《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》296.まんまとパウリナを奪還される
296.まんまとパウリナを奪還される
「コレットに騎乗するのも久しぶりな気がするなぁ」
「時々忘れられているようじゃが、旦那様は儂の唯一の乗り手であり、竜騎士なのじゃ! そこんところよろしく‼」
「アピールを忘れぬのは大事よなぁ」
俺たち賢者パーティーたちは、レメゲトンがいるノヴァリス基地へ空と陸からの両面から奇襲をかけていた。
空中は俺とコレット、そしてエリスやデュースの分擔だ。
「ふむ、ではパウリナがいないだろう箇所をまずは破壊するとしよう。やれ、コレット。スキル≪決戦≫付與」
「了解なのじゃ、我が竜騎士様! 行くぞ! 焔よ立て(ラス・ヒューリ)‼」
黃金竜から放たれる一撃は、圧倒的な火力によって基地の壁のこそぎこの世から消滅させる。
「にょわはははは! 地上から進行する仲間たちを阻むものはこれでなくなるのじゃ!」
「エリス様。エンデンス大陸の戦士というのは全員がこんなハチャメチャなのですか? 魔大陸の方が強いとずっと言われてきていたはずですが……」
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「デュース、この者たちは例外中の例外です。とりあえずデータ上は外れ値にしておきなさい。我々がバグります」
「な、なるほど」
そんな會話を隣を飛行する二人のオートマトンがしているが、俺は逆に警戒するよう聲をかけた。
「いや、よく見て見ろ。あの基地。どこか変だ」
「「「え?」」」
俺の言葉に三人が基地へ注意を向けた瞬間、それは起こった。
「急下降だ、コレット」
「ぬお‼ 了解なのじゃー‼」
その瞬間、基地へ甚大な被害を與えたコレットに向かって、基地から有機的な帯狀のが攻撃を仕掛けて來た。音速を超えるそれをコレットはかわす。
だが、
「一撃ではなさそうだな」
「100は來ていますね。迎撃します」
「さきほど躱したものも、反転して向かってきているぞ!」
「全部なぎはらうのじゃ! しかし、これは一なんなのじゃ⁉ どうしてただの基地が、こんな見たこともない迎撃システムを搭載しておるのじゃ⁉ 旦那は知っておるのじゃ⁉」
コレットの言葉に、俺は肩をすくめる。
「さあな。まぁ、思い當たる節くらいはあるが」
「ほう、それは何ですか、我がパートナー、アリアケ皇帝?」
彼はオートマタにも関わらず、初めてを浮かべたような意味深な瞳をしている。
俺はだが、特に構うことなく続けた。
「あの基地からの攻撃のは、お前たちオートマタ種族の構素材と同質のものだ」
その言葉に、エリスは相変わらずだが、表かなデュースまでもが表をスッと消したのである。"
【Sideパウリナ】
「くう! が苦しい! どうやら私はここまでのようね。願わくば、収穫したてのお芋でじゃがバターを作りたかった……。それで、アリアケ様に食べてもらって、その後は、ぐへへ」
突然基地が揺れた。その瞬間、の火傷のあとが赤くり出したのだ。痛くはないものの、何かが自分のを駆け巡っているような違和で、呼吸がれる。
「パウリナ! ここから出よ! 敵からの奇襲だ! お前を飛空艇へ連れて行く‼ 」
「レメゲトン! い、今の獨り言聞いてましたか⁉ 聞かれてたら、し、死ぬしか……」
「ええい、貴様のくだらん妄想などどうでも良いわ! それに、抵抗しても無駄だ! お前にはまだ役に立ってもらうことがあるのだからな‼ いいから來い‼」
「ひいいいいいいい! いんですか、いいんですか⁉ 高い所に連れて行ったら高所恐怖癥だから、心臓が止まる恐れがありますよ⁉ ふ、ふへへへへ」
「ふざけただ、いいから來い! もはや時間がはない‼ 本當はを聞き出してから計畫を実行する手はずだったが、急がねばならぬ、あの僭帝アリアケが迫ってきているからな‼」
「す、すごい、まるでお姫様みたい! これは私の人生で一番輝いている瞬間かも! へ、へへ」
「ああ、もう。話してるだけ時間の……」
無駄と言いたかったのだろうレメゲトンが、私の腕を力づくで引っ張ろうとしたその時だ。
されている部屋の壁から、帯狀のが突如生えると、レメゲトンを突き刺すようにびたのである。
「ぐげ⁉ く、くそ! この馬鹿システムが。俺とこいつは同等だと言うのに、あくまで攻撃されたら自防するだけのシステムになっているのか! 出來損ないの防衛システムめがぁ‼」
「?????????」
レメゲトンは憎々し気に悪態をつく。
その帯狀の攻撃は一瞬の隙を作るのに十分だった。
自分にこれほどの行力があったとは信じられない。
いや、逆か!
「私って今、めちゃくちゃテンパってるだけですなー!」
「なにぃ⁉」
レメゲトンが焦りから目を見開いているのがちらりと見えたが、すぐに視界から聞けた。
「アーイ、キャーン、フラーイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
5階建ての基地の窓から私は思いっきり飛び降りたからである。
狀態なので、窓くらいあるのだ!
「なぜ飛んでしまった、私ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい‼」
答えはもちろん、勢いに任せて飛んでしまっただけだ。
しかし、
『ブワリ‼』
ひと際大きな帯が、基地の壁から突き出されたかと思うと、私のを空中で包帯のごとく、ぐるぐる巻きにしたのである。
そして、地上ではなく、基地の天井へと放り投げたのだった。
「えっと、でも、もっとやり方があるような……」
もっとそっと置いてくれてもいいのでは?
今、完全に放り投げられたんですけど。
「いや、いいんですけどね。私みたいなクラゲは、ペッてされるくらいがちょうど、ね」
屋上で、フフフと昏い笑顔を浮かべていたが、その場所のおかげで周囲の狀況をよく見渡すことが出來た。
空中にはドラゴン!
「はわわわわ⁉」
腰を抜かした。
そして、そのドラゴンにまたがっているのは、將來婚活しようと思っている相手であるアリアケ様!
「ほええええ⁉ ど、どうしてそんなところにいるのですか。なるほど夢か」
現実逃避を完了してから、地上を見下ろす。
そこには、見知らぬ方々も大勢いるものの、ラッカライさんやブリギッテさんたちもいた。
「でも、私を助けに來てくれる訳はないから、どういうことだろう……」
まず一番ない可能を排除してから思考を開始する。
『カッ!!!!!!!』
のは更に強さを増す。まるでこの基地の躍に呼応しているかのようだ。
そして、その強い赤いは、アリアケ様たちにも屆いたらしい。
「パウリナ、そこにいたか。自分で逃げ出して屋上で待っているとはさすがだな。俺たちを信じて待っていてくれたというわけか」
スキルの一つだろうか?
彼の聲は私に屆いた。
「は、はい。え、ええ。そんなところです。へ、へへへ」
噓も方便です。
「逃がさんぞ、パウリナ!」
ダン‼
大きな音を立てて扉が開かれる。
レメゲトンは大勢の部下を連れて追ってきたのだ。
「イシス・イミセリ(神の)ノス・アーク(方舟)の鍵(アクセス・キー)であるお前を逃すわけにはいかん‼」
「⁉」
私は息をのむ。
レメゲトンの言葉に。
なぜなら。
「す、すみません。なんて言ったか、もう一度お願いできますか? すごく大事なワードを言ってくれたのに、難しすぎて聞きらしちゃって、へへへ……」
「うるさい! お前といると調子が狂う! それでも神より役割を與えられた一族の末裔か!」
「神? 末裔?」
私は首をかしげる。
「そんなことすらもお前たちは忘れたか! もういい! 俺は千年間、その役割のために備えて來た! お前は俺の言うことを聞いていればっ……」
と、そうレメゲトンがんでいた時である。
「巧妙な時間稼ぎだったな、パウリナ」
私の頭をわしづかみにするドラゴンの足が頭上にはあった。
と、同時に、私のアリアケ様の聲が優し気に頭上から振ってくる。
「首がもげます~! 人質救出は丁寧にするのが習わしですよ~⁉」
「そうだな。≪防力アップ≫。よし」
「よし、じゃありませんよ! お慈悲を! お慈悲を!」
「くそ! しまった! まんまと時間を稼がれてしまったか! 許さんぞ、アリアケ・ミハマ! そしてパウリナぁああああああああ‼」
屋上のレメゲトンが悔しに咽びながら絶していた。
帯狀の攻撃は既に停止していた。
の赤いも停止する。
「イシス・イミセリ(神の)ノス・アーク(方舟)か。なるほどな」
そんな混のさなかだというのに、アリアケ様は落ち付いた様子で、何かを呟いているのだった。
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