《【書籍化】白の平民魔法使い【第十部前編更新開始】》取材対象 -ネロエラ・タンズーク-

――彼の第一印象は?

「任務の邪魔者。カエシウスに纏わりつく怪しいやつ。私達の障害」

――あまりいい印象は無かったようですね。

「そうだな。むしろ悪いくらいだった。フロリアにも同じことを質問してるなら聞いてるかもしれないが……當時私達は騙されて補佐貴族同士で疑い合ってた。消去法で犯人はベネッタ・ニードロスと決めつけてスノラに近付かせないように排除しようとしていたんだが……友人である彼は本當に邪魔だった。なにせ平民だから報がほとんどない。それでも補佐貴族としてカエシウス家からの命令は遂行するしかない立場だったから邪魔者にしか見えなかった」

――知り合ったのはいつでしょう?

「その後だな……任務とはいえ襲ってきた私達を普通に許してくれた。誤解だったのが申し訳なかったが……」

――では友人と呼べるようになったのは?

「それもその後だな。馬車の中で……その……私のコンプレックスを一気にひっくり返すような……今思えば単純だったが……それでも彼の言葉に救われて、そこから友好な関係を築くようになったと思う……」

――顔が赤いですね。

「し、仕方ないだろう! 恥ずかしいが初だったんだ……だが、それ以上に今の私がある恩人でもある……。あの時の出來事が無ければ私はこうしてグレースと喋ることすらなかったかも、しれない」

――そんなに赤々に言ってしまって大丈夫なのですか?

この本が出版されたらインタビューを載せる予定ですが。

「今更だから別に載せても構わないが……グレースはここら辺は上手く切り取るだろうからとりあえず話してるだけだ。グレースは、人の失を堂々と曬すような格じゃないのはわかってる」

「よくわかってるわね」

「そりゃ、友達だから……そこら辺は信頼している」

――こほん。それでは次の質問ですが……。

「グレースもし赤くなってるじゃないか」

「黙りなさい。口をい付けるわよ」

「ふふ、ここも切り取らなきゃいけないな?」

「く……學生時代はもっとでちんまりしてたのに……」

――彼が解決した事件に度々関わっていますが、一番印象に殘ったのは?

「関わったと言っても私は雑用のようなものだったから……そうだな、強いて言えばやはり四年前の大蛇(おろち)総力戦かもしれない。私は彼をベラルタまで運んだだけだが、とても複雑だったのを覚えている。

これでよかったのか。本當に連れてきてよかったのか迷っていた。卒業してからもずっと、私の選択は正しかったのかふと考える時がある」

――真面目ですね。

「そんな事は無い。私は彼と違って弱かっただけ。まだまだ追い付くには足りないよ」

――それでは……。

「……? グレース?」

――彼と再會できたら何と聲を掛けますか?

「どーだ。私も頼もしくなったでしょ? ってを張って言おうかな?

それともう一つ。あの時、私の牙を褒めてくれてありがとうって改めてお禮を言うんだ。自分がこうして変われた大切なきっかけだったから……本當にありがとう、って伝えたい。結局、お禮を言えたことがないんだ」

――お答え頂きありがとうございました。

ではこれで以上となります。本日はありがとうございました。

「どういたしまして。何か空気に釣られて恥ずかしいぐらいさらけ出しちゃった気がするや……あ、さっきは強がったけど初ってとこはカットしてもらっていい? 流石に恥ずかしいから。

……グレース? なんで無言なの……? グレース? 何でそんなに急いで荷まとめてるの……? グレース……? グレース!? グレースってば!!」

いつも読んでくださってありがとうございます。

小休憩をかねたちょっと未來の閑話となります。

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