《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第112話 イポテス①

陣地の中、各機が呼吸を合わせる。

桃山さんのアイデアをけて、「仕切り屋」ソーラさんが音頭を取る。

「確認します。全機で一斉フル撃。からの各機中央へ集合。暖斗さんを中心に接続確認。そして暖斗さんのマジカルカレント『暴風(プレステル)』。ここまでいいですか?」

桃山さんの提案を実行することに全員で決めた。今はそのお互いの挙の確認をしているところだ。

「うん。僕は撃ったらカタフニア呼んで、マジカルカレントの所作(ルーティン)にると」

「そうです!」

「アホ暖斗。アホみたいなでっかいマジカルカレント頼むぜ」

「アホ言うな!」

「ふふっ」

コーラと掛け合いに、背中の依が思わずふきだした。

「怖くない?」

「大丈夫よ。みんなの邪魔にならないように、わたしは靜かにしてるね」

そうなんだ。依があまり喋らないんで、なんでかな? 怖いのかな? って思ってたけど、戦闘に関係ない発言を控えてたのか。

「でも、わたしという『マジカルカレント治癒因子』が隔壁縦席(ヒステリコス)にいる狀態で、暖斗くんが発したらどうなるか? そこには興味があるよ。これも臨床試験ね」

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良かった。初めてDMTに乗って張してるかと思ったけど、案外大丈夫そうだね。

でも逆に僕の方が変な気持ちだ。まるでバイクに乗ったみたいな恰好で依が背中に張りついている。僕がマジカルカレント発してる時って、変顔とかになってないかな?

ああ、そうだ。こんな時に悠長な例えだけど、カラオケ熱唱してる時に視線をじて「はっ!?」って我にかえるアレだ。――――やばい。なんか僕の方が張してきた。

「じゃあ。行きますよ? ‥‥5、4、3、2、1‥‥ハイ!」

ソーラさんの掛け聲で、皆で一斉にく。陣地の塹壕から機を出してのフル撃。

この場面ではエネルギー殘量を気にしなくていい。全部攻撃に割り振ってビームを叩きこむ。

敵が軍勢なのも逆に好都合だ。大して狙わなくっても當たるからね。

でもさすがに見えただけでも大軍勢だった。各國の軍が、それぞれ隙間がないくらいに壁狀になって、ゆっくりこちらに進軍してきていた。

そこにビームを打ち込んでいく。敵もシールド満タンだろうから、それを削るのと威嚇が目的だ。

よし! 接近してくる敵の戦列がれた。急な大量砲火だ。「なんだ? どうした?」ってなるよね?

ゆっくり進軍されてたけど、まず敵の足を鈍らせることができた。初手は功。

『コーラ機(UO-003)、ソーラ機(UO-008)、暖斗機(UO-001)の管制(コントロール)にります』

縦席に機械音聲が流れる。さっき各機で設定した管制の変更を、順次実施していく。

ちなみに書きかえたからって、全機を僕が縦するワケではないよ。あくまでマジカルカレントの影響範囲を広げるため。パソコンのホストとサーバーっていうのが近いかな。僕の機がホストになって、各機の行を認証するんだ。

手用兵裝(インスツルメント)の認証の要領で、各機のエンジンを僕名義にしただけ、って言えばいいのかな? その上で増幅した各機の発生エネルギーをカタフニアに送る。

『來宮機(UO-005)、桃山機(UO-006)、暖斗機(UO-001)の管制(コントロール)にります』

僕らの機は隣同士、手をつないだ。手首の「磁アタッチメント」で有線接続するために。

――――まるで、子供の遊戯のように。仲良しのように。橫一線に並んで手をつないでいた。

「來い! カタフニア! これが最後だ!!」

空がにわかに曇る。全幅400メートルの移砲臺を呼び寄せた。

『初島機(UO-004)、浜機(UO-007)、暖斗機(UO-001)の管制(コントロール)にります』

僕はいつもの様に深く呼吸をして、脳に自機の4つのエンジン、両翼の6機のエンジンを想起する。

「撃つのね?」

に回された依の手がこわばり、微かに震える聲が聞こえてきた。だよな。さすがに張してるよな?

「うん。大丈夫だから。目をつむってて」

なるべく落ち著いた聲を作って、背中に語った。手袋越しににぎった手は、にゅるんとしていた。

『カタフニア、コーヌス・テレスコープに接続。主砲発準備。レーザー発振管に荷電します』

「ふうう」

息を吐いた。――これで所作(ルーティン)は完了だ。

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

あれ?

ゴゴゴウン ゴゴゴウン。

「どした? 早く発しなよ」

コーラにけしかけられた。え? あれ?

他の6機どころか、自分の機の重力子エンジンも吹き上がらない。――重くて低い特有のエンジン音のままだ。

ゴゴゴウン ゴゴゴウン。

電車が通りすぎるみたいに、僕の、そしてみんなの重力子エンジンは、あたり前の音しか出ていなかった。

「暖斗くん!?」

「‥‥‥‥マジカルカレントが‥‥発が‥‥‥‥できない?」

ドギン!! ガギッ!! ドゴドゴッ!!

土を固めて作った防壁に、変な音が響く。

「ソーラ! これって!」

「きゃあ!」

「きゃあぁ!」

次々と仲間の機が崩れ落ちていく。

「有質量弾です! 首や関節狙‥‥」

バギィィン!!!

ソーラさんが被弾すると同時に、僕の機にも衝撃が走った。

全滅だ。7機、すべて。

陣地の中で仰向けに擱座していた。メインモニターは當然上を向いている。

南國の島の空の、故郷よりし濃い青が、とてもきれいだった。

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