《【書籍化・コミカライズ】さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる》4 ししゃくふじんですからいそがしいのです
王都に著く前の最後の休憩でお晝ごはんを食べた後、第四王子が真剣なお顔を私に向けました。
お晝ごはんはゆうべ泊まった宿で包んでもらったベーコンと葉っぱのキッシュです。きのこもってて、ロドニーが焚火でさっと溫めてくれたからしっとりほこほこで味しかった。焚火なのに燃やしちゃわないのはロドニーが上手だからだと思いま――あら?ロドニーはまだ何か焼いて……あれは!?
「ふ、夫人、聞いて?ねえ聞いて?うん、あれはマシュマロだねー」
「やはりマシュマロ」
「アビー、あれはスモアだ。すぐできるから座って待とうな」
「はい!」
ロドニーがマシュマロを刺した串をくるくるしてます。あっあっ、茶くなってきました!燃えちゃう!
「軍施設にある先輩の執務室で週に一度なら、今回引き上げてきたロングハーストの書類の整備を手伝ってもいいって先輩が言ってくれたんだ」
「妻が了承したら、の話です」
「うん、そのお願いをする時間を今もらえたの。で、夫人にこうしてお願いしようとしてるわけだけど、マシュマロは焦げないからもうちょっと僕のお話も聞いてもらっていいかな」
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「ロドニーはすごいので」
「そうだね。いい執事だと僕も思う」
にっこりしたロドニーと目が合いました。あっ!串に刺したままのマシュマロを薄いビスケットで挾んだ!挾んでぎゅって!
「殿下、妻はちゃんと聞いてますから話してくれて構いませんよ」
「屋敷ではだめなのですか」
「先輩が留守の屋敷に文が押し掛けるのも、僕の執務室に夫人だけを頻繁に招くのも外聞があまりよくないからねぇ」
「がいぶん」
お隣の旦那様を見ると頷きが返ってきました。でも眉間にはぎゅっと深いしわがあります。ロドニーがことんとお皿に載せたスモアをテーブルに置いてくれました。つついても熱くなかったので、ぎゅって押すとむにってビスケットの周りからマシュマロがはみ出ます。
「ぉぉ……」
「……どうした?」
旦那様の口元にスモアを持っていくと、きょとんとされました。あ、しわなくなった。ご機嫌悪いかと思いましたけど違ったみたいです。よかった。旦那様はスモアを半分に割って、あっ、にゅーってびた!でもチーズほどじゃないです。すぐにふわっと千切れました。片方を口にしてから「よし、もう熱くないぞ」って、もう片方を食べさせてくれます。味しい!さくっとしてから、もにゅってしてとろってしてふわっとした!
「えっと、続けていいのかな……味しい?」
「はい!殿下もどうぞ!」
「う、うん。ありがとう。で、先輩の執務室でね、文に引継ぎをしてもらうというか、資料の読み解き方を教えてあげてしいんだ。勿論先輩はずっと同席してもらうし、夫人の調を最優先するよ」
読み解き方というのは何の話かわかりませんが、これはお仕事の話なんだと思います。でも。
「お仕事……私は子爵夫人のお仕事があるので忙しいです」
「う、うん。でも……參考までに聞いても?」
「まず旦那様と朝ごはんを食べて、いってらっしゃいませをして、イーサンのお手伝いをします」
主人ですから帳簿とか見ます。
ロングハーストの報告書はだいぶ間違えてることが多かったけど、イーサンは計算も得意ですから間違ってたことはありません。でも間違ってないですってするのが大事なのだとイーサンが言ったからそれでいいのです。
「なるほど」
「それからお庭をお散歩して、お爺にクッキーもらって」
「んん?」
「廚房でお晝ごはんつくってるところを見ます」
「見るんだ」
「はい。主人なので。そしてお晝ごはんが終わったら、図書室で本を読んでお晝寢して、お散歩して、おやつを食べて、廚房で夜ごはんの下ごしらえをしてるところを見ます。それから」
「妻が多忙なのはおわかりいただけたかと思いますので「待って待って先輩ちょっと無理がないかな」」
旦那様がスモアをもうひとつ半分にして口にいれてくださいました。一口では食べられないのでそのままけ取って齧ります。味しい。指先に力をれると、またむにってしました。スモアひとつでビスケットが二枚分もあるから、これでデザートはおしまいです。口の中がもこもこしますけど、甘いのがなくなるまでお茶は飲みません。
「夫人、勿論タダじゃない。しっかりと報酬は払うけど、それとは別に夫人がしいものはあるかい」
「ご褒ですか」
「――アビー!?」
「殿下のご褒はいらないです。旦那様のご褒があるので」
第四王子はどっかがかゆそうな顔をして、旦那様はなぜか驚いた後にほっとため息をつきました。お茶を一口飲んでそういえばと思い出します。チーズタルトをお城で食べたときに気がついたことです。味しいチーズは味しいミルクからできてて、味しいミルクはすごい牛からできる!
「やっぱりいります。お城のすごい牛がいいです」
「え。なんで牛がいること前提なんだろう」
ほっぺの味しい牛かおが味しい牛か迷いましたけど、第四王子は城で使ってる食材を分けてくれるというのでそれにしました。ほっぺと!ミルクが!両方!やりました!
いつもごひいきありがとうございます!
アビーのコミカライズ1巻が本日発売配信です。紙の本は5/10発売なんですけど!
なんで発売日違うのかは知らないです。きっと大人の事!
中は電子も紙も同じようなんですが、まんが王ってところのサイトではコミカライズ作者の石野人先生のサイン本が選で當たるみたいですね。當選しても屆くのえらい遅いみたいだけど。締め切りは5/9かな。私もぽちった。だってしかったから!
味しいごはんにシイタケ目になるアビーをどうぞご堪能くださいませ!
ギュルルルピタァ!って踴ったりもしてるよ!
【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔物なら、僕が食べ盡くしましたよ?~
「無駄飯ぐらいの役立たずが! おまえにはこの家から出て行ってもらう!!」 神官を買収した兄のせいで、加護なしだと認定されたディオは、體裁を取り繕うことしか頭にない父によって実家を追放されてしまう。 ところが、工作がばれることを恐れた兄に突き落とされたダンジョンの底で、最強の加護が覚醒する。 SSランクの魔物の能力を100體分手に入れ、難なく地上に戻ってこられたので、とりあえず実家に戻って兄の顔でも見てみようか? 僕の追放を撤回し、今度は兄を追い出そうとする父。 泣きながら縋り付いてくる兄。 しかし、親子そろってゴマをすってきてももう遅い。 「哀れだな、兄さん。それから父さん、出ていくのはあなたもですよ」 「へ?」 これは、全てを失い奈落の底まで落とされた少年が、最強の力で成り上がっていく物語。 【※ハイファンランキング日間1位、週間1位ありがとうございます!】
8 107【完結】「お前の嫉妬に耐えられない」と婚約破棄された令嬢の醫療革命〜宮廷醫療魔術師に推薦されて、何故か王國の次期騎士団長様に守られる生活が始まりました〜【書籍化】
《エンジェライト文庫様より発売中!》 サクラ・オーラルはメイル王國の子爵令嬢だ。 そんなサクラにはウィンという婚約者がいた。 しかし、ウィンは幼馴染のモミジのことをサクラより大切にしていた。 そのことについて指摘したらウィンはいつも『モミジは妹みたいなもの』としか言わなかった。 そんなウィンにサクラは徐々に耐えられなくなっていた。 そしてついにウィンから「お前の嫉妬に耐えられない」と婚約破棄をされる。 サクラはこれに文句がなかったので少し癪だが受け入れた。 そして、しばらくはゆっくりしようと思っていたサクラに宮廷魔術師への推薦の話がやってきた。 これは婚約破棄された子爵令嬢が王國トップの癒しの魔術師に成り上がり、幸せになる物語。 ※電子書籍化しました
8 1603分小説
一話完結の短編集です。
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