《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》892 技能が大活躍

隠された門を抜けて『神々の塔』の部へとり込んだ瞬間、スライムと姿がはっきり見えない謎の魔に襲われることになったボクたち。不意打ちこそ避けられたけれど、良いとは言えない狀況となっていた。

「迷宮のそれぞれの階層にらない限り安全という話ではありませんでしたの!?」

「ここも迷宮の階層の一つということなのかもね!」

憤懣やるかたないといったミルファの怒聲にそう返す。スタート地點が安全圏となるかどうかはそれぞれの迷宮によって異なっているからだ。過去には迷宮にった瞬間に魔からの攻撃をけて死に戻りをした、なんて愚癡が掲示板に書き込まれたこともあったらしい。

もしくは長い年月の間に魔が住み著いてしまったのか。これならスラットさんから何の注意もなかったこと、つまりは彼も知らなかったことに一応の説明はつく。

スラットさんがすべての元兇で黒幕だった――「ナ、ナンダッテー!?」――な展開でもなければ、今さらボクたちが不利になるようなことをする必要はないから、十中八九はこれだろうと思う。

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実はあの人が……、というのはそれらしいことを頻繁に匂わせていないと立しないものだからね。

……あれ?そういえばスラットさんは最後の王の弟で、しかも孤立していたのだよね?これはもしや十分にそれらしいことに該當している?

……ヨシ!まあ、そんなこともあるよねー、ということで深くは考えないことにしよう!なにせ今は魔たちに襲われている真っ最中であり、そんなことを考えている場合じゃないもの。

みんなが抑えてくれている間に、しでも敵の報を仕れないと。〔鑑定〕先生、出番ですよ。技能を使用して分かったのは以下の通り。

天井に張り付いていたスライムは『アシッドウーズ』。名前の通りに強力な酸をため込んでいる極めて危険な個だった。至近距離からプシュッとそれを吐きかけるのが主な攻撃方法らしい。ダメージもさることながら武や防の耐久値を著しく減させる効果があるようで、トレアの攻撃で距離を取れたのは不幸中の幸いだったね。

ただし、酸への耐が高いのはそれをため込んでいる袋部分だけで、上手くそれを破壊することができれば自滅させることも可能であるとのこと。

また、スライム系の共通の弱點でもある核を破壊することでも倒すことができるぞ。

対して、背後から迫ってきていた謎の人型は『冷たい炎(かげろう)』なる魔だった。暑い日の炎のように向こう側が揺らいで見えるためというある意味そのままな名前だわね。

とてつもなく厄介そうだが、こちらも対処方法はある。実は保護的なそれに能力を全振りしているようなのだ。なるほど。接近に気が付くことができたのもそのためという訳だ。

そして、位置の特定がし辛くて戦い難い反面、攻撃を當てることができればすべて有効打になるらしい。攻撃方法もシャキーンとびた爪によるものだけなのだとか。

まさに一點突破型だわね。アシッドウーズとの挾撃が決まっていれば、もなく敗北していたかもしれない。

まあ、現実――ゲームだけれど――には奇襲をしっかりとくい止めることができたので、ここからはボクたちのターンだ。

それにしても、なんやかんや使い続けて練度が上がったからなのか、予想していた以上の報を仕れることができたよ。

「ミルファ、リーヴ!その冷たい炎は攻撃も防も大したことないからに回らずに攻め立てて!ただし逃げられると発見するのは難しいから、必ず止めを刺すように!ネイトは用心で二人の回復を第一にサポートへ回って」

もしも怪我をしてしまっても、彼の回復魔法があれば問題ないはず。これでは以後は何とかなるだろう。

問題はアシッドウーズ(こちら)だ。近付けば酸をける危険があるから、必然的に遠距離からの攻撃が中心となるだろうね。そしてこちらには遠距離攻撃のスペシャリストのトレアがいる。

が、ことはそう簡単には進まない。確かにこの戦いだけを見れば、トレアはアシッドウーズの天敵とすら言えるだろう。しかし目線を変えてこれから先のことまで含めて考えると、必ずしもそうとは言えなくなってしまうのだ。

「うわーお……。撃ち込んだ矢が跡形もなく消えちゃってるねえ」

それほど耐が高くないとはいえ、どうやら酸をため込んでいる袋以外の箇所にも、多はその質が存在しているらしい。

「いくら矢が消耗品とはいえ、無駄になると分かっていて撃ち込みたくはないよ……」

『神々の塔』へと踏み込んだことで、イベント容の流出やネタバレを防ぐために『異次元都市メイション』への出りや購できるものに制限がかけられている可能が高い。『天空都市』で死霊たちを相手に大立ち回りをしなくちゃいけない、かもしれないことを考えると矢の一本すら無駄にはできないのだ。

「消耗しても時間経過での回復もできるMPを使った攻撃を中心に據えるしかないか」

要は魔法及び一部の闘技だね。……しまった!ネイトもミルファも冷たい炎の相手を任せてしまったよ!?こちらの殘るメンバーはボクとエッ君とトレアの三名だ。

先程説明した通りトレアは除外となる上に、エッ君は肝心要のMPの総量に不安が殘る。

え?〔不完全ブレス〕?非破壊オブジェクトすらもぶっ壊しちゃうような危ないものは使えませんから!エッ君本人への反もシャレにならないレベルだし。

よって、攻撃面ではボク一人で何とかするしかないということになる。

「エッ君は距離を取りながらあいつの注意を引いて。安全第一でお願いね。トレアはあいつを一発で倒せるように、核か酸袋のあるところを探って」

サクッと倒せてしまえるなら、矢の一本くらいは必要経費どころか安いものだ。ついでに言うと、今後のこともあるからここで彼に役立たずだと凹まれても困るのだ。

ちらりと橫目で伺ってみたところ、ミルファとリーヴがなにもなさそうに見える場所をズバズバと斬りつけていた。位置を悟られないようにするためなのか、視界隅に表示されている冷たい炎のHPゲージがぐんぐん減している。あちらはそのままお任せして問題なさそうだ。

余談ですが、敵のHPゲージは隠ぺい系の技能によって隠されている場合を除き、基本的には相手の頭上に表示されるよ。

「それじゃあ、こっちもスライム退治を始めましょうか!」

ちょろちょろき回ることで、上手い合にエッ君がヘイトを集めてくれているようだ。ふむふむ。それなら単に魔法をぶつけるだけでなく、大ダメージを狙ってみましょうか。

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