《【書籍化】捨てられ令嬢は錬金師になりました。稼いだお金で元敵國の將を購します。》飾らない気持ち

繋いだ手のひらのあまりの小ささに、何度もれているはずなのにその都度驚いてしまう。

俺の手よりも一回りは小さいだろうか。ほっそりとした華奢な指に、貝殻に似た小さな爪。簡単に折れそうなほどに細い手首。

の手れをしていないことを時折気にしているようだが、驚くほどにらかでらかい手のひら。

この手が──俺や、この國を、人々を救ったのだと思うと、軽い混を覚える。

偽りも続けていけば真実に変わるものなのだろう、出會ったばかりの頃のクロエは痛々しいほど己を取り繕っているように見えた。

から回る言葉と、妙に軽薄な態度。

何かを恐れているように己を取り繕っているクロエの本質が、臆病でごく普通のありふれただとはすぐに知れた。

それでも、たとえそれが己を鼓舞するための仮面であっても、クロエはいつでも明るく振る舞い前を向こうとしていた。

震えながら顔をあげて、大丈夫だと笑ってみせる。恐れも怖さも覆い隠して、救いを求める誰かにためらいなく手を差しべる。

Advertisement

その姿は強引に俺を暗闇から救いあげたのだろうと思う。

クロエがいなければ俺は、この國に再び戻ってこようとは思わなかっただろう。

國も、世界も、人々も。俺にとっては全てどうでもよく、己の命に興味がないのと同じぐらいに誰かに興味がなく、滅ぶのならば滅べばいいと皮気に笑いながら、何もしようとせずにただ地べたに座り込んでいただろう。

クロエは確かに俺を救い、俺を変えた。

そしてクロエもまた、し変わったようだ。

かつては噓くさく軽薄でしかなかった言葉は今は、明るく皆を照らすものに変わっている。

多くを失い酷い景を見て闇の中にいたディスティアナの人々は、クロエの姿に勵まされている。

クロエの造った馬鹿馬鹿しい形をした瓦礫食べ蟲や、しゃべる目玉、見ているだけで気が抜けるキノコやらカエルやらニワトリの形をした錬金ランプ、四角い形に何故かつぶらな目のある錬金ストーブ。何故か巨大なトマトの形をした溫室。

そして、「ハルモニアはトビウサギと共存する街にします」と言って大量に捕獲してきた、トビウサギの群れ。

それだけではなく、街の中に海を作り、城を空に浮かべて溫泉を造った。

遊園地を作ると言って、観覧車や飛竜型浮遊遊覧裝置、飛竜型メリーゴーランドに、トビウサギ牧場といったものを造り、子供たちを喜ばせていた。

ハルモニアの街は、クロエの造ったもので溢れている。

クロエが可いと言い張っているそれは、俺にはあまり理解できないが、不気味なものを可いと言い張るクロエの姿を見ているのは嫌いではない。

街の人々もおそらくそうなのだろう。

以前のディスティアナの民なら到底れなかっただろう、ごちゃついていて混沌として賑やかに街が変わっていくことを、むしろ喜んでいるようだった。

クロエの──素直で裏のない懸命さに、そしてその明るさと優しさに、皆救われているのだろう。

俺がそうであったように。

「ジュリアスさん、見てください! 的ですよ、的! ディクセンの魔法を込めた銃を見て思いついてしまったのですね。銃にコルクを詰めて、景品を打つのです。そうすると、景品が手にるのです」

的」

「はい。的當てゲームですね、アストリアでは弓矢で的當てをしたりしますけれど、弓矢で撃ったらぬいぐるみにがあいて子供たちの心に深い傷ができるでしょうから、心とに優しいコルク銃にしたのですね」

ふふん、と、得意気に的について説明してくるクロエは、今日は珍しくエプロンドレスではない姿をしている。

最近エプロンドレスは子供じみているのではないかと悩んでいるようだ。

正直、何を著ていようとクロエがクロエであることには変わりはないので、出が無駄に多くなければなんでもいいと思っている。

エプロンドレスを著て、化粧もろくにせずに髪も適當にばしているクロエはもちろん可いが、著飾れば──注目を浴びる程度には、クロエは可憐な容姿をしている。

誰にも気づかれたくないと思うのは、獨占なのだろう。

エプロンドレスのままでいいと思うが──浴も、似合う。

髪を結いているせいで、細い首がはっきり見えるのも、華奢なが余計に華奢に見えるのが、どことなく儚さをじる。よく似合っている。

似合っていると、口にするべきなのだろう。

今までは、己のにしてしまう決意もできなかったくせに、嫉妬や獨占だけは人一倍あった。

だから冗談めかして、皮混じりに、ドレスなどを著た時に褒めてしいと期待に満ちた瞳で見上げてくるクロエを、からかっていた。

それはそれでけないことだと思うが、今は、何に遠慮をすることもない。

「クロエ、その浴。似合う」

「は……っ、え……っ!? な、なな、なんですか、突然! 的、的の話をしていたんですよ、私は……!」

明らかに狼狽えながら、顔を真っ赤にして慌てているクロエがらしい。

素直に褒めると、面白いぐらいに照れてくれるクロエが、心の底からしいと思う。

お読みくださりありがとうございました!

評価、ブクマ、などしていただけると、とても勵みになります、よろしくお願いします。

    人が読んでいる<【書籍化】捨てられ令嬢は錬金術師になりました。稼いだお金で元敵國の將を購入します。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください