《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第111話 桃山理論

「うっすら思ってたのよ。暖斗くんが回転槍(サリッサ)かしたりコーヌステレスコープ使ってるの見て」

桃山さんはこう切り出した。モニター越しにみんなを見まわしながら。

「回転槍(サリッサ)には重力子エンジンってるんだよね? 刃部に。そのエンジンがどうしてくかというと、DMTの手首辺りに無接點の供電ポイントがあるから、よね?」

全員頷く。

「え? そ、そうなの?」

浜さん以外は。

「いちこ武ほとんど持たないから、馴染みがないでしょ? DMTの手首にエネルギー送る磁アタッチメントがあるのよ。槍とか銃とかに。で、その武達はDMT本機と厳重にリンクしている」

「し、知らなかったし」

「‥‥當たり前すぎて誰も説明しなかっただけよ。でなきゃ回転槍(サリッサ)や刺突剣(エストック)がく訳ないでしょ? パスベクトルで認証してたのよ」

僕は頷く。後ろの依も相槌を打った。『パスベクトル』とは、『パスワード』の上位互換。文字じゃなくて空間座標の組み合わせを暗號化してる。これなら量子コンピュータでも開けられないしね。

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「そりゃそうだ。敵に武奪われて使われたらマズイから。敵も味方もお互いにね」

「そうよね。各武は本機か、味方同士くらいしか共有できない仕組み」

「で、それがどうしたの」

「あまり時間が無いっス」

「思ったのよ。暖斗君のDMT。エンジンが3機になった時に。ふと思ったの」

「「ふむふむ」」

「私達、中型4機のDMTを、『暖斗くんの武として』認証できないかな?」

「え? DMTを武に?」

みんな一斉に驚いた。

「そう。正確には『DMTの各エンジン』を。回転槍(サリッサ)のエンジンみたいに認証して、4機のエンジンを、『暖斗機のエンジン』にするの。そうしたら、暖斗くんのマジカルカレント能力がその4機にも適用される。それを一気にカタフニアに送るの。ほら、対ゼノス戦。暖斗くんは自分の手用兵裝(インスツルメント)である回転槍(サリッサ)の刃部の重力子回路をって、ブーストさせてるでしょう?」

そうか。話が見えてきた。ゼノス機を宙へ放り上げたあの要領か。スゴイ発想だけど‥‥。浜さんが疑問を投げかける。

「ま、待った。それだとエネルギーの流れが逆向きだよ。『DMT本から武へ』ならわかるけど『各機から暖斗くん機』へは‥‥‥‥」

その疑問へは初島さんが応じた。

「全個電池(バタリエス)! 大丈夫だったじゃん? コレは充電も供電もできたから、雙方向でいけるよ。つまり」

桃山さんの聲が大きくなった。

「そう。つまり、4機のエンジンを暖斗機の手用兵裝(インスツルメント)に書き換え。手首の磁アタッチメントで互いのDMTを接続。そこでマジカルカレント発して、大型1機と中型計7機分の重力子エンジンの、増幅された極大出力をカタフニアへ――」

「‥‥可能だわ。すごい出力値になると思うよ」

依が、この説に太鼓判を押す。

「そもそもマジカルカレントは脳波。放送局と一緒よ。発信施設はひとつでも、信する施設はいくつあってもいい。――わたし、醫師権限でエンジン増設からのマジカルカレントの推定発信量と各エンジンの回転數データを貰ってたけれど、マジカルカレントの総量はさほど増えてないのよ。マジカルカレント発信して、作用範囲に目いっぱい重力子エンジンを置くのが一番エネルギー効率がいいわ」

「そうか。七道さんもそんな事を」

「そう。『1機の大型エンジンより小型3機の方が発生効率いい』って」

*****

「來た。砲撃」

敵の前哨部隊が、陣地に攻撃を仕掛けてきた。まだ遠いから威嚇だと思う。著弾遠いし。けど、油斷はできない。

僕らは、ひとりが自機エンジンの認証を僕のUO-001に書き換え、殘りが応する、を繰り返していく。正確には管制権と支配権の移譲だね。『パスベクトル』の三次元認証コードを使ってるから、書き換えるだけでもかなり手間がかかる。――しかも砲弾飛びう中だし。

「ああ、サポートが無いのがキツイね。岸尾さんがいれば書き換えやってくれたのに」

「ああ、アイツ結構勝手にやってたなあ」

「ラポルトいないのもね。3人娘に七道さんもいれば、さっきの説を判斷してくれたはずっス」

砲撃が撃ち込まれる中、僕らは必死に応戦していた。塹壕の形をしたこの「陣地」。

そこにを隠しながら、頭を出して応していく。

どのくらい時間が経ったろう? ‥‥‥‥長くじたけど、意外に20分くらいだったのかもしれない。敵の攻撃に耐えるだけって、そういうかもしれない。

実損した機もある。もうみんな既に全部出し盡くしてるんだ。その上で気力で撃ち返していた。

もう、「カタフニアで逃げよう」って意見は、みんな頭に無かった。

「へえ。この書き換え、アタシら2機もれてよ?」

コーラとソーラが戻ってきた。あの、東トゥマーレの超大型DMTを倒した後、戦場を任せたんだった。

あれから、數回接敵した後、敵は撤退したそうだ。そのまま2機は追撃する形でこの陣地を離れていたって。撤退を確認するために。

「こちらで砲音(つつおと)がしたから急いで戻って來たんです」

そのままコーラが最右翼、ソーラさんが最左翼にった。敵の砲撃は激しい。

量に任せて、この陣地を沈黙させるつもりです」

「ラポルトが覚醒して敵の後段組織襲ってるんだって? やんじゃん? でもまあ、ソレで敵はもう退くか進むかしか無くなったんだろ~な」

アマリアの戦士、武娘(たけいらつめ)見習い。とは言ってもこのふたりは僕らよりよっぽど場數を踏んでいる。3人娘がいない今、戦慣れしてるコーラとソーラさんは正直ありがたかった。

「丁寧に行きましょう。シールドバリアの積層(レイズ)をこまめに」

「応もね! 撃たないと撃たれるよ」

メンバーが増えた事で、単純に各機の負擔が減ったのも大きい。僕らは、反撃と書き換えを進めていった。

「‥‥接続先‥‥UO-001‥‥‥‥手用兵裝(インスツルメント)‥‥あ‥‥重力子エンジンもで‥‥え~と‥‥よし。『設定します』っと!」

「はい認証確認。アタシ終わったよ」

最後に、コーラの機の書き換えが終了して。

6機の中型DMTの、認証切り替えが終わった。

――あとは僕が、ブチかますだけだ。

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