《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第109話 変な船①
「シールドゼロ! 実損しました」
「ミサイル発口が! 甲板をやられた!」
三連裝の主砲と各所の副砲が、敵艦隊を一方的に破壊していく。ラポルトを中心として秒針が進むように、の束が順番に艦隊を火の海にしていく。
「応しろ!」
「無理です。まだエネルギー充填率が!」
「くな。まだ味方が! ぐわ!」
「浮くと撃たれる! 潛れ! 海中だ!」
「ダメです! すでに船が!」
艦隊は大混となっていた。東方10國、様々な國から集まった200隻が、右往左往していた。
だがその中の何隻かは。
「構わん。シールドオフだ。エネルギーは全て砲塔に回せ。目に見せてくれる!」
応の準備を進めていた。
「‥‥‥‥やっと溜ったか。よし。主砲撃て!」
敵艦がラポルトに向けてビームを放つ。‥‥‥‥が。
何も無い空間を無為に通りすぎていく線の航跡。
「‥‥‥‥あれ? どうした?」
「‥‥‥‥索失(ロスト)‥‥しました」
ラポルトの姿は、敵艦隊の前から忽然と消えていた。
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騒然となっている、幕屋の中。まほろ市民病院から20km南の地點。――アングリア王國の後方基地だ。DMTを降下させた地點に、各國同様の現地本部を置いていた。
「確かなんだろうな」
「はい。たった今、西方の集積艦隊に現れたと」
「病院に近い海域に潛んでいたのではないのか?」
「しかし、実損報告が出ております。確かに西方艦隊が襲撃されました」
「コンギラトが噓を言うメリットもないか‥‥」
司令の男があごひげをでる。
「もうすぐ再集結の時間だ。DMT各隊の最終チェックを――――」
そう言いかけた時だった。
「直上に艦艇! 國籍不明!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥は?」
「ですから、本部直上に敵戦艦です!」
「なんだって!?」
「全長500m以上の大型艦です。この丸みを帯びた形は――」
司令は思わず幕屋を出る。ゆっくり旋回していく、空を覆う巨大な影。
「この特徴的な形‥‥‥‥やはりヤツか。一どうやって?」
敵本部の直上100mに、ラポルトが出現していた。
「現在1578ターゲット。砲門開きます。、人的ターゲット124を排除。あと20%よ」
「艦AI疑義照會中。人的ターゲット特定。不定反影(アーチファクト)を検知して人的ターゲットを再計上する」
その敵本部上空では、ラポルトが右旋回を継続しながら、陣地全域をスキャンしていた。半周し終わる頃から、砲撃に移っていく。
「疑義照會完了。エイムデータに人的ターゲット無し」
「莉。問題無いわ」
「よし。じゃあいくよ。主砲副砲、撃(て)ッ!!」
ラポルトの右旋回はそのままに、陣地の各所に弾が撃ち込まれていった。ゆっくりと廻るラポルト。時計回りにぜていく敵。
「よ~~し。打ち方止め。ココは無力化できたかな? 次行こうか」
パットPCで地図を開く子に、渚がし意地悪な顔をした。
「ちゃんと言えたじゃない。2回とも」
その言葉に、子が黒縁眼鏡をくいっと上げて。
「ちょっと。いい加減しつこいんじゃないか? 悪だよ。そりゃあ最初忘れた時もあったけど、普通は忘れないよ。」
「あら? じゃあ普通じゃないから忘れたのね?」
「どういう意味だ? 渚學生」
「どうって。言葉通りの意味よ? この距離で聞こえなかった? それより悪って何?」
「安い挑発だな。だがその挑発に乗ってあげようか。『戦科のモンスター』さん」
その言葉に、インカムの紅葉ヶ丘が悲鳴を上げた。
「莉ちゃんソレは言っちゃあダメええええぇぇぇ!!」
「‥‥ッ! あなたが人を捕まえて悪とはね。この『戦略科の腹黒ダークマター』さん」
「あらあら」
舵を握る泉がたまらず振り返る。子と渚はにらみ合ったままだ。
「ぎゃあああ! やめてええぇぇ!! 敵陣地の直上100mでケンカしないでええぇぇ!!」
*****
「なんだあの形は?」
見上げる兵達が口々に言う。コンギラトの一國。ベロノウの陣地だ。
頭上に浮かぶ巨大な戦艦、その上部裝甲から、カバーが開いて主砲副砲がせり上がってくる。そのフォルムは、丸みを帯びた涙滴型に近かった。
ラポルトの主砲が火を噴いた。ベロノウの陣地に、なすは無かった。
だが、攜行型地対空実弾を持っていたひとりの兵が、その砲を肩に乗せる。
「基地メチャクチャにしやがって!せめて一矢! ‥‥なッ!?」
空に向けた照準のその先に、もうラポルトの姿は無かった。
「もう。ケンカはダメですよ」
泉花音が、もう一度振り返ってふたりをたしなめる。
「すまない。泉さん。私とした事が」
「ごめんなさい。々気を使わせちゃったわね」
ばつが悪そうに頭を下げるふたり。子と渚だ。
「いや、割とよくあるんだよ。渚學生とのこんなやりとりは。ラポルト乗艦からは控えていただけで。そんなに深刻なモノでも無いんだ。ね? 渚學生」
「そうなのよ泉さん。そもそも莉とは『この計畫』を運用するにあたって相談されたのが端緒で。じゃ無かったらそもそもそんなに仲良くはしてないのよ私達。ね? 莉」
「ん? 含みのある言い方だね? 渚學生」
「ってか『深刻ではない』って何よ? 人をビッチ呼ばわりして」
「‥‥‥‥このままラポルトを更地に落とすけどいいかしら? お二方」
「「ごめんなさい」」
「ぎゃああああ! 良かったあぁ! 泉さんがいて良かったああぁ!」
紅葉ヶ丘は絶したままだった。
「そうね。話題を変えましょう? そろそろ私にも教えてくれてもいい頃かしら。このラポルトのを」
現在、上空10,000m。
ブリッジには白い雲海。雲の上の景が映し出されている。
「そうだぜ」
インカムから聲がした。七道璃湖(ななみちりこ)だ。
「私らメンテ組は、ずっと退避シートに縛りつけられてんだ。この! 何か面白い話聞かせろ」
「そうだね」
子が言う。
「取りあえず、これから敵の後段組織を壊滅していく。時間が経つほどこの艦の報が出回って、今みたいに即応してくる事案が増えるかもしれない。まず殲滅だけど、次の目標に到著まで數分あるから、その隙間時間に隨時説明していくよ」
「了解だ。子の謎テンションは希だからな。あのラスボスなじで話してくれ」
次の目標はアマリア港だった。
「うん。じゃあ、話そうか。なぜこんな攻撃ができるのか? ラポルト、いや『第054戦區みなと軍港所屬、ヤサ級戦艦、ウルツサハリ・オッチギン』の真実を」
子が語りだした。
クリフエッジシリーズ第二部:「重巡航艦サフォーク5:孤獨の戦闘指揮所(CIC)」
第1回HJネット小説大賞1次通過、第2回モーニングスター大賞 1次社長賞受賞作品の続編‼️ 宇宙暦四五一二年十月。銀河系ペルセウス腕にあるアルビオン王國では戦爭の足音が聞こえ始めていた。 トリビューン星系の小惑星帯でゾンファ共和國の通商破壊艦を破壊したスループ艦ブルーベル34號は本拠地キャメロット星系に帰還した。 士官候補生クリフォード・C・コリングウッドは作戦の提案、その後の敵拠點への潛入破壊作戦で功績を上げ、彼のあだ名、“崖っぷち(クリフエッジ)”はマスコミを賑わすことになる。 時の人となったクリフォードは少尉に任官後、僅か九ヶ月で中尉に昇進し、重巡航艦サフォーク5の戦術士官となった。 彼の乗り込む重巡航艦は哨戒艦隊の旗艦として、ゾンファ共和國との緩衝地帯ターマガント宙域に飛び立つ。 しかし、サフォーク5には敵の謀略の手が伸びていた…… そして、クリフォードは戦闘指揮所に孤立し、再び崖っぷちに立たされることになる。 ――― 登場人物: アルビオン王國 ・クリフォード・C・コリングウッド:重巡サフォーク5戦術士官、中尉、20歳 ・サロメ・モーガン:同艦長、大佐、38歳 ・グリフィス・アリンガム:同副長、少佐、32歳 ・スーザン・キンケイド:同情報士、少佐、29歳 ・ケリー・クロスビー:同掌砲手、一等兵曹、31歳 ・デボラ・キャンベル:同操舵員、二等兵曹、26歳 ・デーヴィッド・サドラー:同機関科兵曹、三等兵曹、29歳 ・ジャクリーン・ウォルターズ:同通信科兵曹、三等兵曹、26歳 ・マチルダ・ティレット:同航法科兵曹、三等兵曹、25歳 ・ジャック・レイヴァース:同索敵員、上等兵、21歳 ・イレーネ・ニコルソン:アルビオン軍軽巡ファルマス艦長、中佐、34歳 ・サミュエル・ラングフォード:同情報士官、少尉、22歳 ・エマニュエル・コパーウィート:キャメロット第一艦隊司令官、大將、53歳 ・ヴィヴィアン・ノースブルック:伯爵家令嬢、17歳 ・ウーサー・ノースブルック:連邦下院議員、伯爵家の當主、47歳 ゾンファ共和國 ・フェイ・ツーロン:偵察戦隊司令・重巡ビアン艦長、大佐、42歳 ・リー・シアンヤン:軽巡ティアンオ艦長、中佐、38歳 ・ホアン・ウェンデン:軽巡ヤンズ艦長、中佐、37歳 ・マオ・インチウ:軽巡バイホ艦長、中佐、35歳 ・フー・シャオガン:ジュンツェン方面軍司令長官、上將、55歳 ・チェン・トンシュン:軍事委員、50歳
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