《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》第147話『覆敗』
目が覚めると、右手に覚がないのが分かった。
それは、睡眠時の自の姿勢不良による循環不良が引き起こしたものだ。
「あ、れ…………………」
霞んだ視界でランドマークタワーを見た。
ゆっくりとを起こすと、腰と首が痛んだ。これもまた、姿勢不良。
ビルの隙間から、目映い朝日が顔を出している。
じっとしていれば、黒いダウンジャケットは、黒放で微かな熱を帯び始める。
未だに疲れが取れないから、はあ。と、純白のため息を一つ吐いた。
ため息は目の前で、靜かにゆっくりと消えていく。
それに対するように、テルヒコは、靜かに、確かで、強かな能力を手にしていた。
そのことに本人は、未だ気が付かなかった。
しかし、その日の晝には、テルヒコは自の才華の存在を知った。
それを使って、下校中の児を3人、人気のない路地裏に連れ込み、手に掛けた。
何れも死は才華で消し去った。
殺害に至った機は至極単純。『気持ちよくなりたかったから』である。
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しかし、誰が彼を蔑むだろうか、誰が彼を侮辱するだろうか。
きっと彼のこれまでの人生を知っていようとなかろうと、誰もが彼を忌み嫌うだろう。
だが、それに足る資格を持つ人間は、この世に一人として存在しない。
人間は必ず、自の幸福の為に他者を不幸にする。
彼は偶然、それが殺害という形で現れただけなのだ。
他者の幸福を心の底から祈っていれば、自の幸福がそれから如何に遠く、如何に害悪であるかが見えてきてしまう。
畢竟、幸福というのは、低俗な宗教に他ならない。
自分自は幸せであると、又、自の幸福は他人に何の影響も及ぼさないと信じ、他人の不幸に対して獨善的な救済を施し、善人の皮を被りながら、その本質からは目を逸らし続ける。
それが『幸せ』なのだ。
そういった點で彼は、「ごく普通の男子高校生」でしかない。
気が付いた頃には、もう日は沈みかけていた。
「んんぅ~!今日は充実したな~。あのクソガキが噓ついたのかと思ったけど、この能力めっちゃ便利で助かる~」
夕焼けを背に、大きくびを一つ。それに合わせて、アスファルトの影が十メートルほどにびる。
今日殺害した3人の児に思いを馳せながら、はあ、と、充実に満ちたため息を一つ吐いた。
その時だ。
自の右足元に小さな頭部が見えた。
10メートルほど後方にいる人間の、頭の影だ。
まあ、どうでもいいか。と、テルヒコは、泊まる宿を探そうと歩き出す。
しかし。
「待て。初由テルヒコ。」
どこか怒りに満ちたような聲が、鼓を震わせた。
「………んぅ?」
徐にテルヒコは振り返る。不幸中の幸いか、今日のテルヒコは機嫌がいい。機嫌が悪ければ、もう既に殺していた。
「誰?君は。」
その円らな瞳で、逆の人影を映し出す。
「お前を、保護しに來た。」
黒い髪の年は、そのエメラルドのような瞳で、テルヒコをじっと見つめたままそう答える。
今だから分かる。年の名は、桐咲ソウタ。
「めんどくさ………。そもそも、全然質問の答えになってないんだけど…?」
彼も自分と同じような才華を持っているかもしれない。だが、決して自分の敵ではないだろう。そう、高を括っていた。
だが、次の瞬間。
「開華……………〈霹靂神ハタタガミ〉……ッ!」
年の元が、菖のようなに瞬いた。
目が覚めた頃には、テルヒコは、聖アニュッシュ學園の療養室で目を覚ました。
それが彼の人生に於いて、初の敗北であったのだ。
不思議と悔しさはなかった。
當然とも言えよう。初めての覚なのだから。
しかし、それを理解してから、彼は更なる劣等を抱えるようになった。
SSクラスといえど、1位にはなれないその悔しさが、彼にと殺戮という歪んだ昇華をもたらしていた。
以上が、SSクラス第4位。初由テルヒコの半生である。
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