《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》314.大神レメゲトン

314.大神レメゲトン

「もはや手加減はせん! アリアケ・ミハマぁああああ‼」

再び現れるのはレメゲトン。

だが、その表は更に不気味に歪んでいる。

その野の大きさと、アークを従える権能により、邪神へとなりかけているのだ。

大神レメゲトンという呼稱はあながち間違いではない。

「これが最終決戦だ! イルミナはアークを縛り付けるので全力を傾けてくれている! だが、もって3分。その時間で決著をつけるぞ!」

なすぎんだろうが⁉」

「仕方ないだろう。星イシスの最大の戦力、月の神、そしてアークではなく地上戦に持ち込めたこと。サイスたちをパウリナが制功したこと。これ以上の好條件はもしもう一度やり直しても整うか分からない」

「ほら勇者、さっさとやりに行くのだ! 勇者と魔王の共闘《ワルツ》なんて、なかなかチャンスはないのだ! 楽しんで踴るのだ!」

「そんな騒なダンスは免こうむる!」

「まぁ文句を言っていても始まらぬからのう」

「そうですね、トルネード!」

裂弾も目くらまし程度にはなりますかねえ」

フェンリルにセラ、そしてバシュータが攻撃をしかける。

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「よーし、行くのだ! 地獄の氷槍(バベル・ニヴルヘイム)!」

「ちくしょおおおおおおおお! アリアケ支援寄越せ! 死にたくない‼ 死にたくない‼ 究極的終局舞《ロンドミア・ワルツ》ぁあああああああ‼」

「いくらあがいても無駄だ! 喰らうが良い! 星を裂く呪殺の炎よ‼」

最初よりもより高出力の魔力の渦が、レメゲトンから放出される。恐らく魔大陸の全てのリソースを使用しているのだ。

しかし。

「ふっ、時間稼ぎをされたらどうしようかと思っていたが、みんなが攻撃を仕掛けたことで、向こうも全力を出してきたな。相手が全力なら、それは相手の限界が見えて來た証拠に他ならない!ならば、死中の活を拾うぞ、アリシア、コレット! 頼む!」

「「了解‼」」

ゴゴゴゴゴゴゴ!

カッ‼

數十倍の大きさに大したレメゲトンが、俺たちを睥睨するようにしながら、目と口から呪殺の炎を放出する。

することは可能だ。

だが、この地上戦という好條件は時間制限がある。ゆえに。

「≪決戦≫付與!」

「グオオオオオオオオオオオオオオオオ‼」

コレットがしき金のドラゴンへとそのを変える!

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「≪大結界生≫≪大天使の息吹≫」

の大結界と大天使の息吹。これで敵の攻撃はかなり防げる上に、自回復の効果が発揮される。

即ち、

「なぜだ⁉ なぜ前進できる⁉ この業火の前で! 恐怖はないのか⁉」

レメゲトンの放つ≪星を裂く呪殺の炎≫にを焼かれながらも、コレットは突き進む。

しかも、

「うわははははは‼ これはたまらんのじゃ! めっちゃ熱いのじゃ‼」

「分からぬ! 解せぬ! なぜ止まらぬ!」

「そんなこと決まっておるのじゃ」

気づけばレメゲトンの目前にゲシュペント・ドラゴンはいた。

そして、その口腔に最大級の魔力が凝していく。

の力じゃ! 大好きな旦那様と大好きなアリシアが全力で儂を信頼してくれるならば!」

は一気に魔力を解き放つ!

「儂はその信頼に答えるまでなのじゃ‼」

「ぐああああああああああああああああああ⁉」

ドラゴンブレスを至近距離より浴びたレメゲトンの彫像のような顔に、ビキリ! とヒビがる。

「く、くそ! 離れよ‼」

レメゲトンはとっさに暴れるようにして、コレットを引きはがす。

「はぁ、はぁ、許せぬ。神に対して何たる不敬なことを。この怒りの雷撃をけるがよい!」

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今度は魔力を雷へと変換し、広域に対して超強力な雷撃による攻撃を開始する。

「ラッカライ!」

「はい! 了解しています! 聖槍ブリューナク奧義!」

「何をしようとも無駄だ! 雷撃の方が早い!」

「だから、いいんです」

「なに?」

後の先。ラッカライの神髄はそこにある。すなわち、相手に先に行させ、それを利用して攻撃するのが彼の最も得意とする攻撃なのだ。

ゆえに!

「聖槍固有スキル‼ カウンター! ≪対神極・無の型≫!」

雷撃は見えない。だが、それは聖槍に選ばれた彼にとってハンデではない。

は勝手に反応し、彼への落雷はブリューナクが吸収する。

と、同時に、

「極の節理よ反転し、神すらも滅ぼせ! 対神極ブリューナク!」

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオン‼

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア⁉」

見えない攻撃すらも反撃可能なラッカライによって、雷撃のダメージをレメゲトンは負ってしまう。

「なぜだ! なぜこれほどまでに追い詰められる! 神たる俺が! 方舟《アーク》そのものになったこの俺が⁉」

「なんだそんなことも分かっていなかったのか、レメゲトン」

「なに?」

俺の言葉が意外だったようで、レメゲトンは驚く。

だが、答えはやはり簡単なことだ。

「お前は常に玉座の上にいた。かつては皇帝であり、今は神として。だが、そうして上位存在になればなるほど、それは弱點になる。なぜなら、上位なる者が悪になりし時、人によって滅ぼされることが運命だからだ。それは宇宙の摂理であり、ゆえに星イシスの神々は誰一人、ヒトを侮っていなかった。邪神ナイアすらもな。お前はその基本すら出來ていない。神のなりそこねだ」

「なりそこね、俺が!」

「神はなりたくてなるものではない。神になりかけの俺が言うんだから間違いない」

俺は淡々と事実だけを言う。

「だからもう、それくらいにしておけ。お前に神は向いてない」

それが最後の説得だった。

しかし。

「おのれ! 認めん! もういい、俺が神であろうが、なれまいが! 全てを破壊する! アークも、貴様らも、そしてこの月も。最後は星イシスすらも‼」

そうぶと、奴は更に膨張していく。

だが、それはこれまでのように魔力を放出するためのものではなかった。

「そうか。哀れなる暴走する神レメゲトンよ。俺たちごと巻き添えにして自するつもりだな」

「さすがにそれで月が消滅してしまえば、我らとて無事ではすまんであろうなぁ」

「イルミナ族も困るのだ!」

「ですが、どうすれば?」

「時間がありやせんな」

「勇者パーティーに盾になってもらっても無駄ですよね」

皆の意見はもっともだ。それに時間はほんの10分ほどしか殘っていないだろう。

だが、

「もともと奴は全てを破壊しようとしていた。自だろうがなんだろうが、対処法にさほど変わりはないさ。エリス、デュース、パウリナ」

「何でしょうか、我がパートナー?」

「自する相手を止めるのは難しい。だとすれば遠くに破棄するしかない、そこでだ」

「そうですか、では私が犠牲になりましょう。幸いまだ推進余力は殘っている。出來るだけ遠くまで運びましょう。と言うわけでデュース後は宜しくお願いしましたよ。ただ、その代わり……」

「待て! 最後まで勝手なことばかり。ふん、王國には貴様のような王でも必要だ。私が行く。ふん、その代わり、だな……」

「いや、お前たち。何か勘違いして……うむ⁉」

「はわわわ! 公衆の面前でチューなんて。何て破廉恥な⁉」

「「お前が言うな」」

エリスとデュースが言った。

やれやれ。

急事態なのだ。俺は頭をすぐに切り替えて説明する。

「そうじゃない、そうじゃない。パウリナ。君の力でエリスとデュースの意識を別の素に移したりはできないか?」

「へ? それは出來ますけど……」

「エリスとデュースは自縦モードにして、レメゲトンを遠くまで運んでしい。もちろん、意識は違う素に移した後でな。出來るか?」

「なるほど。しいのはこのだけということですね」

「機能だけな」

そして、これが肝心なところだが。

「殘り時間は10分もない。可能であれば太近辺まで運びたいと思っている」

「それはさすがに無理ではないでしょうか。何萬キロと離れています」

「ああ、だから俺たち勇者パーティーが行く。ビビアとアリシア、頼むぞ」

「あ?」

「アー君?」

ビビアたちから素っ頓狂な聲が聞こえたが俺は無視して続けた。

「一番活躍したがっていたからな。まさに最終局面だ。これ以上の場面はないだろう。それに追放されはしたが、それまで長く一緒に旅をしてきたことには変わりはない。今回の作戦は連攜力が必須だ。最適のメンバーと言えるだろう」

「あばばばばば⁉ いやいやいやいやいや! ちょっと待て! ちょっと待て! い、嫌だ! 俺は行きたくねえ⁉」

「無論、死ぬかもしれない危険なクエストだ。だが、勇者だからこそその恐怖に打ち克てるだろう」

「あひいいいいいいいいい⁉」

「全然打ち克ってないようですけどねえ。他の皆さんも。まぁ、私はアー君と一緒なら別にどこにでも行きますけど。ところでアー君、彼らが平靜になるのを待ってる時間はないですよ。作戦を教えて下さいな」

「ああ、そうだな」

その作戦を聞いて、ビビアたちからは更なる阿鼻喚がれたのであった。

「助けてくれえええええええええ⁉」

「まぁそんなに嫌がることはないだろうに」

作戦は簡単だ。

の方向を目指し、レメゲトンを大結界に包み連れて行く。

だが、通常の飛行では太にたどり著くことは出來ない。

宇宙で発させてしまえば、地上にどういった被害が出るかは不明だ。

そこで、まず全員で太の方向に向かって飛行を開始する。

そしてある程度のところで、一人が他のメンバーを押し出す形で加速を助けて離する。

これを繰り返すことで、超高速で移することが最終的には可能になるのだ。

無論、全ての加速スキルなどは使用しながらのこととなる。

最終段階のスピードは凄まじいものになるから、俺が擔當するしかないだろう。

大結界を張ってもらう関係から、アリシアは最後から二番目だ。

「よし、行くぞ!」

「必ず勝ってくるのじゃぞ! 旦那様! しているから帰ってきたら結婚するのじゃ!」

「先生、僕もです! いえ、私もです! 帰ってきたら一緒になりましょう! 約束ですよ!」

「我もそのように頼むぞえ?」

「え……えっと……?」

「はいはい。子會で話し合いましょう。子會で! さ、エリスさん、デュースさん。初期加速お願いします」

「「……」」

既に意識を他の基本素に移した二人のに意識はない。合図とともに俺たちを結界ごと運んで行く。

「離せえええ! おのれ! 最後までこのような!」

「やれやれ。スキル≪サイレス≫」

「おのれえええええええええええ‼ …………‼」

これで靜かに、

「ちくしょおおおおおお! アリアケぇえええええ! 許さねえからなぁ⁉ 死んでも許さねえええええ‼」

ならなかったようだ。

「ふっ、大丈夫だ、ビビア」

俺は泣きぶアリシア以外の勇者パーティーに微笑みながら言った。

「この程度のクエスト、何度でもクリアしてきただろう?」

そう言いながらウインクする。

「今回も問題ない。何せ世界一のポーターであり、師である俺が付いているんだからな」

「うるせええええええええええええ! 絶対許さねえからなあああああああああああ‼」

この辺りでいいだろう。

「よし、ビビア、俺たちを思い切り太の方向に向かって押せ!」

「うるせえ! 命令すんじゃねえ! おらあ!」

ビビアは思いっきり星剣でロンドミア・ワルツを放ちながら、こちらを超加速させる。

「帰ってきたら千倍返しだからなぁ‼ 覚えてやがれくそがああ‼」

悪態をつくビビアをエリスの素が回収して、イルミナの方へ戻って行く。

「アリシア、君もそろそろ」

「んっふっふー。嫌です」

「は?」

意外な返事に俺は驚く。しかし、彼は嬉しそうに微笑むと。

「相変わらずニブチンですねー、アー君は。太の近くにあなた一人でなんて行かせる訳ないじゃないですかー」

「だが危険だぞ?」

「だからこそですよ。もし死にかけても。死んでも。私が何度でも蘇生してさしあげますから。知ってますか、アー君。私、結構重いなんですよ?」

「そうなのか?」

「そうですよ。だから、今回のメンバーに選んでもらえたの、実は嬉しかったんです。ふふふ。ねえ、ところでアー君。気づいてますか?」

「何がだ?」

「レメゲトンさんですが、恐らく発を早めようとしています。魔力飽和の速度が早まってますから」

なるほど。せめて一矢報いようとしているようだ。

「とすると、やはり最後の一押しがいるな。アリシア、頼めるか?」

俺が加速して太に近づく必要がある。

スキルを使用すればなんとかなるだろう。

しかし。

「それだともし失敗した時に蘇生できないじゃないですか。大卻下です」

「だが」

「むしろ逆にしませんか? 私にスキルをかけてもらってですね、私が加速してレメゲトンさんを太で自させるようにするんです。名案でしょう?」

俺はその言葉に苦笑して。

「OK……というはずがないだろう? 俺はお涙頂戴な話は昔から嫌いでな。やはりハッピーエンドじゃないとなぁ」

「あー、確かにアー君に読んでもらった本《語》は全部そうでしたねー」

ならばどうするのか。答えは簡単だ。

「二人で力を合わせるか」

「はい、大賛です。私のアー君! 大好きです!」

「スキル≪攻撃力アップ≫。デュース、すまないな。お前の素は壊してしまう」

「すみません、デュースさん! 戻ったら、味しいお料理をごちそうします! 聖さんパーンチ‼」

ドゴオオオオオオオオオオオン‼

の一撃でデュースの素発を起こす。

それによって更に加速が生じた。

このまま確実に太の中でレメゲトンを自させなくてはならない。

「このまま行くぞ、アリシア!」

「太の中にまで來れるなんて、アー君といると退屈しませんね。大結界を常時発。やれやれ~」

「ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

の中にる。

そこはアビスのような灼熱の地獄。

生命が生きていける環境ではない。

そして、その時は來た。もうスキルは解除していいだろう。

「さらばだ、レメゲトン。せめて安らかに眠るといい」

「おおおおおおおおおおおお! おのれ! なぜだ、なぜこれほどの差がある! 俺は神になるはずの男だったのに!」

その言葉に俺は微笑みを浮かべて答えを伝える。

「支配するのが神ではないからだ、レメゲトン。次生まれ変わる時は俺の弟子になるといい。神がどう振る舞うべきか教えてやれるだろう」

「ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」

ドオオオオオオオオオオオオオオオオン‼

魔力が飽和し、大発を起こす。

それはまるで星の発に匹敵する規模であり、太の中で発させていなければ、恐らく星イシスやイルミナにも大きな被害が出ていただろう。

「ぐっ⁉」「きゃっ⁉」

そして、その心地の間近にいた俺たちもその余波をもろにけた。

俺とアリシアは抱き合いながら、彼の結界に守られながらも、宇宙のどこともしれない方向へ吹き飛ばされたのであった。

【小説・コミック報】

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