《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》第十一話 錯する思
「お、王様!?」
驚きのあまり、素っ頓狂な聲を出してしまう俺たち。
いったいどうして、王様がこんなところに來たのだろう?
皆目見當がつかない俺たちは、揃って顔を見合わせる。
「……本當に、王様なのか?」
「噓など申しません」
「間違いない。前に一度だけだが、城でお會いしたことがある」
いくらか落ち著いた口調で語るライザ姉さん。
なるほど、それで姉さんはすぐにフードの中が王様だとわかったのか。
道理で妙な態度を取っていたわけだ。
「けど、どうして王様がこんなところに?」
「そうです、理由が分かりません」
「それは……剣聖ライザ様の力をお借りしたかったからです!」
クルタさんたちの問いかけにそう答えると、メルリア様は縋るように姉さんの手を握った。
その眼はうっすらと潤み、悲痛なを訴えてくる。
相當に切羽詰まっているであろうことが、顔を見ただけで察せられた。
これは……もしかすると國の一大事なのかもしれない。
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皆ただならぬ気配を察して、自然と迫が漂い始める。
「……まずは落ち著いて。いったい何があったのです?」
メルリア様の肩に手を掛け、まずは落ち著くようにと促すライザ姉さん。
彼に導されベッドに腰を下ろしたメルリア様は、すうっと深く息を吸い込む。
そして表をし緩めると、ゆっくりと語り始めた。
「私としたことが、すっかり取りしてしまいました。えっと、どこからお話ししましょうか……」
「最初からお願いできますか? この國の事には、あいにく疎いもので」
「わかりました。先日、父王が隠居したことについては流石に皆さんもご存じかと思います。実はその後、王位を巡って兄上と叔父上の間で爭いが起きてしまいまして」
「ん? 確か、シュタイン殿下は既に人なさっていたはずだが」
「ええ、今年で二十二歳になります」
「ならば、シュタイン殿下が王位を継承するということでめようがないだろう」
基本的に、この大陸の國々では王位を継承するのは長子と決まっている。
長子がまだい場合やそもそも王に子がいない場合は爭いが起こることもあるが、人済の子がいるならば何も問題はないはずだ。
するとメルリア様は困ったようにふうっとため息をつく。
「お恥ずかしい話なのですが、兄上は昔から素行が良くなくて……。馴染みの娼婦に子を産ませたという噂まであるのです。それを父上が問題にされて、王位を叔父上に継がせたいと」
「……ありがちな話だな。國がれるときはだいたい絡みだ」
うんうんと頷くロウガさん。
彼が言うと、何だか妙に説得力のある話題だった。
すかさずクルタさんがツッコミをれる。
「それ、ロウガが言う?」
「俺は王子でも何でもねーからな、自由にしていいだろ」
「まあそうだけど、ほどほどにしなよ」
「……ええっと、話を戻しますね」
コホンっと咳払いをして、メルリア様はし緩んだ空気を再び引き締めた。
そして眉間に皺を寄せると、先ほどまでよりもさらに深刻な顔で言う。
「王位はひとまず叔父上が継ぐこととなりました。しかし、兄上はどうしても王になることを諦めきれなかったのです。今でも王位を簒奪するべく、裏でいろいろと謀を巡らせているようでして……。あのコンロンの連中ともつながりがあるとか」
「コンロンか……。また嫌な名前だ」
コンロンと聞いて、途端に表を曇らせるライザ姉さん。
ロウガさんたちもおいおいと嫌そうな顔をした。
コンロンと言えば悪名高い武商人だ。
俺たちも以前、コンロンの被害者であるラーナさんと會ったことがある。
はっきり言って、印象は最悪に近い。
「それで、私にどうしろというのです? まさか……殿下を討てと?」
大きく息を吸い込み、ライザ姉さんは意を決するように告げた。
すると、流石にそこまでは想定していなかったのだろう。
メルリア様はすぐさま首をブンブンと橫に振る。
「そ、そんなことは! ただ、今回の大剣神祭でどうしても優勝していただきたいのです」
「言われずともするつもりでしたが、どうして?」
「実は今回の大剣神祭は、兄上が開催を提案したのです。叔父上も私も、當初はこの提案に他意はないと思っていたのですが……。どうにも、そうではないようで」
「ほう? 何か怪しいきでも?」
「コンロンの伝手を通じて、國外から強者を集めているのです。理由はまだわからないのですが、何としてでも自の手の者を優勝させたいようなのです」
そう言われて、ライザ姉さんは腕組みをして考え込み始めた。
大剣神祭に優勝した場合、一どのようなことが起きるのか。
これについて最も詳しいのは、やはり前回優勝者であるライザ姉さんである。
「剣聖を手元に置いて、影響力を得たいのか? だが、それで王位を狙えるとも……」
「……そう言えば、剣聖がけ継ぐ剣があるとか言ってなかった? そひょっとしてそれを狙ってるとか」
「アロンダイトのことか? あれはただの象徴のようなもので、剣としての価値はほとんどないぞ。それに國が預かっているから自分のものになるわけでもない」
……なるほど、ただの飾りってわけか。
これがもし、聖剣のようなものなら多無茶をしてでも手にれる価値はあるのだけどなぁ。
そういう質のものであるならば、これの手が機になっているとは考えにくい。
「ま、いずれにしても我々が優勝すれば問題ない。コンロンの伝手で呼んだ強者などと言っても、たかが知れているだろう」
任せろとばかりに、ドンッとを張るライザ姉さん。
もともと、世界中の強者が參加する剣大會なのである。
王子が伝手を頼って人を送り込んできたところで、大勢に影響はないかもしれなかった。
が、メルリア様の表は晴れないままだ。
「それが、兄上は非常に厄介な相手を招集したようなのです。戦爭屋ゴダートという男を知っていますか?」
ゴ、ゴダート……!?
メルリア様の口から飛び出した思わぬ名前に、俺たちは眼を剝くのだった。
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【2022年6月1日 本作が角川スニーカー文庫様より冬頃発売決定です!!】 「オーリン・ジョナゴールド君。悪いんだけど、今日づけでギルドを辭めてほしいの」 「わ――わのどごばまねんだすか!?」 巨大冒険者ギルド『イーストウィンド』の新米お茶汲み冒険者レジーナ・マイルズは、先輩であった中堅魔導士オーリン・ジョナゴールドがクビを言い渡される現場に遭遇する。 原因はオーリンの酷い訛り――何年経っても取れない訛り言葉では他の冒険者と意思疎通が取れず、パーティを危険に曬しかねないとのギルドマスター判斷だった。追放されることとなったオーリンは絶望し、意気消沈してイーストウィンドを出ていく。だがこの突然の追放劇の裏には、美貌のギルドマスター・マティルダの、なにか深い目論見があるようだった。 その後、ギルマス直々にオーリンへの隨行を命じられたレジーナは、クズスキルと言われていた【通訳】のスキルで、王都で唯一オーリンと意思疎通のできる人間となる。追放されたことを恨みに思い、腐って捨て鉢になるオーリンを必死になだめて勵ましているうちに、レジーナたちは同じイーストウィンドに所屬する評判の悪いS級冒険者・ヴァロンに絡まれてしまう。 小競り合いから激昂したヴァロンがレジーナを毆りつけようとした、その瞬間。 「【拒絶(マネ)】――」 オーリンの魔法が発動し、S級冒険者であるヴァロンを圧倒し始める。それは凄まじい研鑽を積んだ大魔導士でなければ扱うことの出來ない絶技・無詠唱魔法だった。何が起こっているの? この人は一體――!? 驚いているレジーナの前で、オーリンの非常識的かつ超人的な魔法が次々と炸裂し始めて――。 「アオモリの星コさなる」と心に決めて仮想世界アオモリから都會に出てきた、ズーズー弁丸出しで何言ってるかわからない田舎者青年魔導士と、クズスキル【通訳】で彼のパートナー兼通訳を務める都會系新米回復術士の、ギルドを追い出されてから始まるノレソレ痛快なみちのく冒険ファンタジー。
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