《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第109話 変な船③
「これがそのカラクリって訳だな?」
アマリア港から消えたラポルト、七道の聲がする。それに子が答える。
「うん。そうだよ。さっき言った『重力遮斷材』を艦の表面全てにった効果。この艦がどんな無茶苦茶な機をしても、中の人には重力加速度、Gが伝わらないんだ」
子はこれでもか、と言わんばかりのドヤ顔をする。
「‥‥待て待て。無茶苦茶なのは機じゃなくて理屈だ。慣の法則はドコいった?」
「それは軍で絶賛研究中だよ。とにかく遮斷材を完璧に張れば、その中はあらゆる重力や加速度から解放される仕組みだ。元々は隔壁縦席(ヒステリコス)の加速度軽減システムで、縦席の理法則の差異を発見したのが始まりらしい。あれもまあまあ、重力子回路の板に囲まれた裝置だからね。一応潛水艦は『三次元機』なんて名稱で呼ばれるけど、この潛空艦は重力までれて『四次元機』って呼ぼうかって話が開発で出ていたよ」
「‥‥‥‥。四次元。確かにデタラメなき」
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「あ~ね。艦艇ってかUFOのきだコレ。戦う羽目になった敵はだるいね~~。あ? もしかして? 今あ~しらがじてる地球からの重力は?」
「當然カットされている。今じてる重力は宇宙船仕様。あらためてラポルトで作り出した人口のものさ」
その言葉に、七道が呆れた聲を出す。
「い、イカれてやがる。外面裝甲だけじゃなく各フロアにも使ってんじゃねえか。高額軍事機素材を」
「うん。それもこれもごっつい重力子エンジン積んでる軍用艦艇だからこそ。そしてその裝甲版1枚で小型DMTが1機調達できる。紘國防衛費の3年分の予算が使われてるからね。このプロジェクトに」
「‥‥‥‥。あ、待って! 逢初さんおしりに青あざ、できてた」
突然、多賀がわりと大きな聲で會話にってきた。彼にしては珍しい。
「なんだ柚月。それ今言う事か?」
「‥‥‥‥。ごめんなさい師匠」
「あ~~。ゆず。あ~しも見たわソレ。逢初さんと風呂でかち合うコト多いしね、あ~しらメンテ班は」
「‥‥‥‥。ありがとちーちゃん。逢初さんがおしりに青あざできたのは、ラポルトが急機して転んだから。‥‥‥‥。ほら、大型BOTと戦って」
「ああ、そうだったわね。憶えてるわ。対大型BOT戦で急機の舵取ったの私だもの。味方機の危機に駆けつける巨大戦艦。‥‥あれは熱かったわ」
會話がどんどん逸れて行く事に、慌てて渚が修正を試みる。
「泉さんまで。‥‥みんな戦闘中に余裕ありすぎでしょ。そうよ。あの時もGをゼロにして、逢初さんのおしりに青あざを作る事無く機する事はできたのよ。でもあの時點で艦の能力を曬す事はしなかった。できなかった」
「うん。渚學生の言う通り。逢初さんのおしりには悪いけど、あの時點では『普通の戦艦』でいたかったんだよ。じゃ、話を戻そっか?」
***
陣地に著いたDMTのとある隔壁縦席(ヒステリコス)。
「‥‥なに? やだもう。向こうには音聲屆かないのね」
「しょうがないよ。依」
「‥‥‥‥やだ。こっち見ないで。おしりはもう治ったもん」
「え? ああ。うん」
***
ラポルトは、消えたのではなく、浮上していた。上空10,000mに。マッハ1で。
そこで砲を冷やしながら、次の標的の上空まで移する。それも旅客機並みの速さで。
「なので約30秒だ。降下開始から地上に著くまで。カタフニアと同じ技だよ? まあカタフニアはマッハ3だけどね」
「『消える』瞬間以外、さすがにそこまでは加速しないわ。空力と裝甲の熱もあるし、人が乗ってるから。その重力制のコントロールは私がやってるの」
「プラス、『フル・コンシール』。完全隠蔽だ。船表面の學迷彩のみならず、熱源や金屬反応の洩をあらゆる手段で誤魔化すんだ。私の解析でリアタイでラグを補正していく。艦のホストPCフル稼働だよ」
子の説明に補足をれた渚、紅葉ヶ丘に、靜かに聞いていた泉が微笑んだ。
「まあ。それで『付屬中3人娘が揃わないと不可能』、なのね」
泉が言い終わるのを待って、子が両手を広げた。
「ああそうだ泉さん。それはステルスDMTの技。それを進めて、ほぼ完全に熱も金屬も探知できないようにしてある。ラポルトの骨格(スケルトス)には、通常なら金屬の所もP(プレシャス)-PEEK(ピーク)素材という強化樹脂に置き換えてあるから、さらに探知されにくい。それが『完全隠蔽(フル・コンシール)』。敵からしたら、突然目の前にラポルトが現われたように思うだろうね」
そしてさらに、一歩前へ出た。
「『潛空艦ラポルト』!! 人類史上初!! 空という広大な空間を我が棲み処とする危険な禽獣だ。真なるオンリーワン! 競合する艦がこの星に存在しないから、ご覧の通り。今現在我々はやりたい放題だよ!」
「ふふふっ。禽獣って。丸くて、どちらかというと金魚だわ」
「ああ、潛空艦だからね。どうしても丸いフォルムになる。でもそんな評価も甘んじてけるよ。絶対的唯一王者の余裕さ」
「‥‥‥‥。もしかして、暖斗くんがBot退治、『掃空作業』をがんばってたのは?」
「すべてこの日の為の下準備。この艦の弱點は裝甲を実損する事なんだ。現場では直せないし費用も高額。しかも潛空能力が決定的に落ちる。小Botでもふわふわ浮いてる非掃空空域で今みたいな音速機をしたら、大事故になるからね」
ここで子が、力強く拳を突き出した。
「もう1回言わせて! 素人中學生16人! 『ふれあい験乗艦』! よもや思うまい。それが紘國海軍最新最強の裝備だと!
敵の常識を非常識で毆るんだ!
敵の想定を想定外で毆るんだ!
敵は知らない。私達を。ラポルトを。その全戦闘力を!
『子中學生が恐るおそるる戦艦』その認識、そこにつける!」
超ドヤ顔の子のインカムの向こうで、七道がたまりかねたように言った。
「‥‥子ドヤりやがって。‥‥最初から。もう最初(はな)っから仕組まれてたんだな。‥‥まあいいよ、どの時點からが『最初』なのかは、この戦闘が終わってからゆっくりと聞かせて貰おうか」
潛空艦ラポルトは、次なる標的の直上に來ていた。そして次の瞬間降下を開始していた。――音速で。
こうして、ガンジス島に侵攻した軍の後段組織は壊滅、無力化される事になる。
***
これらの會話は病院南部の広大な荒野、そこに陣地を設営した暖斗達にも伝わっていた。
だが、通話アプリ、アノ・テリアは接続の限界で、暖斗達からの聲は、ラポルト側には屆いてはいなかった。
この會話の終了と時を同じくして、暖斗達は窮地に陥る。
集結した各國のDMT部隊が、一斉に病院へ向けて進軍しだしたのである。
外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。
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