《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第109話 変な船①

「シールドゼロ! 実損しました」

「ミサイル発口が! 甲板をやられた!」

三連裝の主砲と各所の副砲が、敵艦隊を一方的に破壊していく。ラポルトを中心として秒針が進むように、の束が順番に艦隊を火の海にしていく。

「応しろ!」

「無理です。まだエネルギー充填率が!」

くな。まだ味方が! ぐわ!」

「浮くと撃たれる! 潛れ! 海中だ!」

「ダメです! すでに船が!」

艦隊は大混となっていた。東方10國、様々な國から集まった200隻が、右往左往していた。

だがその中の何隻かは。

「構わん。シールドオフだ。エネルギーは全て砲塔に回せ。目に見せてくれる!」

の準備を進めていた。

「‥‥‥‥やっと溜ったか。よし。主砲撃て!」

敵艦がラポルトに向けてビームを放つ。‥‥‥‥が。

何も無い空間を無為に通りすぎていく線の航跡。

「‥‥‥‥あれ? どうした?」

「‥‥‥‥索失(ロスト)‥‥しました」

ラポルトの姿は、敵艦隊の前から忽然と消えていた。

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*****

騒然となっている、幕屋の中。まほろ市民病院から20km南の地點。――アングリア王國の後方基地だ。DMTを降下させた地點に、各國同様の現地本部を置いていた。

「確かなんだろうな」

「はい。たった今、西方の集積艦隊に現れたと」

「病院に近い海域に潛んでいたのではないのか?」

「しかし、実損報告が出ております。確かに西方艦隊が襲撃されました」

「コンギラトが噓を言うメリットもないか‥‥」

司令の男があごひげをでる。

「もうすぐ再集結の時間だ。DMT各隊の最終チェックを――――」

そう言いかけた時だった。

「直上に艦艇! 國籍不明!」

「‥‥‥‥‥‥‥‥は?」

「ですから、本部直上に敵戦艦です!」

「なんだって!?」

「全長500m以上の大型艦です。この丸みを帯びた形は――」

司令は思わず幕屋を出る。ゆっくり旋回していく、空を覆う巨大な影。

「この特徴的な形‥‥‥‥やはりヤツか。一どうやって?」

敵本部の直上100mに、ラポルトが出現していた。

「現在1578ターゲット。砲門開きます。、人的ターゲット124を排除。あと20%よ」

「艦AI疑義照會中。人的ターゲット特定。不定反影(アーチファクト)を検知して人的ターゲットを再計上する」

その敵本部上空では、ラポルトが右旋回を継続しながら、陣地全域をスキャンしていた。半周し終わる頃から、砲撃に移っていく。

「疑義照會完了。エイムデータに人的ターゲット無し」

莉。問題無いわ」

「よし。じゃあいくよ。主砲副砲、撃(て)ッ!!」

ラポルトの右旋回はそのままに、陣地の各所に弾が撃ち込まれていった。ゆっくりと廻るラポルト。時計回りにぜていく敵。

「よ~~し。打ち方止め。ココは無力化できたかな? 次行こうか」

パットPCで地図を開く子に、渚がし意地悪な顔をした。

「ちゃんと言えたじゃない。2回とも」

その言葉に、子が黒縁眼鏡をくいっと上げて。

「ちょっと。いい加減しつこいんじゃないか? 悪だよ。そりゃあ最初忘れた時もあったけど、普通は忘れないよ。」

「あら? じゃあ普通じゃないから忘れたのね?」

「どういう意味だ? 渚學生」

「どうって。言葉通りの意味よ? この距離で聞こえなかった? それより悪って何?」

「安い挑発だな。だがその挑発に乗ってあげようか。『戦科のモンスター』さん」

その言葉に、インカムの紅葉ヶ丘が悲鳴を上げた。

莉ちゃんソレは言っちゃあダメええええぇぇぇ!!」

「‥‥ッ! あなたが人を捕まえて悪とはね。この『戦略科の腹黒ダークマター』さん」

「あらあら」

舵を握る泉がたまらず振り返る。子と渚はにらみ合ったままだ。

「ぎゃあああ! やめてええぇぇ!! 敵陣地の直上100mでケンカしないでええぇぇ!!」

*****

「なんだあの形は?」

見上げる兵達が口々に言う。コンギラトの一國。ベロノウの陣地だ。

頭上に浮かぶ巨大な戦艦、その上部裝甲から、カバーが開いて主砲副砲がせり上がってくる。そのフォルムは、丸みを帯びた涙滴型に近かった。

ラポルトの主砲が火を噴いた。ベロノウの陣地に、なすは無かった。

だが、攜行型地対空実弾を持っていたひとりの兵が、その砲を肩に乗せる。

「基地メチャクチャにしやがって!せめて一矢! ‥‥なッ!?」

空に向けた照準のその先に、もうラポルトの姿は無かった。

「もう。ケンカはダメですよ」

泉花音が、もう一度振り返ってふたりをたしなめる。

「すまない。泉さん。私とした事が」

「ごめんなさい。々気を使わせちゃったわね」

ばつが悪そうに頭を下げるふたり。子と渚だ。

「いや、割とよくあるんだよ。渚學生とのこんなやりとりは。ラポルト乗艦からは控えていただけで。そんなに深刻なモノでも無いんだ。ね? 渚學生」

「そうなのよ泉さん。そもそも莉とは『この計畫』を運用するにあたって相談されたのが端緒で。じゃ無かったらそもそもそんなに仲良くはしてないのよ私達。ね? 莉」

「ん? 含みのある言い方だね? 渚學生」

「ってか『深刻ではない』って何よ? 人をビッチ呼ばわりして」

「‥‥‥‥このままラポルトを更地に落とすけどいいかしら? お二方」

「「ごめんなさい」」

「ぎゃああああ! 良かったあぁ! 泉さんがいて良かったああぁ!」

紅葉ヶ丘は絶したままだった。

「そうね。話題を変えましょう? そろそろ私にも教えてくれてもいい頃かしら。このラポルトのを」

現在、上空10,000m。

ブリッジには白い雲海。雲の上の景が映し出されている。

「そうだぜ」

インカムから聲がした。七道璃湖(ななみちりこ)だ。

「私らメンテ組は、ずっと退避シートに縛りつけられてんだ。この! 何か面白い話聞かせろ」

「そうだね」

が言う。

「取りあえず、これから敵の後段組織を壊滅していく。時間が経つほどこの艦の報が出回って、今みたいに即応してくる事案が増えるかもしれない。まず殲滅だけど、次の目標に到著まで數分あるから、その隙間時間に隨時説明していくよ」

「了解だ。子の謎テンションは希だからな。あのラスボスなじで話してくれ」

次の目標はアマリア港だった。

「うん。じゃあ、話そうか。なぜこんな攻撃ができるのか? ラポルト、いや『第054戦區みなと軍港所屬、ヤサ級戦艦、ウルツサハリ・オッチギン』の真実を」

が語りだした。

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