《「魔になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無雙しようと思います~【書籍化&コミカライズ】》第164話 SSランク冒険者
~阿吽視點~
「此度のスフィン7ヶ國協議會に於ける魔族撃退、誠に見事であった。また、これまでの業績を鑑みて【黒の霹靂】の全員の冒険者ランクをSS(ダブルエス)とし、向こう5年間【星覇】のアルト王國クラン序列を1位と確定する!」
「「「「「謹(つつし)んで、おけいたします」」」」」
SSランク。それはアルト王國における冒険者の頂點を意味する。
そもそもアルト王國はスフィン大陸のなかでも比較的魔出現するのランクが低い地域だ。もちろん“危険地帯”と呼ばれるSランクを越える魔が生息する場所もあるのだが、それはイブルディア帝國との國境の一部になっている『レイヴン峽谷』と呼ばれる深い谷や、東隣の“砂漠國オルディーラ”との國境である『ナクヴァ山脈』の2箇所のみである。
その二つに共通して言えるのは、その周囲に人が住めず、冒険者や軍隊であっても簡単に行くことができないため結果的に放置するしかない場所となっていることだ。ここにるのは自殺志願者か國者くらいのものだろう。
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ちなみに、イブルディア帝國のルナ皇は冒険者の仲間とともに3人でアルト王國への國を行ったのだが、その際2人の仲間がルナ皇を庇い亡くなっている。その悲劇の舞臺が『レイヴン渓谷』だった。
また、ダンジョンに於いても俺がプレンヌヴェルトダンジョンのマスターになるまではアルト王國の最難関ダンジョンはアークキメラがボスを務める『沈黙の跡』だった。沈黙の跡と言えば森林の奧深くにあり、この國でもほとんど知られていないダンジョンだ。
要するに、アルト王國では冒険者ランクはそもそもSランクが打ち止めであり、SSランクなど歴史的に見ても數名しか現れてはいない。これがアルト王國でSランク冒険者やSランクパーティーがそれなりの數存在している理由らしい。
しかし他國に目を向けてみるとそんな事はない。例えばナクヴァ山脈を越えた先にあるオルディーラ國には、その國土の半分を占める大砂漠やナクヴァ山脈にSランクオーバーの魔が生息する場所も存在していると聞いたことがある。
また、イブルディア帝國には『ウィスロダンジョン』という世界最難関ダンジョンが存在し、その中にはSSランクの魔も出現する可能も高い。となれば、その魔を討伐できるパーティーは必然的にSSランクとなってくる。まぁさすがに極數しかいないだろうが……。
話は逸れたが、アルト王國という國はスフィン大陸の中でも魔の脅威がなく非常に住みやすい土地というわけだ。故に冒険者達のレベルもある程度で頭打ちになってしまいやすい。さらに有能で向上心の高い冒険者たちが他國に流れやすいという側面もある。
ちなみにサタナスがイブルディア皇帝を洗脳しアルト王國を最初に狙ったのも、戦力的に見て一番攻め落としやすいと判斷したからだろう。
とまぁ、々と考えを巡らせていると、國王は続けて言葉を発した。
今回の褒賞授與の本番は、ここからだったようだ。
「次に、ルザルク・アルト。此度の魔族襲撃に限らずイブルディア帝國の侵攻を事前に察知し、アルト王國の被害を最小限に食いとどめ、多くの國民の命を救った。またその才覚から、復興・発展作業が続く王國の希のとなっている。これは紛れもなく“王の資質”と言える。よって、アルト王國王位継承権第一位をルザルク・アルトとし、次期國王に任命することをこの場で宣言する!」
「は……、はいっ! アルト王國のため、このをにして邁進いたします!」
ルザルク、めちゃくちゃ驚いてるな。普段はあんな顔見せないもんだから、思わずニヤけちまったじゃねぇか。
……でも、ようやくここまで來たんだな。本當にルザルクを陛下と呼べる日も遠くないのかもしれない。それにルザルクが國王になれば、この國は間違いなく良い方向へと進むだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
數日後、俺達は久しぶりにレクリアの街に來ていた。
それはSSランクとなったことで冒険者カードの更新が必要になったためだ。
今回の褒賞授與式の容はアルト王國全土にすぐさま伝達された。これにより、もともとレクリアの街で英雄視されていた俺達の人気がさらに上がったようであり、街にるとすぐに人だかりができてしまう……。
「うぉぉぉ!! 【黒の霹靂】だ! かっけぇぇ!!」
「阿吽様!! こっち! こっち見てください!!」
「ドレイクゥゥゥ!! お前は俺達の誇りだっ!! また一緒に酒飲もうぜぇぇ!!」
「キ、キヌたん……ハァハァ……」
おぃ! 最後の奴……以前にも居なかったか?? コイツだけはガチで消し炭にする必要が出てきたな……。
ともあれ、今は冒険者ギルドに急がないと人だかりできが取れなくなりそうだ。
ぞくぞくと集まってくる民衆をかき分け、冒険者ギルドの扉を開ける。そして、カウンターに行き見慣れた付嬢に話しかけると、すぐにギルドマスターの部屋へと通された。
「よぉ英雄! 久しぶりだなぁ!」
「スパルズ、來るのが分かってたんならもうちょっと何とかならなかったのか?」
「ガッハッハ! そうは言っても最近はプレンヌヴェルトの方が賑やかでよぉ! たまにはレクリアで祭りになっても良いだろ?」
「まぁそうだけど、レクリアに來るたびにみくちゃにされるのは勘弁だぞ?」
「それも英雄様の仕事だと思って諦めるこったな!」
「……ハァ。んで、新しい冒険者カードはできてるのか?」
「あぁ、できてるぞ! 【黒の霹靂】特別仕様のカードがな!」
そう言って渡された5枚の黒い(・・)カード。ガラスのような沢があり、明らかに普通のものとは違っていた。
「うおぉっ……コレめっちゃカッコいいっす!」
「ん。凄く綺麗」
「だな。ってかこれって……素材は何だ?」
「コイツは黒曜石を切り出して薄く加工した代だ。もちろん、ちゃんと冒険者カードとしても使えるようにしてある!」
「黒曜石って、火山地帯の極一部からしか取れない石じゃなかったか!? そんな希なで造られてんのかよ」
「今回は國王からの達しでな! 王城の寶庫にあったものを加工したらしい。間違ってもなくしたり盜まれたりするんじゃねぇぞ?」
「マジックバッグにれとくからそれは大丈夫だけど……」
それにしても、今回の褒賞授與式やこの冒険者カード。他の冒険者とは待遇が全然違う。
これは本格的に國が俺達を囲いに來てるな。俺達位の実力ともなればウィスロダンジョンに挑む奴が多いためかイブルディアに拠點を移する可能も考えてるって事だろう。
まぁ、ウィスロダンジョンには行くつもりだし、俺たちの行を制限するようなことをルザルクがするとは思えないから良いんだけどな。
「んで? お前さん達はこれからどうするつもりなんだ?」
「うーん、いずれウィスロダンジョンに挑むつもりではあるけど、半年くらいはプレンヌヴェルトの発展工事の手伝いをしながらゆっくりしようと思ってる。こっちにはプレンヌヴェルトダンジョンもあるしな」
本當は“ダンジョンポイントを溜めながら拡張工事をしていく”って意味なんだが、こういう言い方をしておけばプレンヌヴェルトダンジョンに挑んでいると勘違いしてくれるだろう。
「そうか! まぁ時々レクリアにも顔出すようにしてくれや。レクリアの冒険者たちもお前等を見るとモチベーションが上がるみたいだしな」
「あぁ、たまにはこっちにも來るようにするよ。コレ(・・)さえなければな……」
そう言って窓の外を眺めると、ギルド前から広場にかけて集まっている人だかりが見え、この建からどうやって抜け出したもんかと頭を抱える事になるのだった。
次話は4/28(金)投稿予定です♪
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