《ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からのり上がり~》明日から頑張ろ
目が覚める。
どうやらちゃんとした所で寢かされていたようだ。
「っと……」
若干ダルさの殘る頭を振ると、まだ回復しきっていないがフラリと揺れ、再びベッドに沈み込む。
うーむ。ああ、そっか、を吐いてそのままお互いに頭ぶつけ合って気絶したんだった。
「おはよ。ハクちゃん」
「ソウも居たのか」
「うん。私も今まで寢てたからね」
そう言って顔を出したソウは、私よりも遙かに元気そうだ。
「いやー、二人共ちょっとはしゃぎ過ぎたね」
「だーね。つってもそっちはもう大丈夫そうだね?」
「まあ、同じオーバーヒートでも私は元からの病気の方だから慣れてるしね」
「病気……ああ、沖田総司のか」
「そっ、やんなっちゃうよね。どうせならこれくらいなくなってくれれば良いのに」
「神になっても無理なのか?」
「流石に力を完全に解放すれば大丈夫だよ。さっきみたいに中途半端だとダメだけど。我ながら厄介なシンボルがくっついてるもんだよ」
「シンボル……なるほど」
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沖田総司と言えばまず頭に浮かぶのは、貌の若き天才剣士であること、そして若くして病魔に冒されていたことの二點だ。
本人がシンボルと言ったように、恐らくはその有名なエピソードごと神格化してしまったのだろう。
不死のアキレウスがかかとが弱點であるように、背中の一點が弱點であるジークフリートのように。
エピソードが強力だからこそ神としての力は増す、その代わりエピソードに弱點などがある場合、それすらも自の中に組み込まれてしまうのだろう。
「だいたいハクちゃんの思った通りかな」
私の表から何を考えているのか察した本人からその通りだと正解を貰う。
いやだから、そうやって人の心を読むのはやめてしい。
「でも沖田総司って肺結核だろ。昔からは弱かったけど流石にそこまで悪いじもないよね? それにそれって私達の時代ならなんとかなったんじゃないか?」
「あー、殘念ながら私の場合は無理かな」
「そうなの?」
「うん。ほら、私って別からしてフィクションよりの質じゃん?」
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「確かに」
それ故にソウは、沖田総司とは違い病弱という設定だけが強く出ているのだそうだ。
「それに病気は私自に紐づいてるものだから、現代醫療でもこの世界の道とかでも治せないんだよ」
「それはまた……」
神にもこんな弱點があったのか。
神話や逸話。
それらがあることでより強い信仰が得られて強い神になる反面、それらに明確な弱點、死因が伝わっていればそれが打倒のための足掛かりにもなるわけか。
「そうだよ。だから私の病気ぐらいだったらまだ軽い部類にるんだ」
「なるほどね」
私達が思っている以上にやはり制約が多いようだ。
「それにしても、ハクちゃんの鬼の力は厄介だったね。あれがハクちゃんの鬼?」
「うん。鬼海きかいっていうらしい。効果は験した通り不定形の質化した力に【破壊】【脆弱】【貫通】をそれぞれ付與したもの」
単で武にも出來るし、武に纏わせ武自の質をプラスすることも出來る。
更には通常の徒手空拳にも使えて、防にも使える汎用の高い鬼だ。
その反面、効果自は抑え目となっているが、付與された力が力なだけにそこまでのデメリットはじない。
「まあ、確かにそうだね。特を防ぐ為にはハクちゃんの鬼海以上の力で打ち合わなきゃいけないのに、それでも特のせいで普通よりも多く力が削られる」
ソウの言う通り、鬼海を防ぐに私が使うよりも大きな力で抑え込むしかない。
しかし鬼海に付いている特がそれだけでは許さない。
【破壊】【脆弱】【貫通】がそれぞれに、打ち合う度に働き、相手の力をしづつ削いでいくのだ。
そのせいで相手の力の耗は通常よりもかなり早い。
単純に一時間戦えるはずが、三十分しか持たなくなって、それが鬼海を下回ると一気に瓦解するのだ。
更には攻撃も防も鬼海のさは私が込めた力によって変わるので、今後私が強くなればその辺の武や防よりも丈夫な裝備にもなる。
「うん。ハクちゃんにはピッタリな長型の力だね」
「我ながら都合の良い力が手にったもんだよ」
「鬼は本人の願、するや理想から紡がれるものが多いので、白亜さんの場合はああいった形になったのでしょう」
「うん。今まで全く姿もなかったのにいきなり現れて普通に會話に參加するのやめようか。ビビるわ」
「メイドですので」
「それだけで許されるほど萬能じゃないからなメイド!?」
「いえ、メイドこそ至高ですが?」
くっ、相変わらずなんで元神の癖にここまでメイドに傾倒しているのか。
いきなり會話に參加して來たテアは、素早く私の頭に手を當て熱を確認。次いで脈を測り、瞳孔のチェックと手早く済ませ、果をカットし始めた。
相変わらずのメイドである。
「どうぞ」
「ありがとう」
メイドとしては優秀なんだよなぁ。
「ありがとうございます」
「だから……もういいや。それで、鬼は願から発現するの?」
「ええ、鬼だけに限らず、固有のものはだいたい自の願か質、歩みが形になるものが多いですね。それがめたものか、願うもの、自すら気が付いていないものの場合もありますが」
なるほど。必ずしも自覚しているものの中から都合よく発現する訳ではないのか。
「それにしても、ようやく鬼の力も安定してきましたね」
「……これで力に破壊される心配はなくなったじ?」
「ええ、ここまで來れば大丈夫でしょう」
「そうだね。後は地道にコントロール出來るように頑張るだけだよ」
それが一番面倒なんだが。
「さて、それではここまで安定したなら、私から一つ教えたいモノがあります」
ゾワリとしたので思わず構える。
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ」
「本當に?」
「ええ」
「もしかして天蓋てんがいですか?」
「そうです」
「天蓋?」
なんぞそれ? また知らん単語が出て來た。
「一言で言えば力の防です」
「ほう」
 
「ハクちゃんはが脆いからね。いつか教えようって話になってはいたんだけど中々ね」
「何か理由が?」
「天蓋は神の技なんで習得難易度が高いんですよ。前に鬼神から習った高鬼鋼があるでしょう。あれに更に違う力をプラスした上位互換と言えば分かりますか?」
一気にどれほどの習得難易度がわかった気がする。
「そんなん出來るの?」
「ええ、白亜さんなら大丈夫でしょう」
「相変わらずどこから來るのその自信?」
「白亜さんはシルフィンに何度も攻撃を仕掛けているので、覚は他の人と違ってわかっているからです」
ああ、あいつの結界か。
「正確に言えば結界を超えた最終ラインですね」
そう言って私の手を握る。
「目を閉じて集中してください。今私がれている部分、そこに薄皮一枚力の層があるのが今の白亜さんなら分かるはずです」
目を閉じ言われた通りにそれを探る。
すると確かに、れ合うとの間に薄らと一枚、何か隔てたような覚がある。
そしてそれを知覚した私が、更に集中すると薄皮一枚しかない力の層が、底知れないほど深く圧倒的な壁となっている覚に陥る。
「何これ?」
目を開けて思わず訊ねる。
「知出來るだけ上等です。今度はこれを修行と並行して覚えて貰います」
「これは防力に左右されない力の層だから、質は結界に近いしハクちゃんには向いてるよ」
「確かにそうっぽい? これって霊力を主軸にんな力が混ざってる?」
「ええ、だから神の技なんですよ」
霊力を自在にれるのは神の條件だ。
確かにそれなら神の技と言ってもいいのかもしれない。
「今日はここまでですね。後はゆっくりと休んでください」
「いいの?」
「ええ、白亜さんが自覚している以上に疲弊していますからゆっくりと休んでください」
「そうだね。ハクちゃんはゆっくりしてるといいよ。また夕飯の時に起こしに來るから」
二人はそう言うと部屋を出ていく。
「はぁ〜」
またもバタンとベッドに沈み込み手を翳す。
遠いいなぁ。
ソウは今回神の力を解放したとはいえ完全にではなく、その力を使うのに結界の中という制限があった。
神の力がなければ皆も危なくなる可能は高いのに、まだまだ圧倒的に足りてない。
同じように倒れてもこうして寢込んでいるのは私だけ。
目指す場所は遠く、目標は遙か高みにある。
守りたいものは多く、そのための力が圧倒的に足りてない。
「はぁ〜、才能ねぇー……よし」
起き上がり頬を叩く。
現在地を確認して嘆いたらそれでお終い。
どう足掻いても嘆いても自分の位置は変わらないのだから。
「明日から頑張ろ」
それでもやれることがない今は、明日の自分に全て任せて眠る事にした。
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