」

「ぽよぽよ?」

エスメラルダはリリィに視線を向ける。

「あのね、ぽよぽよしてて、ぽよーんってあるくの!」

リリィはテーブルの上で小さな手を一生懸命跳ねさせる。そのきが近くの森に生息するスライムに似ていた為、エスメラルダはぽよぽよの正を摑むことができた。

「ああ────沢山あえるよ。一杯遊んでもらうといい」

「やった! りりーぼーけんいく!」

(こ、この子……魔がこわくないっていうの!? わ、私だって…………!)

「せ、先生。早くいきましょう?」

同時に椅子から立ち上がるリリィとレイン。二人に釣られるように、他の生徒も十人十の反応を見せながら立ち上がるのだった。

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