《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》凡人探索者・書籍版連作品・《アレタ・THE・52nd STAR★》
書籍版、たくさんご購頂きありがとうございます。おかげさまで発売初日で続刊決まりました。
そこで今回は書籍版の補完の話です。
味山がホラーしてる中で、アレタがなんでどうしてあんなじになってたのかのお話になります。
WEB版のみの方はごめんね。書籍版はWEB既読の方ほど楽しめるようにしてるのでそちらもぜひお願いします。
~アレタ・アシュフィールドが沈下した直後。バベルの大第二階層、大草原地帯~
「こんにちは、アレタ・アシュフィールド」
その聲で、目が覚めた。
寢て、いた……?
あたしは頬にるらかな土と草のベッドに別れを告げて、ゆっくりと立ち上がる。
目の前に広がる、草原の景。
ああ、ここ、知ってる、第二階層だ。あたしは、タダヒトを突き飛ばして、沈殿現象に巻き込まれて、ここまで運ばれたらしい。
「……參った。狀況は最悪ね、うん?」
「あはは、こっちです、こっち。アレタ・アシュフィールド」
聲がした。あたしの目の前で細い腳を投げ出して草原に座り込んでいるの子。白と黒のタクティカルスーツ、獨のナショナルカラー。
「……ニホン人? なんで、UE圏の裝備を?」
顔立ちからして、アジア人。ううん、ニホン人、黒い髪に、リスみたいなくりくりした目。可い子だ。
でも、何かがおかしい。こんな子がダンジョンでなんの張もなく、笑っている。その割に裝備は傷だらけ、まるで今さっきまで怪種と戦っていたかのようで。
「良かった、目を覚まして。綺麗な寢顔でしたよ。同じでも、見惚れちゃうくらいに」
「……あら、貴こそ可らしいお嬢さん。こんなところで何してるのかしら? あー、ミス……」
「ジェーン、そう呼んでくれて結構ですよ。52番目の星」
ぱっぱと土を掃いながら、彼が立ち上がる。
「ジェーン……ね」
笑えない名前だ。
「あはは。私の主人が付けてくれた名前です。悪趣味でしょう? まあ、でも今は気にっています。元の私だった頃の名前よりも、ね」
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彼が笑う。顔が隨分悪い、土気じみた青さ。なのに表はとてもかだ。
「ジェーンには主人がいるの? メイドか何かには見えないけど」
「はい。人間のことが大好きで大嫌いで人格……が破綻していて、死を集めていじくり回すのが生きがいの、めんどくさい主人ですが。ああ、メイドではないです。私は彼の人形と言うべき存在でしょうか?」
「……へえ、面白い主人ね。……ジェーン、結論を急いでもいいかしら。あたし、仲間が心配なの。貴方の主人、もしかして最近探索者たちが大勢行方不明になってる件と関係あるのかしら?」
これは勘だった。あの救難通信の容も確か現場が大草原。あたしを、いえ。タダヒトを狙っていたかのような正不明の存在からの攻撃は――。
「はい、もちろん。ここ1ヶ月で頻発している行方不明になっている探索者、その7割は主人の仕業ですね」
けろっと答える彼の言葉に、あたしの溫度がすうーっと下がっていく。
うん、大丈夫。調子はいいみたい。
「そう、なら――」
「私も、その中の1人でした」
「は?」
今、この子、何を?
「生きてた頃の私は、探索者でした。貴とは違う凡百の凡人。特別なんて何もなくて、たまたま探索者の適があっただけの大凡の中の1人。貴のようなお星様とは全くちがう石ころみたいな存在でした」
「………貴、なにを言ってるの?」
あたしの言葉に彼はにっこり、微笑んで。
「でも、今は違います。私は、主人に、あのおぞましい存在に選ばれたんですから」
「ッ」
ぼこり。
腕。彼のそれが歪んで、膨れて形を変えていく。普通の人間ではない。
「能テスト、です。アレタ・アシュフィールド。私は、彼に選ばれました。人形と化してなお、人間の魂を失わなかった私は、試験機に選ばれました。だから、これはテストなんです」
「………最悪ね」
「アレタ・アシュフィールド。探索者の最高峰の存在。人類の特異點。さあ、問題です。果たして貴に、我々人形はどれだけ通用するのでしょうか。解答を、我が主人に」
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「人の話を聞かない子ね」
まあ、あたしもそうだけど。
「能テスト、変化。変化速度、強度を両立するため人の基本構造はそのままに。異なる魂と異なるの定著実験も同時進行。"名" 指定探索者 "魔弾"」
「おっと、嫌な言葉が聞こえたわ」
ぐねり、ぐねり。形を変えていく彼の腕がしづつあるものへと変化していく。
「機能、生時5割の機能を確保。ふふふ、ああ、一度やってみたかったんです。ずるいですよね、あなたたちだけ、特別な人たちだけ、こんな力が使えるのって。ずううっと羨ましかったんですよ?」
「それ、まさか、あなた……」
ぞわり、首の後ろを何かが這うような嫌なじ。この覚をあたしは知っている。
この覚は警告だ。目の前の何かはお前を殺すことが出來る存在だという本能からの警告――。
「・裝填」
あたしは、それを見たことがある。彼との共同任務の時に、彼、カタリナ・A・ハインラインの――。
「"ザミエル・バレッタ“」
腕が変化する、ぐちゅりとが沸いて、それが銃口の形に。
「うそでしょ」
それは、あの指定探索者、底抜けに明るくて、故に恐ろしい彼、カタリナ・A・ハインラインの力だ。
不可避の銃弾、あたしは首の部分にじるしびれに従って、をそらす。風切り音が耳元で鳴って、背後の木が轟音を立てて倒れていく。
「あら、すごいですね。今、完全に初見のはずなのに、避けられちゃいました、さすがは特異點。52番目の星。我が主人が一番警戒している人類なだけはあります」
「あなた…… 誰なの。魔弾って呼ばれる指定探索者とは面識があるけど、顔とか全然違うのだけれど」
まずい、まずい。とにかく時間を稼ぐ為に言葉を。
今、この事態は確実に何かがまずい。
わからないことだらけだ。自らをジェーンと名乗るこの子は確実に、ある指定探索者の力を扱っている。ありえない。
は世界に唯一無二。同じなんて今まで発見されたことなんてない。
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「アハハ、アレタ・アシュフィールド。あなた、々考えていますね。素敵です。まだ、この程度の狀況では余裕なんですね、UEの中でも上位の指定探索者、“魔弾“の力を前にしても、あなた、まだ、私を救おうとしてますね」
呼吸と同時に、また彼の銃と化した腕から、銃弾が発される。
「ッ!?」
ベルトから武裝。投げ槍を振りぬき銃弾を斬り掃う。きいんと澄んだ音と同時に、投げ槍の切っ先が砕けた。
「うそ! あはは! すごい! 槍で銃弾を弾くんですか? あは、人間離れしすぎですよ。どうしよう、あと4発しかない」
ヘラヘラと笑う彼、軽薄な聲、薄っぺらな態度。
それでも、あたしは彼のことを笑えない。殺傷力のある力を向けられても、彼に対して怒りを抱けない。
「……あなた、誰なの」
あたしは、問いかける。ジェーンと名乗ったよく笑う彼へ。
「……あはは、だから、ジェーンと」
彼がまた、笑って。
「ジェーン・ドゥ。元不明、識別困難の死の名稱。趣味が悪い問答に付き合う気はないの。魔弾の力を扱う奇妙なお嬢さん、あたしはアレタ・アシュフィールド、あなたは、誰?」
あたしの言葉に、彼がぴたりときを止める。
張り付いた笑顔はそのままに、銃口へと変化した右腕が、わずかに下に傾いて。
「…………私、は。ジェーン、ドゥ…… 元不明識別困難の死デス……や、めて」
やめない。
「違うわ、あなたはジェーンではない。名前が聞きたいの。あたしはアレタ・アシュフィールド。ここへはある行方不明者の捜索と救助にやってきた、探索者よ。あなたは?」
自分のことを、笑いながらジェーンと呼ぶこの子をあたしは笑えない、怒れない。
「わたし、は…… 人形、死んだ魂、死んだ、異なる2人を混ぜて作られた、死人の人形…… だから、名前なんて、ない」
あたしは一歩前へ。
「違う、あなたは人形じゃない。人形は、自分の名前を問われてそんなに揺したりしない。あなたには、心があるの」
「こ、ころ? わたしに、? だって、私、もう、死んでる。あ、ああ、そうよ、そうだ、たすけてっていったのに、誰も來てくれなかった。変になったみんなを連れ戻そうとして、それで――」
「ごめんなさい」
「え」
「間に合わなくて、ごめんなさい。あなたの悲鳴を無視してしまってごめんなさい。救えなくて、ごめんなさい」
苦しい、その時の彼の気持ちを想像するだけで苦しい。どれだけ怖かったのだろうか、どれだけ辛かったのだろうか、どれだけ、悲しかったのだろうか。
「やめて、気持ち悪い…… 気持ち悪い、気持ち悪い。私を、私をそんな目で見ないでください!! 今更なに!? 私、私、化けになったんだよ! 誰も助けてくれなかったから! セーフハウスでひとりになって、ずっと待ってたのに! やっと助けが來たと思ったらを引き裂かれて、臓を抉られて! 首とを分けられてさ! 怖くて、とてもとても怖かったのに! 誰も助けてくれなかったのに!」
彼のびはあたしには、泣き聲にしか聞こえなかった。
「あたしがいる」
「ハ?」
「あなたは死んだ。でも今こうして、今、あなたはあなたとしてあたしにんでくれている。あたしはその奇跡にかけたい。あなたを助けたいの」
これが子供じみた傲慢としても、他の誰にも理解されない狂気だとしても。あたしは、目の前の聲から目を背けることは出來ない。
「ふざけてるよ、アハハ、"ザミエルバレッタ"」
「ッ!?!」
お腹、當たった。防刃、防弾仕様のインナーを貫き、に食い込むの弾丸。
めちゃくちゃに、痛い。でも臓まで來てない。皮一枚、平気。彼はもっと痛かったし、それに
――ぎゃあああああああああ!? いってええええええええ 死ぬうううううううう!!!???
脳裏に浮かぶあたしの補佐のけないび聲。でも彼はそれでも、前へ行くのだろう。
「ふふっ、そうよね、あなただって、こんなものじゃ止まらないもの」
ならば、前へ。
お腹から流れる溫かいの覚すら無視して。
「あたしを、見て。あたしは、あなたをこれ以上傷つけない」
「ひ…… 、なんで、なんで、避けないんですか、なんで」
「あなたを救けにきた」
「ァ」
彼はきっと揺れている、まだ彼の心はそこにある。
「もう一度、ううん。何度でも聞くわ。あなたの名前を教えてちょうだい」
「ァ、ァア……」
「あたしの名前はアレタ・アシュフィールド。あなたを救いに來た探索者。あたしはあたしの大いなる責任を果たす為にここに來た。あなたは? あなたの名前を教えてよ」
「私、は」
もう、あたしと彼の距離は手をばせば屆く距離。彼の小さなは震えてる。
お腹の痛みは関係ない。この子がけた苦しみと悲しみに比べれば、痛みと呼ぶことすらおこがましいから。
あたしは彼を抱きしめる。
――冷たい、。
「あ」
「大丈夫、あなたを苦しめるもの、その全部からあなたを守る。約束する。だから、お願い、あなたの名前を教えて。あなたは誰かの人形じゃない。それを自分で取り戻すの」
「あ、たたかい…… 私、私、の名前…… おにいちゃんが呼んでくれたわたしの名前…… そうだ、わたし、私生きなきゃ…… おにいちゃんが、生きろって、のぞみは、生きるんだって ああ、私の名前は――」
「教えて、あなたの名前は」
「――わたしの名前は、きはら のぞ『実験完了。アレタ・アシュフィールドの持つ特異、”英雄、主人公”が齎す影響が、人形の作に影響するかどうかについて。解答、有意は不明だが、被験にかけた暗示は解除され、アイデンティティの回帰現象を確認。……一部の人類、カリスマを持つ個からは人形への作に干渉出來る可能が発生。今後の運用に生かす必要有り』
「は?」
どんっ。あたしのを彼が思い切り押した。冷たい言葉と裏腹に、その表はとても安らかで。
「――ありがとう、英雄さ『実験完了につき、被験脳髄の破棄を開始』
プくゥ。
風船が膨むみたいに、彼の顔が。
パンっ。
それで一気に弾けて。
ぱしゃり。紫のが、あたしの顔にかかった。つめたくて、溫かな。
「は」
ひとつだけ、あたしが理解できたのはひとつだけだった。
『脳髄の破壊を確認。仮説存在"魂"が存在する箇所の破壊により試験機"キハラノゾミ"の完全破棄を完了、これより部分、指定探索者"カタリナ・A・ハインライン"の、およびに宿る"ザミエルバレッタ"の人形稼働中の作チェックを開始』
救えなかった。
目の前で、あたしはまた取りこぼした。
「あ」
お腹が痛い。頭が震える、目の端がゆっくり、赤く染まる。ああ、ああ、きっと、これはダメだ。悪い酔い方だ――
『第二実験開始。"指定探索者"のを"本"が直接作した場合、特異點アレタ・アシュフィールドの戦闘に耐えるか否か。耐久実験、開始』
「――」
もう理由はいらない。目の前のコレがなんであるのかとか。彼の本とか、実験とか、そんか言葉、報、全部もうどうでもいい。
「――消してやる」
目の前の首のない、死骸に宿るソレ。ソレだけは滅ぼさなくてはならない。
酔いよ、お願い。ダンジョンがもたらす、呪いたち、今だけでいいから。
あたしから全て持っていけ。
人間も慈悲も躊躇いも。他人への優しさとかそういうの、お願いだから全部消して。
「あたしは、人間じゃなくてもいい」
目の前で助けを求めていた人を、たった一人の人間さえ救えないなら、それが人間だというのなら。
「あたしは、それでいい」
『……警戒開始、箱庭に"低気圧"の生を確認、実験名"特異點・52番目の星、戦闘限界テスト" 本により、指定探索者を素として"強化人形"の直接作を開始、の変化開始」
目の前の首無しの人形が、口もないのに生意気にも聲を出している。もういい、全部耳障りだ。
「あたしは、只の者ではない」
が蠢く。
「あたしは、善き者ではない」
舌がざわめく。
「あたしは、目印である」
バッドエンドが嫌いだった。ビターエンドは好きだけど。
この世の悲しいことに楔をうつため、この不完全で悲しい世界の絶対になるために。
「あたしは振るう者、従える者。風を呼ぶ者、雨を呼ぶ者、破壊を呼ぶ者」
酔いよ、酔いよ、酔いよ。このダンジョンに満ちる呪いよ。あたしを変えろ。この怒りを理や常識で冷やさぬように。
許してはならない者がある、この世に存在してはならない者がある。
「あたしは"嵐"」
あたしはそれを超え、それを調略した。呼び聲に答えて、あたしに跪け。
疾く來たりて。
「 顕現」
跪け。
「ストーム・ルーラー」
嵐よ、ここに。
世界が暗くなる、嵐の時間だ、嵐の夜だ。
風が唸る、あたしのの周りに逆巻く風が呼吸と同期していく。
雨が橫毆りに降り始める。風に舞う雨はあたしのを濡らすことなく、ただ唸り続ける。
『想定予想を大幅に超えるエネルギーを確認。……魔式での解析、模倣……全て不可能。"脳みそ"により逆演算式構築……… 一部解析………… "群"……?』
首無しの人形が、なにやらピーチクパーチク囀る。
ああ、もう、全部《うっとうしい》
《「うるさいのよ」》
腰のベルトから、投槍を取り出す。そのままそれを振りかぶり、腰を捻って、地面を蹴る。
オーバースロー。
放たれた槍は、風と雨を纏い、それを裂いて首無しの人形へ。
ずどむ。
奴のお腹に當たり前のように、命中。
『!? 反応速度の限界を超過…… 腹部損傷、怪28號置換臓損傷、再生開始…… 戦経験のある指定探索者の戦闘平均數値を大幅に超過…… 特異點、アレタ・アシュフィールドへの戦闘評価を向上』
「まだよ」
フォロースルーのまま、人差し指と親指をり合わせ、パチンと鳴らす。
『危険、』
「BOMB」
音、火花散る。
あたしの武裝に仕込まれた薬が指定した指鳴らしの音に反応し、炸裂。
お腹に刺さった槍は発し、奴のを真っ二つ。
『――魔式・仮説構築開始。"怪種に見られる超速再生の人による再現" 現実法則侵食開始』
「はあ?」
目を疑う。
発し、足を地面に殘して、空に飛んでいく奴の。そこに何かる紋様のものが現れて気付けば――
『定理証明"変質魔式・再生" 証明終了』
巻き戻しのように、奴のから新しい下半が生える。ご丁寧に著ていた服まで再現されて。
「なにそれ、すごすぎでしょ」
怪種の中には確かに、そんなふうに傷を瞬時に再生する種も存在する。でも、これは、いくらなんでも――
『知りたい。特異點"52番目の星" アレタ・アシュフィールドの異常な戦闘力、及びエネルギーの所以を。問い、アレタ・アシュフィールドの詳細を知りたい。解答、対象に生命の危機をじさせる』
『実験開始 人形による遠隔での魔式の使用』
「おっと、なにそれ。世界観、考えてほしいのだけれど」
『魔式 仮説構築開始――』
首無しがパチンと指を鳴らして。
『水炎』
大きな水泡が空気に浮き出る。明なクラゲのような水泡、その中には青い炎がゆらゆらと揺らめいて。それが一気にあたしの周りに何個も同時に現れた。に電気のようなしびれが走る、ここはまずい、死ぬとんでいる。
「こ、のっ!!」
よける、逃げなきゃ、が危機を告げる。でも、あたしの理が、魂が足をその場に踏みとどまらせて。
「――いや、バカね、あたし。そんなのは、あたしじゃない」
逃げない、やめた、まっこうからひねりつぶす。
これは水、ならばあたしの領域だ。
大丈夫、出來ると思えば出來る。それが、の扱うコツ。
ストーム・ルーラーがその水に影響を及ぼす。
ぶくぶくと一気に沸いて、弾ける水泡、やっぱり出來た。できると思ったから、やった。
『驚愕―― 問い、水炎の停止―― 解答、での魔式への干渉??』
「ストーム・ルーラー、薙ぎ払え」
極小の嵐を球へと変化、それを彼へ向けて放つ。
『魔式を、飲み込んで――? 驚愕、驚愕、あ』
球によって押しつぶされるようにそこにとどめられる化け、まだだ。
ベルトから風によって投げ槍を取り出す、ふわふわと浮く數本の投げ槍、その一本を手にとって。
1,2、3.三本の槍を連続で投げつける。風が運んだ投げ槍がほぼ同時に首無しの、腹、みぞおちに食い込む。
『――驚異的、魔式効果見えず』
膝をつく首無しをあたしは見下ろす。しぶとい、まだく。
「はあ、はあ、はあ…… あー、久しぶりに、、使いすぎた…… 気持ち、悪……」
『驚愕。特異點、52番目の星の戦闘効率評価に対し、大幅な上方修正が必要。問い、更なるび代が見たい。解答、への干渉』
「……へえ、まだ息があるわけ」
『――脅威的な速度。人類のの稼働限界を大きく超過―― 解析、箱庭の祝福、及び、からの浸食が原因と推ーーっ」
「よくしゃべる」
ズドム。それのに突き立つ槍がまた一つ増えた。
「あなたがどこの誰かは知らない。でも、あなただけは生かして帰さない。その薄汚い生命をもって、あなたが貶めた人達への算を――」
もう1発。踴れ五、跳ねろ、筋。あたしは相手に飛びつき、槍を突き立てたまま、更に腰のベルトからもう一本の槍を取り出す。
今度は逃がさない。ここで終わらせる。ペン回しのようにクルクル勢いづけた投げ槍の切先を、彼、いや、この化けの元に――
『い、たい、やだ、やだ、2回もしぬのは、やぁ……!!』
「ッ……!?」
首のない、奇妙な紋様が浮かんだ瞬間、彼のキハラノゾミの頭が再生していた。
あたしが救えなかった彼、きっと當たり前に生きて、夢に敗れて殘酷に死んだ彼。ひとりぼっちで、その斷末魔すら聞いてもらえなかったであろう彼の聲。
びくっ。ギリギリで彼の元に向けた槍を止める。あたしは彼の肩を摑んで、それで
『――素腐腐(すぷぷ)』
ぐにゃりと、その泣き聲が、笑いに歪んだ。
じゅちゅ。
「あ…… えっ」
刺された。頭、おでこ。
その敵のからびたのは、粘に濡れた鋭い手。あたしは、それを避けれない。
力が抜ける、膝から先の覚が消えて、あたしはその場に崩れ落ちる。
まずい、まずい、頭、頭を刺された。なに、これ、痛みが、ない。
『問い、つい先程、アルファチーム補佐探索者との戦闘においては通用しなかった人形による命乞いが、今回は通用した。"補佐探索者"と"特異點"の現段階での戦闘能力差は明らかに特異點が高い。なぜ? なぜ? なぜ? 弱者に通用しなかった戦"命乞い"が強者に通用した―― 演算開始、解答、通常社會コミュニケーションを測る生は同胞からの命乞いには特異點と同じく躊躇いといった反応を起こす。これは生理現象にも近い反応である。先程の補佐探索者は命乞いした個の頭部をためらいなく破壊した。通用しなかったのは、當該個“補佐探索者”が通常の、良心を持ち得ない―― 言語変換、"イカれている"からだと結論―― 気持ち悪い』
ぎょろ、ぎょろ。
がかないあたしを、目から手を生やした彼が見下ろしている。
ブツブツと高速で紡がれる呟き、をじさせない記號のような言葉の中に、最後の方わかりやすいほどの嫌悪と、恐怖が覗いたのだけはわかった。
『手接続完了。解析魔式起。問い。知りたい、知りたい。多種多様な生態、人格、行。知りたい、本はそれをむ。人を、知りたい。問い、特異點、アレタ・アシュフィールドの捕縛に功、解答、非常に有益なサンプル。これまで確保したどの人間、ホモ・サピエンス変異種・"探索者"の中でも最も解析領域の多い個…… 知りたい、知りたい、知りたい。解答―― 特異點・52番目の星の人形化を決定―― “魔弾”の時よりもさらに多くの知見に期待』
どくん。
ナニカが流れ込んでくる。手がビクビクと痙攣して、そこから流れるナニカがあたしを――
あ、ア、あ。視界が、真っ白―― これ、本當に、まず――
『人形化 開始。脳髄に端末の埋め込み生開始―― 魔弾の頭部においては端末の影響からたびたび抜け出していた事実を確認、所持者は共通して自我が強固の可能が高い』
ア、まず、これ。力、らない。
頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。あたしの深い場所、自分でも知らない場所をられているような――
《クスクスクス。あーあ、もう、仕方ないなあ》
聲が聞こえた。だれ? どこ? だれのこえ?
《アハ、ダメじゃない。こんなとこで躓いてる場合じゃないでしょ? 52番目の星が終わるのはここじゃない。もっと、もっと、もっともっと、どうしようもない所まで行った後。こんな終わり方じゃあ、つまらない》
聞いたことが、あるような。ないような、不思議な聲。
時間が止まって、き通っていくような覚に、あたしはただ、問いかけることしか出來なくて。
《クスクスクス。ねえ、52番目の星。ここで、いいの?》
その聲はあたしの聲にこたえてくれない。
《このままじゃあ、貴、何も救えずに終わっちゃうよ。クスクス、ほら、目を開けて。ほら、し、"わたし"達に委ねて。ほら、ほら、ほら。見せてあげようよ》
でも、なんて、懐かしい聲。
《この役割(52番目の星)の本當の力を》
あた、しは――
びきっ。
『――!? 改造の手、損傷…… 魔式、強制停止―― 問い、脳髄に注した端末、全て、消滅―― 何故、何故、何故』
頭が熱い。あたしは、自分のおでこに刺さっている黒い手を握りしめる。ブヨブヨしてくて――
「気持ち悪い」
『問い、魔式への干渉…… 過大な報の流を確認―― 脳みそによる、解析、開始――』
《あは、素敵。"貴方の脳みそ"、だものね》
その聲が愉快そうに、敵を眺めていた、眺めていた? なんで? まあ、いいか、わからない。もう、わからなくなっていく。
『解析完了―― 前提を、前提を間違えていた。52番目の星は、人間、では』
「ええ、そう、あたしね、人間じゃなくていいの」
うるさい、全部、全部うるさい。
が熱くて、頭も熱い。心臓が口からこぼれそう、吐息は炎のように、息をするたびを中から焼いていく。
手を思い切り握りしめて、あたしは立ち上がる。
『――當該端末の得た報は重要。問い、現況不利、解答退卻開始、問い、特異點、52番目の星の危険度評価を最大に変更、このまま我々の存在を認知されたまま退卻するのは危険―― 解答―― 人知竜魔式仮説構築開始、"記憶抹消"』
ばち。
黒い手から、流れる衝撃、電気が走ったようなと音があたしの頭を焼く。
「あ、は」
なんだっけ、なんだっけ、あれ? あれ? あたし、何してるんだっけ。
『短期記憶の抹消確認、本拠地への逃走開始―― 箱庭よ、部位の求めに応じて、門を開けよ』
目の前の、誰かが消えていく。地面に溶けるように、沈んでいく。ああ、沈殿現象、え? なにこれ、何も思い出せない。あたしは、なんでここに?
すぽん。あたしのおでこから手を抜いて、その人みたいな化けみたいなナニカが、沈んでいく。
あたしは立ち盡くすだけ。記憶が、おかしい。あれ? あれ? あれ? あたしほんと、何をしてたの? あたし、あたし?
え。、
「あたしって、誰? ここは、どこ?」
記憶が、どんどん抜け落ちて――
『短期記憶の消去は順調に進行中…… 特異點、アレタ・アシュフィールドへの対策プランは必須…… 攻略戦までに腑分けされた部位"耳"と特異點・アレタ・アシュフィールドへの二正面作戦の立案は不可欠―― ああ、本當に、興味深い』
『また、いずれ』
消えていく、沈んでいく。その顔が、どこかで見たことのあるような顔。ニホン人のの子がダンジョンに沈んでいく。
あたし、ほんと、何を――
《いいの? このままで。クスクス》
聲が聞こえた。
《行っちゃったよ、貴の手から救うべき可哀想な人を奪っていった奴がさ》
《違うよね? 例え記憶がなかろうと、例え何も覚えていないとも、この席に著いた貴は、52番目の星は知っているよね》
《さあ、その席の役割を、きちんと果たしてね。だって――》
聲が聞こえる、なぜか、とてもとても暖かくて、たくさんで、とても、悲しそうな――
《みんな、そうしてきたんだから》
「あたしは、人間じゃなくていい」
そうだ。答えなんか最初から決まってる。
《さあ、52番目の星》
《"英雄"を、履行して》
《みんな、そうしたんだから》
そう、きっと、貴の言う通りだ。
もう、記憶なんてなくていい。理由だってなくていい。あたしは人間じゃなくていい、そういうシステムでいい。
ただ、人を救う。ただ、人に害なす存在を打ち破る。
例え、このが滅んでも、あたしには
「大いなる役割が、ある」
あたしはもう、英雄でいいから。
嵐よ、跪け。風よ、びろ、雨よ、集え。
「あたしは、52番目の星。それで、いい」
滅べ。
嵐とアタシが、つながって。耳の裏側で誰かの笑い聲がずっと、響いてた。
『――』
ここより下、ダンジョンの深い場所でソレが焦ったことがわかる。あたしが何をしようとしているのか、気づいたみたい。
今更焦ったところで、遅い。
オマエダケハニガサナイ。滅ぼす。
あたしは、ただ、その役割に殉じて、嵐を集めた大槍を振り下ろす。きっとそれをしたら、あたしは帰れない。それだけはわかる。
「まあ、いいか、仕方ないもの」
さあ、行こう。もう何もいらないから、帰る必要もない。帰る、かえる? あは、どこに? あれ?
あたし、なにかを忘れているような、ううん、誰かを、忘れているような――
「よお、何してんだ、アシュフィールド」
どことなくおおざっぱで、いい加減な聲。
なれなれしくあたしの名前を呼ぶ聲。ああ、そうだ、あたし、アシュフィールドだ。
「酔いすぎだ、帰ろうぜ」
とても、ほっとする―― 聲が、嵐の中であたしに屆いた。
読んで頂きありがとうございます!ブクマして是非続きをご覧ください!
凡人探索者、2巻も加筆沢山するので引き続きよろしくお願いします。いつもありがとうございます。
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5/19【書籍化・コミカライズ】決定 Fランク冒険者のティムはある日、目の前に見知らぬ畫面が見えるようになる。 自分の強さが數字となって表示されており、さらにスキルポイントやステータスポイントなどを割り振ることができるようになる 試しに取得経験値のスキルを取得すると経験値が2倍に、魔法のスキルを手にすると魔法が使えるようになった。 これまで馬鹿にされてきた主人公の快進撃が今はじまる。 4/24日間ハイファンタジーランキング1位達成 4/25日間総合ランキング4位達成 4/27週間ハイファンタジーランキング1位達成 4/30週間総合ランキング2位達成 5/14月間ハイファンタジーランキング1位達成 5/14月間総合ランキング3位達成 5/17四半期ハイファンタジーランキング5位達成
8 161邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜
武術、勉學、何でもできる主人公がVRMMOで邪神と好き放題楽しんでいく小説です。 チートマシマシでお楽しみください。 作者の辭書に自重と言う言葉はない(斷言) 処女作、毎日投稿です。色々間違っている所もあると思いますが、コメントで感想やご意見いただければ勵みになるので是非お願いします。 作品への意見なども大歓迎です。 あと誤字多いです。御容赦ください。 注意 この作品には頻繁?に書き直しや修正が発生します。 作品をより良くするためなのでご容赦を。 大きな変更の場合は最新話のあとがきにて説明します。 Twitterハジメマシタ! ユーザーネーム「クロシヲ」でやってます。 ID的なのは@kuroshio_novelです。 コメントは最新話にてお返しします
8 61スキル:チートコード入力はスキル:検索とともに
俺は常磐 桐 異世界に召喚された。 クラスごと召喚された。
8 117悪役令嬢がでれでれに溺愛されるまでの話
悪役令嬢に転生して、その世界でフラグを折っていたら ヒロインよりも世界に愛されてしまった感じの話。 アルファポリスで最新話更新中
8 97従妹に懐かれすぎてる件
昔から仲の良かった従妹が高校進學を機に一人暮らしの俺の家に住むことになった。 可愛い女の子と暮らせるなんて夢のようだ、と思ったのだが……。 「ゆうにぃ、おはようのキスは?」 俺の従妹は想像以上に懐いていました。 もはや同居じゃなくて同棲、ラブラブな新婚生活だよこれ……。 季節を追ってエピソードが繰り広げられていく日常アニメならぬ日常ラノベ! 甘々過ぎてちょっぴり危険な二人の生活を覗きに行きましょう! 2017/7/28-30 本日のノベルバ ランキングにて2位をいただきました!
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