《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》第十六話 思わぬ縁

「ははは! 流石だったな、ジーク!」

予選を終えた俺が客席に戻ると、ロウガさんがご機嫌な顔で笑いかけてきた。

既に酒でも飲んでいたのだろうか?

その頬はほんのりと赤く、いつもよりテンションが高い。

まだ予選なのだから、祝杯を上げるにはちょっと気が早いのではなかろうか。

「ロウガ、もう三杯も飲んでるのよ」

「売り子さんが可いからって、どんどん買っちゃって」

「なるほど、それで」

「いいじゃねえかよ。ジークも気持ちよく勝ったんだしよ」

結局、予選第一ブロックは俺の勝ち抜けだった。

ザリトラ兄弟を吹き飛ばした直後、他の選手たちが軒並み棄権してしまったのである。

あの兄弟、見た目はいろいろと派手だったけど実力は別に大したことなかったのになぁ……。

あいつらを倒したぐらいで、戦意喪失することなんて別にないだろうに。

ちょっと不思議だが、まあ損をするわけではないので良しとしておこう。

「さあ、続いては第五ブロックです!」

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「おっと、次が始まるみたいだよ!」

俺はすぐさま椅子に腰を下ろすと、舞臺の方に注目した。

誰が本選まで殘るか、今のうちからしっかり見ておかなければ。

そうしていると、司會者がとある選手の紹介を始める。

「この第五ブロックには、何と前回準優勝のアルザロフ選手が參加しています!」

「へえ、準優勝……。なかなか強そうだね」

「ジーク、ライザから何か聞いてませんか?」

「いえ、アルザロフと言う人については何も」

ニノさんからの問いかけに、俺はフルフルと首を橫に振った。

前回の有力參加者については、姉さんからいろいろと注意をけていた。

だが、アルザロフと言う人については特に何も聞かされていなかったのだ。

準優勝なら、相當な実力者のはずなんだけど……。

「男にしては細だね。速度が売りかな?」

「そんなじだな。だが、けっこう筋はあるみたいだぞ」

二十代後半に見えるアルザロフ。

そのは細く引き締まり、よく鍛えられているのが見て取れた。

顔は彫りが深く整っていて、野的な魅力に満ちている。

いったい、どんな戦い方をするのだろう?

アルザロフの姿を見ながらああだこうだと思案していると、不意に彼は司會者の前へと出た。

そしていきなり、司會者の手にしていた魔道をひったくる。

「ああ、ちょっと!? 困りますよ!」

「えー、皆さん! 私は今度こそ、この大剣神祭に優勝することを誓おう! そして、それをし遂げた暁にはライザ殿と結婚する!!」

…………はい?

あまりに予想外の宣言に、俺は思考停止してしまいそうになった。

ふざけて言っているのかと思ったが、アルザロフの顔は至って真剣そのもの。

あのまっすぐな眼は、間違いなく本気だ。

おいおい、どういう経緯かは知らないがあの姉さんに惚れたのか!?

そりゃ、見た目は整っているけれど中は……。

ああ、もうそれで姉さんはアルザロフのことを言わなかったのかよ!

「え、ええ……ええ……」

「だ、大丈夫かジーク?」

「なんとか……」

頭を毆りつけられたような衝撃にクラクラとしながらも、俺はどうにか返事をした。

ただでさえゴダートや第一王子のことで頭がいっぱいだというのに。

ここへ來てこんな人が現れるなんて、想定外もいいところである。

姉さんと結婚ということは、俺の義兄になるということか?

う、うーーん……さすがにそれは……。

アルザロフに恨みがあるわけではないが、いきなり義兄が出來ても困る。

「ま、優勝させなきゃいいんだよ。いざとなれば、ライザもいるんだしさ」

「そうですけど……」

ああいうタイプって、意外と強かったりするんだよなぁ。

仮にも前大會準優勝だし、ひょっとしてひょっとするんじゃ……。

俺が変な想像をしていると、アルザロフは凄まじい勢いで他の選手たちを倒していく。

「これはすごい! 流石は前回の準優勝者であります! 圧倒的、圧倒的だぁ!!」

あっという間に、アルザロフ以外の選手がいなくなってしまった。

いろいろとおかしな點はあるが、実力は間違いなく本だ。

きにまったく無駄がなく、俺でも眼でとらえるのがやっとであった。

クルタさんたちは良く見えなかったのか、パチパチと瞬きをして目をる。

「あれ、もう終わった?」

「……こりゃ、案外あいつがジークの兄貴になっちまうかもな」

「変なこと言わないでくださいよ!」

からかうロウガさんに、俺はちょっとばかり本気で反論してしまった。

そうしているうちに、予選第五ブロックが終わって第六ブロックが始まる。

「さあ、予選も殘すところあと二ブロック! 第六ブロックの選手場です!!」

大歓聲を浴びながら、場する選手たち。

第五ブロックが早々に決著したこともあってか、観客たちの熱気は高まっていた。

するとここで、場してきた選手たちの最後尾にゴダートの姿を発見する。

「いよいよあいつの出番か……」

「どんな戦いをするか、見ものですね」

「ええ。ちょっと張してきたな」

自分が戦うわけでもないのに、張してしまう俺。

戦爭屋と呼ばれる男は、果たしてどのような戦いぶりを見せるのか。

俺たちは固唾を呑んで試合の始まりを待つのだった。

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