《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》エキジビションマッチ
『これよりオリンピアード優勝者エンプティと、【百人斬り】ヴァーシャのエキシビションマッチを開催します』
無人島を改裝した野外円形闘技場で相対する二機。
一機はコウが駆る五番機。飛行用の追加裝甲を外している、TSW-C高機型だ。もう一機はヴァーシャのボガティーリ。五番機同様、外裝に変化はあまりないが、部は最新型であろう。
五番機は刀の柄に手をかけた狀態。ボガティーリはシャシュカの二刀流で、剣を突き出すように構えている。
「遂にこの瞬間(とき)が……」
慨深いヴァーシャ。待ちんでいた瞬間だ。
撃武が止は仕方ないとはいえ、ハンデを與えられた気分だ。アルゴナウタイ全域でもいまだDライフル砲弾に匹敵する代は存在しない。
『文字通りの真剣勝負! 止事項は撃武とMCSへの攻撃は止のみ。先に裝甲を貫通したほうが勝者となります!』
コウは無言。今までの対戦は、すべて初見殺しのような勝ち方だ。このような立ち會いでは不利。しかも相手は合気にも通ずるカウンターの遣い手だ。
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『全世界よ! 刮目せよ! 最強のパイロットが今ここに決まる!』
煽るヘスティア。試合開始の合図が鳴り響く。
生と違い、相手の始が不明だ。睨み合いが続く。ボガティーリは緩やかに歩行している。
五番機は柄に手をかけ、微だにしない。
ヴァーシャは違和を覚える。五番機が――大きく見えるのだ。
「これは……」
以前とは違う。気迫ではない。
別人のようなコウの変貌をヴァーシャは見抜いた。
コウもまた、攻める手段を模索している。一度勝利しているとはいえ、本來の技量ならヴァーシャのほうが上だろう。
「隙がないな。――しかし」
――駆け引きが通じる。
アナザーレベル・シルエットのカラヌスや幻想兵のヨナルデパズトーリほどではない。
いわばこれらは巨大な鉄球。小手先の技など通用しない。考えることすらおこがましい、強大な敵。
しかしヴァーシャと機ボガティーリは違う。
ヴァーシャ用に洗練された、ヴァーシャの持ち味を活かすために最適化された機。強敵だが、それは五番機とて同様。
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あれから激戦をくぐり抜けている。以前のコウとは違うのだ。
コウは意を決する。
「――ッ」
五番機が先に仕掛けた。背中のスラスターが火を噴き、一気に間合いを詰め、抜刀する。
ヴァーシャの想定(・・・)、予想を上回る(・・・・・・)五番機の抜刀にタイミングを合わせ、狙いを定める。どれほど疾いか。そこが問題だった。
「電磁抜刀か? しかしあれは利點だけではない」
ヴァーシャが予想していた斬撃は鞘の電力を利用し刃を弾き飛ばすかのように抜刀する電磁抜刀だった。
投電力次第で恐るべき剣速となるだろう。しかしそれ故に欠點も多く包する。
まず裝甲筋で制できる程度の剣速に限られる。次に抜刀の軌道は通常の居合いと比べて限られる。読みやすくなるのだ。
抜刀速度が疾いだけでは空振りする可能もある。刃を飛ばすならレールガン砲弾で良い。
しかし予測した五番機からの斬撃は無かった。
五番機は刀を上段に構えたあと、ゆっくりと上段から腕に這わすかのように剣を垂らす。
刀を垂らしたままボガティーリに間合いにる。
「當たりか!」
斬撃に有効な構えと踏んだ防姿勢のままの當たりと踏んだヴァーシャは不敵に笑う。
ところが五番機のきはまた違った。
「作の疾さも尋常ではない!」
刃筋に腕部を添えるように接近した五番機は、構え直して孤月の峰に腕を添えてをぶつけるように接近している。わずかに下がったボガティーリのシャシュカに孤月を重ねる。
その瞬間、五番機は腕を下げ、片手でシャシュカを切り上げた。五番機の一挙一ごと、地響きのような振が周囲の空気を震わす。
「裝甲筋だけではないな! 加えて全のスラスター――轟を疑似的なアクチュエイターと化しているというのか!」
すかさずヴァーシャは五番機の進化、その正を見抜く。
ボガテリィーリは、五番機の自重と速度を利用しようとカウンターを放っていた。
シャシュカの刀は孤月に巻き込まれている。五番機は刀に自重を載せていた。シャシュカの刀は大きくたわむ。
「崩しだと!」
コウの狙いを察知したヴァーシャが歯を食いしばる。しかし気付いた時には遅い。
絡み合うのは刀ではなく、お互いの機だった。姿勢制の応酬は五番機に軍配が上がっている。
「一挙一、思い切りがいい!」
対するコウは無言。
コウの変貌を理解する。膽力が桁違いだ。あの狀態から崩しを狙うなど、並大抵のパイロットでは不可能だ。
――怯まず。
――臆さず。
――じず。
心理的な駆け引きを磨り潰す思い切りの良さが、今のコウと五番機にはある。
右手に持ったシャシュカをすぐさま離す。左腕部に持つシャシュカ切り替えるボガティーリだったが、五番機は、すでに左側面に回り込んでいる。
同じような理であると直したヴァーシャが舌打ちする。
「そんな技も使えたのか!」
システマは決して停止しない。歩行して即座に対応するさが強みだ。ボガティーリはその理をに現しうる機である。姿勢を崩された狀況からすぐさま歩行に移し、円を描くかのようにシャシュカを振るう。
五番機は構えを変えず、シャシュカの初に合わせ、腕部のスラスターを用い孤月を引き戻す。斬撃、もしくは突きが來ると踏んでいたヴァーシャは絡め取ったシャシュカを引くとは思わなかった。
引いた刀には五番機の自重が重なり、お互いの腳部がれあうほど迫る。
「――ッ!」
五番機がから力強く、さらに刀を押しボガティーリの姿勢を完全に崩していた。常に移し続けるシステマのきと、腰を落とし踏み込む剣との差。シャシュカに五番機の自重を乗せられ、勢を崩したのだ。
相手の勢いを活かしていなす業ではなく、自重とわずかな勢いを利用して敵の姿勢を崩すための業だ。
勢を崩した所に、押さえ込む五番機が、その勢から斬撃を放つ。ボガティーリはノックバックを起こし、後退している。
スラスターを全力で稼働し、かろうじて斬撃を弾き返す。カウンターなど狙うどころの話ではなかった。機の制が効かず、なんとか膝立ち狀態で踏み留まる。危うくボガティーリは投げ飛ばされ、斬り捨てられるところだったのだ。
「まだだ!」
「あの姿勢から立て直すか!」
膝立ちで後退しながらもシャシュカを振るうボガティーリに対し、同じタイミングで突きを放つ五番機。
シャシュカは五番機の右部を貫く。五番機の突きは、MCS上部に位置する部上部を貫いた時點で止まった。
『勝負あり! ――勝者、エンプティ!』
I908要塞エリアの各地から歓聲が上がる。
疑念を抱え、たまらず問いかけるヴァーシャ。
「あの攻めの崩しはなんだ? あれこそ合気の小手返しではないのか」
「學んだ技の応用でね。我流に近い剣さ。我流での技名は【百舌鳥落とし】。居合いだけでは、剣での立ち合いではあんたに勝てないからな」
本來なら相手の攻勢を利用して崩し、機を浮かして無力化したところに斬りつける技だった。機転を利かしてスラスターを噴し、勢を整えたヴァーシャもまた達人だ。
「ふむ」
技の名を知ることが出來ただけでも、若干の満足を覚えるヴァーシャ。
「見事だ。敗北の弁もない」
ヴァーシャがぽつりと賞賛の言葉を述べた。コウの腕は相當上がっている。それに比べ自分は実戦から遠ざかり、慢心していたのではないかと反省するヴァーシャだ。
膝をついたボガティーリがあのまま突きを喰らっていたら、部裝甲を完全に貫通して、リアクターを撃ち抜かれていた。
「あんたもな。あの勢から反撃するとは」
勢を崩したにも関わらず、反撃に転じて紙一重にまで持って行かれた。
ヴァーシャは強敵だと改めて認識した。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
コウの長です。五番機がないと頼りない面はありますが、規格外の超兵との連戦、強敵の撃破は彼を長させました。
『百舌鳥落とし』ようやくお披目できましたね。ゲーム出言うなら當て投げ。シルエット戦なのでカウンター系の合気に対する崩し技。
相手の自重ではなく自分の勢いと自重で敵の姿勢を崩します。本來なら某流派の片手斬り(魔の太刀という名)からの下から切り上げ敵の刀を巻き込んで首を掻ききる、という技がイメージです。ですからヴァーシャのボガディーリは、シャシュカを捨てることで投げ抜けした、ともいえるでしょう。
一話からコウ自?が強くなった、といえるまでに500話近くかかりましたね。初手初見殺しが戦の主人公でしたので、ようやくここまで……(ほろり)
さて今章もあと數話で終わり。このコウの長が星アシアの命運を大きく変えます!
新章に向かって悪戦苦闘しています! めっちゃ悪戦苦闘しているので休載しないよう、がんばります……!
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