《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》900 建の調査
なんだかんだで900話になりました。
ようやく本格的に終わりが見えてきそうになってきました。このまま最後までお付き合いいただければ幸いです。
薄暗いのは相変わらずでも、普通に見通せるようになったのは大きな変化だ。目をすぼめるのも結構大変だからねえ。
さて、明るくなって分かったことだが、ボクたちがいる一階部分には上と下へそれぞれ繋がる階段があった。まあ、地下へと向かう方は
下りはともかく上りの階段にどうして気付けなかったのか?それはね、外壁と同じ材で作られていたから、明度も彩度も低い狀態では壁に溶け込むように一化して見えていたのだ。
「んー……、まずは上から調べるべきだよね」
「異議なしですわ」
「それでいいと思います」
ボクの提案をミルファとネイトも支持してくれる。一見どちらも行き止まりな袋小路のように思えるかもしれないが、二階もしくは三階には外から見えた窓があるはずなので、最悪はそこから逃げることができなくもないと考えられる。
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対して地下だとそれこその通路や転移裝置でもなければきが取れなくなってしまう。
調査も大事だけれど、『空の玉座』という明確な目的地があるボクたちにとってはあくまでもついでに過ぎない。それ以上に安全であることが大事なのです。
という訳でさっそく石っぽい材でできた階段を上がって二階へと向かう。當然なだれ込むような不用心な真似はしませんのことよ。床面の高さからひょこっと顔だけを覗かせて、怪しいやつ及び怪しいものがないかを確認する。
多は明るくなった程度の一階とは異なり、こちらは等間隔で並ぶ窓から自然がり込んでいた。薄暗さに慣れた目には痛いくらいの明るさだ。
その窓だけど、どうやらガラスのような明で質な素材がはめ込まれているらしい。は通しても空気は遮斷しているようで、明るさこそ大きく違っていたが、こちらも一階と同様に締め切られた場所特有のかび臭いようなほこりっぽいような匂いが充満していた。
「……何にもないね」
侵者対策的なトラップが仕掛けられていないか気を配りながら隅々まで見て回ったが、それらも含めてここには何一つ存在していなかった。
「一階に続いて二階もこれとなると、さすがにちょっと怪しい気がする」
先程はそこまで気が回らなかったけれど、いくら朽ちてしまったとはいえ家類が置かれていた痕跡の一つもないというのはいかがなものだろうか。
「持ち出されたか破棄されたということでしょうか?」
順當に考えるならネイトの言うそのどちらかになりそうではある。
「だとしても、何のためにそんなことをしましたの?」
という新しい疑問が浮かんでくるよねえ。
「反勢力に與した『土卿』や『火卿』それに『水卿』の建だったとか?彼らの向やら何やらを調べるために、徹底的に持ち去られてしまったのかも」
「筋は通っていますね」
ボクの思い付きに等しい予想に、なるほどと頷く二人。もちろん真実かどうかは不明だ。手持ちの報ではこれくらいを想像するのが関の山なのです。
「まあ、何がどうあれ敵が襲ってこないならそれでヨシということで」
この建がどんな風に利用されていた施設なのかを探ることが目的ではないからね。安全だと判斷できればそれで十分なのだ。
などと能天気に考えていたら、次に向かうことになった地下でそれに直面する羽目になってしまった。
「な、に……、これ……?」
地上部より一回りか二回り広いそこにはカプセル狀のものが整然と並べられていた。階段の途中、部屋を一するような位置でボクたちは足を止めて固まってしまったのだった。
これでも大陸中を旅して、魔やら何やらと命のやり取りすらもしてきたのだ。今さらそのくらいで絶句してしまうほど箱りでもなければ世間知らずでもない。
そんなボクたちでさえ、そのカプセルの中には思わず言葉を失ってしまった。……勘がいい人ならもう気付いたのではないかしらね。
「……死霊の元になった人たちのなれの果て、ということでしょうか?」
「だとすれば自業自得ってことになるんだろうけど……」
「例えそうだとしても、これはあんまりというものではありませんの!」
そこにれられた老若男を問わず様々な人々は、一人殘らずその顔に驚愕と悔恨のをり付けていた。
「死霊になる過程で異常に気が付いてしまったのかな……」
もしかすると記憶や自我が失われていくのをじたのかもしれない。想像した瞬間、ぶるりとが震えた。自分がなくなっていくだなんて、それはいったいどれほどの恐怖だったことか。考えただけでも背筋が凍ってしまいそうだ。
「!……二人とも聲を抑えてください。奧の方に何かがいます」
慌てて口をつぐみ、ネイトが指し示した方向を見やる。幸いにも一階の人センサーがそのまま流用されているのか、地下空間でも奧まで見通せるだけの量が確保されていたのだ。
「……あれって死霊、かな?」
「さすがにここからでは遠過ぎてけているのかどうかは分かりませんわ……」
「ええ。それに様子もおかしいです」
そいつはこれまでに遭遇してきた連中、大陸支配の妄執に取りつかれていて、作としてはただただ前方に向かって歩き続けるだけの死霊たちとは明らかに異なっていた。
「縋り付いてるように見えるんだけど?」
「奇遇ですわね。わたくしもですわ」
「わたしにもそう見えますね」
解釈一致だね。そうなると見間違いという線は薄いと思われます。
「あのれを破壊して自分のを取り戻そうとしているのではなくて?」
ミルファの予想に顔を見合わせてしまうボクたち。それが事実なら異常事態だ。を得ることでこれまで以上の危険な存在になるかもしれないし、他の死霊たちが集まってくるかもしれない。
「放置はできないか……」
とにかく近付いて様子を見ることに。再び某テーマソングを脳再生しながら、抜き足差し足忍び足で死霊らしきやつがいる奧へと進んでいく。
背後に回り込むようにして近くのカプセルのに隠れながら覗いてみれば、そこには予想していた通りの景が広がっていた。半ばけた死霊が、カプセルに覆いかぶさるようにして縋りついている。
唯一ボクたちの想像と異なっていたのは、破壊する意思が見けられないことだろうか。
いや、もう一つ大きく違っていたことがあった。縋り付いている死霊とカプセルの中の、それはどこからどう見ても似通った部分のない、全くの他人だった。
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