《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》300.空中戦の意外な結末
300.空中戦の意外な結末
【Sideレメゲトン】
「フハハハハハ! しょせんは僭稱皇帝アリアケよ! 全く大したことないではないかぁ‼」
飛空艇のブリッジで俺は奴を嗤い哄笑を上げていた。
「見ろ! 奴らは空中戦に不慣れだ! 四魔將ヨルムンガンドに手も足も出ないからと、目つぶしで落下させようとしている‼」
ブリッジにいた部下たちもつられて嗤う。
そんなことで空中から落下する四魔將ではないし、率いるドラゴンたちも同様だ。
「見ろ、加速しだしたぞ。はははは、雲の中に突っ込んだ。躱す余裕もないのだろう。よし掃討戦だ! 追いかけながら空中戦を継続せよ!」
「はは!」
戦いの趨勢はもはや明らかである。
「進退窮まり気が転したようだな、アリアケよ。四魔將の一人ギガテスを倒したからと言って恐れるに足らぬ存在だったか。ふっ、くだらぬ」
「しょせんは、魔大帝レメゲトン様の足元にも及ばない存在でしたね」
「ふふふ、今思えば無論のことだな。しょせん、エンデンス大陸の雑魚どもの集団だ」
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俺はを歪めて酷薄に嗤いながら言う。
「だが、あんな僭稱皇帝に騙されて寢返った國々には相當の罰を科さねばならんな。くくく、今から楽しみだ」
俺は勝利を確信し、鬨の聲さえも上げそうになる。
「くくく、ははは、わーっはっはっはっは! ぐげええええええええええええええ⁉」
俺が大笑した瞬間、飛空艇が大きく揺れ、ブリッジが上下に激しくバウンドしたのである。
俺は天井に頭を打ち付け、その後固い床にも打ち付けられた。
「ぐえええ。な、何があった! 報告せよ‼」
「ま、魔大帝レ、レメゲトン様、鼻で顔の下半分が真っ赤でし見栄えが悪くなっております……。威厳を保つためにも先にこちらでお顔を拭いてくだされ」
「くそおおおおおお‼ いいから報告しろと言っているのだ‼」
俺はけ取ったハンカチで顔面を暴に拭きながら狀況報告を求める。
一何が起こったというのだ⁉
だが、部下から発せられた言葉は俺の耳を疑わせる容であった。
「飛空艇のヒュースレージ(主部)に大! 損耗率50%! 機維持できません!」
「なんだとぉ⁉ どういうことだ‼ 敵共は全員四魔將とその部下たちと戦闘中ではないか! こちらがやられる道理がどこにあるのだ⁉ 一誰がこちらの防衛線を突破して、しかもこの巨大な飛空艇に大を空けることが出來る‼」
俺が狼狽して絶するが、部下からは事実のみが告げられ、更にの気が引いた。
「相手の飛空艇の當たりです」
「た、當たりぃ⁉」
俺はブリッジから全方位を確認する。
空には積雲をはじめ分厚い雲が何百と存在した。俺たちはその雲に隠れて相手に奇襲を仕掛けることに功したのだ。
だが、いつの間にかその立ち位置は逆転していた。
相手の飛空艇の進行にあわせ、有利であるこちらは追跡をしているつもりであった。
しかし、そうではなかった。
相手の船はこちらの半分以下で小回りが利く。その上、どうやらアリアケによるスキルで浮遊させているため、更に空中での自由度が高いのだ。
ゆえに、雲に隠れた瞬間に我が艦の死角へと回り込み、突撃を敢行したのである!
「追いかけていたつもりが、陥穽に落とされたというのか、この俺様がぁ⁉ 空中戦そのものが目くらまし! いや、目をくらませる相手は四魔將でもドラゴンでもなく、この俺だったということか!」
俺はブリッジの指揮臺をが出る程ギリギリと握りしめ、歯噛みしたのであった。
同時に、相手の行った『目つぶし』作戦の規模の大きさが、俺の想定をはるかに超えていたことも、俺に地団太を踏ませる原因の一つである。
「絶対に許さんぞ、アリアケ・ミハマァアアアアアア」
「レ、レメゲトン様、お逃げ下さい! 時間がありません!」
「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
発して轟音を発しながら落下する飛空艇とともに、俺の絶もまた艦へ轟いたのである。
【Sideアリアケ】
「よし、うまくいったな」
「相変わらず無茶苦茶ですねえ、アー君は」
「さすが先生です。思いもつかない艦隊運用だと言わざるを得ませんね‼」
「こんなことが出來る人は今後いないから史上初であり、史上最後ですね」
「儂はこんな作戦ならいつでも大歓迎なのじゃ! 毆ってスッキリなのじゃ!」
俺たちが貫通させたレメゲトンの船は、こちらの何倍もあった。裝甲も相當の分厚さで普通の方法では墮とすことはなかなか難しいのは明らかであった。
「だからこそ、俺のスキルで、お前たちの攻撃力を何倍にも増幅させた上で、ラッカライのブリューナクをちょっとだけ強い力で押してもらったというだけさ」
「だけって……。いえいえ、誰もそんな発想できませんからー!」
「そうですねえ。アリアケさんの無茶っぷりを客観視することをお姉さんはおすすめしますよ」
呆れたような聲で二人が言う。
「ブリューナクの悲鳴が聞こえた気がしましたよ~」
「無理ないのじゃ! ゲシュペント・ドラゴンとブリギッテとアリシアによる≪三歩破軍≫なんて、星破壊レベルだからの! じゃが、超気持ちよかったのじゃ、かかか!」
「≪三歩破軍≫スキルは三歩のうちに敵を屠るほどの攻撃力を與えるスキルだが、今回は敵の裝甲を貫く推進力を獲得するための発力として利用しただけだぞ?」
「そんな発想誰もしませんってば!」
「本當ですよ、さすが先生です。あ、そう言えば、ちなみにコレットお姉様、四魔將ヨルムンガンドはどうなったんですか?」
「ん? おお、あれか、あれか」
コレットは朗らかに笑って言った。
「半殺しにして飽きたから、魔王リスキスに譲ってやったわい。退屈そうだったからな、にょわはははは!」
「コレットちゃんも大概規格外ですよねえ」
「お姉さんとしては半殺しは可くないと思います。ここは一つ『めってした』と言っておくと、可さがアップしてアリアケさんへのアピールにもなるかと思うのですがどうですか?」
「えーっと、誤魔化せるレベルを超えた破壊力だと思いますが……」
彼らのそんな會話をしている間にも、レメゲトンごと敵飛空艇は落下していく。
指揮であるレメゲトンを失った四魔將もほどなくリスキスに討伐されるだろう。
だが、下方を見ると山脈の頂きに、複雑な形をした跡のようなものが見える。
レメゲトンたちの船はなんとかそこに不時著しようとしているようだ。
「悪運だけは強いようだな」
あれが目的地らしい。
「後片付けを終えたら後を早急に追うとしよう。どうやらあれが今回の事件の舞臺。いや」
俺は微笑みながら言った。
「この星の舞臺裏なのだろう」
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