《【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-》第217話「魔王ルキエ、視察に出かける(1)」
「トールに頼みがあるのじゃが」
「わかりました。すぐに手配しますね」
「まだ、なにも言っておらぬのじゃが!?」
「俺がルキエさまのお願いを斷るわけないじゃないですか」
ルキエは俺の主君で、婚約者でもある。
彼の願いを俺が葉えるのは當然のことだ。
「まぁ、お主なら、そう言うと思っておったが。それで、頼みというのはじゃな……」
ルキエはなぜか頬を染めて、もじもじしながら──
「余は『ノーザの町』に行ってみたいのじゃ」
「『ノーザの町』に、ですか?」
「帝國との流が始まったからには、余は、もっと人間社會のことを知る必要がある。それには人間の町を訪れるのが一番だと思うのじゃ」
「……なるほど」
「無論、お忍びで行くつもりじゃ。魔王として訪ねたら大騒ぎになるからな。人間に化けて、こっそりと『ノーザの町』を見てまわりたいのじゃよ」
「人間に化けることは可能だと思います」
以前、メイベル用に作った『ヘアーピース』がある。
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メイベルはあれはエルフ耳を隠していた。
あのアイテムなら、ルキエの角を隠すことも簡単にできるだろう。
「──なるほど。『ヘアーピース』を使うのじゃな」
俺が説明をすると、ルキエはうなずいて、
「じゃが、角を隠しただけで、人間に見えるものじゃろうか?」
「大丈夫です。ルキエさまなら、人間のすごいに見えると思います」
「……な!?」
「あ、でも、人目は惹(ひ)くかもしれませんね。あのしいはどこから來たのかって、みんなが注目する可能はあります。となると、できるだけ地味な服を著ていった方がいいですね。ルキエさまのかわいさを隠すのは難しいかもしれませんけど、やらないよりはいいかと……って、あれ?」
「…………う、うぅ」
ふと見ると、ルキエがテーブルにつっぷして、ピクピクと震えていた。
どうしたんだろう。
「……お、お主は真顔でそういうことを言うのじゃから」
「思ってることを言っただけですけど」
「わかっておる。だからたちが悪いのじゃ、まったく」
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「とにかく、ルキエさまが人間に化けることはできると思います。問題は、の安全をどう確保するかですね。お忍びとなると、護衛を引き連れていくわけにはいきませんから」
「そのあたりは、ケルヴとライゼンガに相談するべきじゃろうな」
「それがいいですね」
「うむ。では、玉座の間で話をしてみるとしよう」
そんなわけで、魔王城では『魔王ルキエお忍び旅行』について話し合われることになったのだった。
──十數分後、玉座の間で (ルキエ視點)──
「魔王陛下が『ノーザの町』を訪問されるのは良いことだと考えます」
ルキエの話を聞いた宰相(さいしょう)ケルヴは、そんなことを言った。
「今後の魔王領は、帝國だけではなく、様々な人間の國とも付き合っていくことになります。そして外において、すべての決定を下すのは魔王陛下です。その陛下が人間の町を視察して、人間のことを知ることには大きなメリットがあります」
「意外じゃな」
素顔のまま玉座に座るルキエは、うなずいた。
「ケルヴのことじゃから反対するかと思っておったぞ」
「私も最近、頭がやわらかくなってきておりますので」
「うむ。(じゅうなん)な発想は大切じゃな」
「大抵のことはけれる覚悟です。ゆえに、魔王陛下が『ノーザの町』を訪問されることにも、基本的には賛です」
宰相ケルヴは一禮して、
「ただ、護衛をどうするかという問題があります」
「トールは、羽妖(ピクシー)たちを護衛につけることを提案しておる」
ルキエは、ライゼンガ將軍の方を見た。
「ライゼンガは知っておるじゃろう。『ノーザの町』に、貓とフクロウが多く棲息(せいそく)しておることを」
「無論(むろん)、存じております」
「だから羽妖(ピクシー)たちは『なりきりパジャマ』で貓とフクロウに化けて、『ノーザの町』に潛しておる。彼らに護衛をしてもらえば、安全に町を回れるのではなかろうか」
「確かに、安全は高まると思います」
ライゼンガ將軍は考え込むように、
「ですが、魔王陛下の安全確保のためには、もうし工夫が必要かと」
「ならば……これもトールの提案じゃが、ソフィアにいてもらうのはどうじゃろう」
ルキエはケルヴとライゼンガを見ながら、
「あの町にはソフィア直屬の『オマワリサン部隊』と『レディ・オマワリサン部隊』がおる。ソフィアから彼らに連絡してもらって、安全な場所を教えてもらうのじゃ。それなら落ち著いて、町を視察できるのではなかろうか」
「ソフィア殿下のお力を借りるわけですね」
「あの方の指示ならば、『オマワリサン部隊』も手を貸してくれるでしょうな」
ケルヴとライゼンガはうなずく。
けれど、すぐにケルヴは顔を上げて、
「ですが、もうし警戒を強めるべきかと思います」
──まっすぐにルキエを見ながら、答えた。
「羽妖(ピクシー)たちでは、戦力としては不足です。それに『オマワリサン部隊』は、あくまでもソフィア殿下の部下です。味方にはなってくれるでしょうが、魔王陛下の護衛として十分ではありません」
それからケルヴは、ライゼンガの方を見て、
「やはり私か將軍のどちらかが、護衛として『ノーザの町』にるべきだと思います。いかがでしょうか、ライゼンガ將軍」
「同だ。だがケルヴどの、我(われ)とお主がついていくとなると……目立ちすぎぬか?」
「変裝をすれば大丈夫でしょう」
「ケルヴどのはともかく、我はこの巨だ。『ノーザの町』では目立ってしまう」
「ならば目立たない工夫をするべきかと」
「目立たない工夫か……」
「ご息の知恵をお借りしてはいかがです?」
「アグニスの?」
「はい。アグニスどのはよく『ノーザの町』に行っていらっしゃいます。どうすれば目立たずに、私と將軍が町にれるか、よい知恵をお持ちではないでしょうか?」
「確かにアグニスはよく『ノーザの町』に行っているが……」
「アグニスどのは將軍と一緒に城にいらしているのですよね? この場にお呼びして、相談に乗っていただきましょう」
「うむ。そうだな。魔王陛下のおんためとあればやむを得ぬ」
そう言ってライゼンガは立ち上がる。
「アグニスは今、トールどのと楽しいひとときを過ごしておるはず。邪魔するのは忍びないが、呼んでくるとしよう」
「トールどのと」
「うむ。だが、重要案件のためだ。いたしかたあるまい」
「い、いたしかたありませんね」
ケルヴはうなずいてから、小聲で、
「將軍」
「なにかな?」
「アグニスどのだけをお呼びするわけには──」
「魔王陛下とトールどのが『ノーザの町』を訪問する話をしておるのだろう? トールどのにもいてもらった方がよいではないか」
「……そうですね」
「そうだ」
「…………呼んできて、いただけますか?」
「承知した」
玉座の間での會議には、トールとアグニスが參加することになったのだった。
──さらに數分後 (トール視點)──
「わかりましたので。それなら、アグニスが護衛につきますので!」
「待ってアグニス。ケルヴさんと將軍は『自分たちが護衛したい』とおっしゃってるんだよ。魔王陛下のの安全のために」
「あ、確かに。そうなので」
「責任が強い方々だからね」
「立派なので」
「とりあえず、アグニスにも護衛をお願いするとして……宰相閣下と將軍がこっそりと町にる方法を考えようよ」
「やっぱり『なりきりパジャマ』を使うといいと思うの」
「あれは……中の人の大きさは変えられないからね。宰相閣下やライゼンガ將軍サイズの貓やフクロウがいたら、みんなびっくりすると思うよ」
「貓になったお父さまも見てみたかったので……」
「殘念だけど、無理かなぁ」
「あ……そういえば『ノーザの町』には、護衛用のを連れている人もいるので」
「護衛用のを?」
「商人さんがよく、猟犬(りょうけん)を連れているの。貓やフクロウが荷をあさったりしないように、番をさせているので。人間くらい大きな猟犬も普通にいるの」
「なるほど。猟犬(りょうけん)か」
「アグニスが旅の商人に化けて、猟犬を連れていれば、目立たないと思うの」
「犬に化ける『なりきりパジャマ』を作ればいいわけだね」
「父さまと宰相閣下なら、かっこいい猟犬に化けられるはずなので」
俺とアグニスは、ケルヴさんとライゼンガ將軍の方を見た。
ケルヴさんは額を押さえている。
ライゼンガ將軍は顎(あご)に手を當てて、「猟犬。娘を守る獣か。悪くないな!」なんて言ってうなずいてる。
「どうじゃろうか。ケルヴにライゼンガよ」
玉座の魔王ルキエが、ふたりに聲をかける。
「このようなアイディアが出たのじゃが…………」
「仕方ありませんな! このライゼンガ、アグニスの犬になってみせましょう!!」
豪快(ごうかい)に答えるライゼンガ將軍。
隣にいる宰相ケルヴさんは──
「……魔王陛下をお守りすると申し上げたのは私です」
──靜かに、そんなことを宣言した。
「それに私は最近、頭がやわらかくなってきました。これくらいのことはけれてみせましょう。アグニスどの、ライゼンガ將軍と共に『ノーザの町』で魔王陛下の護衛を務めてみせます」
「うむ。頼むぞ。ケルヴ。ライゼンガにアグニスよ」
「承知いたしました!」
「このライゼンガにお任せあれ」
「全力を盡くしますので!!」
「トールは余と共に、ソフィアの元に行くとしよう。彼にも事を伝えて、協力を頼まねばならぬ。ケルヴたちは、どのように護衛を務めるか話し合っておくがよい。いや……ライゼンガよ。今から犬のふりはしなくともよい。アグニスを背中に座らせてどうするのだ。ケルヴも……玉座の間に魔で氷の柱を作るのはやめよ。飛び散った氷のかけらを掃除するのが大変だと、ドワーフの清掃係から苦が來ておるのだぞ。まったく」
こうして『魔王ルキエによる「ノーザの町」視察計畫』は進んでいくのだった。
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