《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第106話 奇跡>1/7,500,000,000②

「‥‥気合だけは認めてやるぜ。けどな!」

敵が攻勢に転じた。重力攻撃はもう無いと読まれたのか? 次第に押され、こちらがけ太刀になってきた。

「背後に1機! 暖斗くん!」

誰かの聲がした。

「うおおお!!」

――僕は雄たけびと共に、左手のサリッサをフルパワーで橫へ薙いだ。エンジンから「暴風(プレステル)」が吹き上がって。

サリッサ刃部は、前面の敵機をかすめて通りすぎる。

當然だよ。わざと短く持ったんだから。

バッキィィン!!

サリッサの長い柄。振り回したその後ろの部分、石突きで、後から近づいていたエラーダ機の盾を砕していた。

「ぐ! 我々の上位隠蔽(コンシール)‥‥が!?」

エラーダ機は姿をくらませて僕に近づいていた。そして不意打ちをするつもりだったハズだ。けどこの瞬間の僕には通じない。‥‥異変はアギオスマレーノスの方も気づいたようだ。

「得の柄でDMTの盾を割るだと! どうなってやがる!? 非常識にも程があるだろ!」

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依がさっき言った通りで、今僕も聞いたばかりだ。

「回春(アナネアゼイン)」

実は、僕が赤ちゃん狀態から急激に回復した直後は、マジカルカレント能力が最大値を発揮する。それを依はこう名付けていた。

依だから。真面目に熱心に、データを蓄積していたから。一途に僕を看ていてくれた彼だから。

この現象を発見できた。

この「回春(アナネアゼイン)」の効奏時間は、マジカルカレント能力が「異次元の領域」らしい。理論値が出ているだけで、まだちゃんと測定すらされていないからね。実戦では。

それに僕のマジカルカレント能力の「統制力」も上がっているらしい。エンジンが吹き上がって「風(アネモス)」とかが発生してるのは、それだけチカラが背後に逃げちゃってるからなんだ。今も「暴風(ブレステル)」は起こっているけど、それ以上に機にエネルギーが配給されている。

それが槍の柄で敵の盾を割った理由だ。

アイゾメ・ラクトンによるマジカルカレント後癥候群の急激な回復。

それによる回春(アナネアゼイン)の発現、マジカルカレントの無雙狀態。

そして僕の機の重力子エンジンの程、半徑100メートル以に敵機が存在すること。

これが先ほどの攻撃、「座標特異的重力攻撃」、の発條件。そして今僕の機に起こっているブースト現象だ。

僕と依の間に起こった奇跡は、後癥を回復させる事だけじゃない。その先があったんだ。

この星の総人口、75億分の1、を超えていく「奇跡」。

盾を割られて逃げようとするエラーダ機を、振り向いてさらに加撃する。劔(つるぎ)の一撃だ。――そして橫薙ぎにくサリッサの後ろ柄が、アギオスマレーノス機の牽制にもなる。

「すっごい迫力! ‥‥これがDMT戦闘なのね」

依は遊園地のアトラクションみたいな呑気な事言ってる。けど僕の背中にぎゅ~~って著してるから、心怖いはずなんだけど。

「サンキュー。麻妃」

僕の視線の先には、空に浮かぶKRMがあった。

「紅葉ヶ丘さんが再構築してくれて、ウチも何とかけるようにはなった。それに上位隠蔽(コンシール)ったって、熱排気や金屬反応をゼロにできるワケじゃあないし」

さっき「背後に1機!」と教えてくれたのは彼だ。

そして。

「ぐおッ! まただ。ぐうあああ!」

あり余る程のマジカルカレント能力。もう1回エラーダ機を「座標特異重力攻撃」で拘束する。敵DMTの骨格と関節部が軋んで、無口なはずの敵がび聲を上げている。

大地に押さえつけられた狀態で立っているのがやっとの敵を、剱(つるぎ)の一閃で撃破した。

「うおお!!」

僕は劔を鞘にしまうと、回転槍(サリッサ)を両手に持ちなおして殘りの敵機に突きれる。

「サリッサは集団戦法(ファランクス)用の武だッ! こうすりゃあ!」

アギオスマレーノス機が迫る刃部をはじいて懐にろうとする。コーラが何度も教えてくれたきだ。

「ぎゃああああ!」

激しく回転する刃部が敵の盾を削った。一瞬で発生した火花が、モニターを塞ぐ。

僕は素早くバックステップして、槍の作で敵を間合いにらせない。‥‥もう、敵の踏み込みは怖くない。

ズズン!

念のため重力攻撃で敵のきを封じる。敵機の足部が地面にめりこんだ。

「素人中學生が! どこでこんな技を!」

「みんなだ。僕ひとりの力じゃない!」

槍先に想いを込めた。仲間の顔を思い浮かべながら。

回転刃が、敵の裝甲を削っていく。切削塵が白い煙を上げる。

「暖斗くんは敗けないもん。マジカルカレントの発現量は反作用、その回復直後が顕著なの!」

依がぶ。いつの間にか縦桿を握る僕の手にその手を重ねていた。

「わたしはそれを見つけて、回春(アナネアゼイン)と名付けた。マジカルカレントの呪縛は、醫療が、人の意思が超えていくわ!」

モニターが白く明滅した。止まらない旭雷だ。今までで一番凄まじい。

僕の両肩についている電源接點「コーヌステレスコープ」。

同様の機構を、DMTは両手のひらに備えている。――當然、手用兵裝(インスツルメント)にエネルギーを送るためだ。

重力子エンジン、右手、回転槍(サリッサ)、刃部。

生み出した力が、伝わっていく。僕と依の思いをのせて。

刃部の手ごたえが変わった。切削塵から、金切り音と火花に移って。

敵DMTの金屬骨格に屆いた証拠だ。まるで火祭りのように、盛大に火花が舞っていく。

その次は黒煙だ。ぶすぶすと不気味な煙を吐きだした。部機が剝ぎ取られ、刃部に焼かれているんだ。

「畜生! この俺が! こんな鬼に!」

敵の、最後の聲だった。

「俺の真の任務が‥‥‥‥もうしで、あの戦艦のに屆いたのに‥‥‥‥。あの、ノイズのに!」

敵機は倒れた。

「ふいい~~。盾ごと削り倒すとは。ぬっくん無雙すぎ。依の前だからって」

「こら麻妃。何だって?」

「ごめん。ごめんてぬっくん!」

KRMの浮く方を見ると、紅葉ヶ丘さんの小型DMTが來るのが見えた。

「終わったね」

傍らの依を見た。笑顔を見たかったんだけど。

「‥‥‥‥。おかしい。おかしいわ。‥‥‥‥何か見落としてる」

依は口に手をそえて考え込んでいた。

「ノイズ‥‥‥‥そうよ。‥‥‥‥ゼノス君だわ。‥‥あの後、わたしはいじめられて自分で一杯になっちゃったけど! ‥‥‥‥ああっ!! すべてつながったわ。こんな事だったなんて!」

それは、依が!? っていうくらいの大絶だった。

「紅葉ヶ丘さん!! ラポルトに戻って!! そして!!」

「お洗濯を取りこんで~~~~!!!!」

「洗濯!? 依さん気を確かに!」と思ったそこのアナタ! 次回をお楽しみに。

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