《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》92 フェリクス様の10年間 1
私室で赤くなった頬を両手で押さえていると、ミレナから質問された。
「窓を開けて、部屋に風をれましょうか?」
「そうね、お願いできるかしら。だけど、心配しないでね。的に高ぶって、頬が熱を持っているだけだから」
クリスタとハーラルトが訪問してくれた間、ミレナもずっと部屋に控えていた。
そのため、一部始終を目にしていた彼に、ハーラルトについての想をらす。
「男の子の長は早いのね。ハーラルトがまるで王子様のようなことを言うから、ドキリとしてしまったわ」
というよりも、実際に彼は年若い王弟だから、王子様と同じようなものだろう。
開いた両手でぱたぱたと顔を扇いでいると、窓を開け終わったミレナから言いたげに見つめられる。
「どうかした?」
「いえ、ハーラルト殿下のお言葉は冗談ではなく、本気だったように見けられました。言うまでもないことですが、ルピア様の未來は1つに定まってはいません。明るくて楽しい道がいくつも用意されているはずです。ですから、ルピア様はその中からお好きなものを選ばれればいいのですよ」
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「まあ」
ミレナは私贔屓が酷過ぎて、存在しないものを見ているわ、とおかしくなる。
けれど、の話題になったことで、目覚めて以來の懸念事項が思い出され、躊躇いながら口を開いた。
「ミレナ、実はずっと気になっていたことがあるの。ただ、とても不躾な質問だから、嫌だと思ったら答えないでちょうだいね」
「はい」
「その、あなたは結婚しているのかしら? もしも獨だとしたら、どなたかに嫁ぎたいという気持ちはないの?」
私が嫁いできた時、ミレナは16歳だった。
そのため、今は28歳になっているはずだ。
侯爵家の令嬢であるミレナが28歳まで獨だとしたら、由々しき事態だ。
そして、その理由が、私が眠り続けていたことだとしたら、私は何としても彼に素晴らしい嫁ぎ先を準備しなければならない。
そう考えながら、息を詰めて返事を待っていると、ミレナはあっさりと否定の返事をした。
「いいえ、私は獨です。これまで1度も結婚したことがありません。なぜなら嫁ぎたいと思うようなお相手はいませんでしたから」
「まあ、ミレナ!」
間違いないわ、彼が獨なのは私が眠り続けていたからだわ。
きっと責任の強い彼は、私の世話をすることを第一に考えて、自分の結婚まで考えが回らなかったのだ。
彼の兄のギルベルト宰相も、結婚について気を回すタイプには見えないから、気付いたら獨のまま、今まで過ごしてきてしまったのではないかしら。
こうなったら何が何でも、彼が幸せになれるようなお相手を用意しなければいけないわ、と泣きそうな気持ちになっていると、ミレナは「ですが」と言葉を続け、握りこぶしを作った。
「最近になって、突然、結婚願が湧いてきました」
「えっ!」
私は飛び上がらんばかりに驚いて、ミレナを見つめる。
もしかして素敵な出會いがあったのかしら、と期待して次の言葉を待っていると、彼は思ってもみないことを言い出した。
「もしも私がルピア様に先んじて出産していれば、ルピア様のお子様の母になれたかもしれないと思い至り、悔しさを覚えたのです。ですが、この悔しさをバネにして、次のお子様の時にはぜひルピア様よりも早く出産して、お子様の母になりたいと思います!」
「ミ、ミレナ、結婚はそういう理由でするものではないと思うわよ」
とんでもない理由を聞いて、どぎまぎしながら答えると、ミレナはきっぱりと言い切った。
「そういう理由でもない限り、私が結婚しようと思うことはありませんわ!」
「ま、まあ、そうなのね」
彼の表が決意に満ちたものだったので、同意することしかできずに大きく頷く。
すると、ミレナは考えるかのように首を傾げた。
「ただし、昨日になって、もうし様子を見た方がいいのかもしれないと思い直しました。なぜならルピア様が兄やビアージョ総長と面會された際の會話を聞いていましたが、……ルピア様が離縁して、この國を出られる可能が高いように思われたからです。そうであれば、この國の男と結婚することは止めておくべきでしょう」
ミレナの言葉から1つの可能に思い當たり、びっくりして質問する。
「えっ、ミレナ、あなたはスターリング王國まで付いてきてくれるの?」
「はい、ルピア様のお許しがいただければ、どこまででも付いてまいります」
當然だとばかりに頷くミレナを見て、私はいいのかしらと思いながらも、の中に嬉しさが込み上げてくるのをじた。
「あなたが付いてきてくれるのならば、これ以上に嬉しいことはないわ! まあ、ディアブロ王國だったら、私にもたくさんの伝手があるわよ。お父様やお兄様にも協力してもらって……あら、そういえばお兄様はご結婚されたのかしら? もしも獨ならば、お兄様がお相手という手もあるわね。もちろん、ミレナが気にればの話だけれど」
お兄様は30歳になっているはずだから、28歳のミレナとは2歳の年齢差となるはずで、ちょうどいいのじゃないかしら。
そう考えながら顔を上げると、開いた扉の前で棒立ちになっているフェリクス様と目が合った。
「……ノックをしたのだが、話に夢中になっていて聞こえなかったようだな。私は私で返事がないことが心配になって、許可を待たずに扉を開けてしまった。すまない」
そう口にしたフェリクス様は、珍しく別のことを考えている様子で、私の返事を待つことなくふらふらと部屋にってきた。
それから、立っていられないとばかりに、倒れ込むようにソファに座り込む。
その顔は酷く悪かったため、調が悪いのかしらと心配になった。
「もしかしてフェリクス様は、調が悪いのではないかしら?」
手をばして彼の額に當てると、通常よりも溫が低いように思われる。
「まあ、寒くはない? 今、溫かい飲みを準備させるわね」
彼の額にれていた手を引っ込めようとすると、がしりとその手を摑まれた。
それから、フェリクス様は縋るように私を見つめてくる。
「ルピア、もしも君がディアブロ王國へ行くのならば、私も付いて行っていいかな? 私は案外何だってできるから、それなりに役に立てると思うよ」
いつも読んでいただきありがとうございます!
おかげさまで、6/7にノベル2巻が発売予定です。どうぞよろしくお願いします。
また、ノベル1巻が重版決定しました! お手に取っていただいた皆様、ありがとうございます!!
★ルピアとフェリクスの甘々な話
★フェリクスがどうしようもなくルピアに傾倒している話
★ルピアがハーラルト&クリスタと一緒に眠る話
★結婚前のルピアとイザークの話
を1巻に加筆していますので、ご興味がある方はGWの機會に読んでいただければ嬉しいです(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
【書籍発売中】【完結】生贄第二皇女の困惑〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜
【書籍版】2巻11月16日発売中! 7月15日アース・スターノベル様より発売中! ※WEB版と書籍版では內容に相違があります(加筆修正しております)。大筋は同じですので、WEB版と書籍版のどちらも楽しんでいただけると幸いです。 クレア・フェイトナム第二皇女は、愛想が無く、知恵者ではあるが要領の悪い姫だ。 先般の戦で負けたばかりの敗戦國の姫であり、今まさに敵國であるバラトニア王國に輿入れしている所だ。 これは政略結婚であり、人質であり、生贄でもある。嫁いですぐに殺されても仕方がない、と生きるのを諦めながら隣國に嫁ぐ。姉も妹も器量も愛想も要領もいい、自分が嫁がされるのは分かっていたことだ。 しかし、待っていたのは予想外の反応で……? 「よくきてくれたね! これからはここが君の國で君の家だ。欲しいものがあったら何でも言ってくれ」 アグリア王太子はもちろん、使用人から官僚から國王陛下に至るまで、大歓迎をされて戸惑うクレア。 クレアはバラトニア王國ではこう呼ばれていた。——生ける知識の人、と。 ※【書籍化】決定しました!ありがとうございます!(2/19) ※日間総合1位ありがとうございます!(12/30) ※アルファポリス様HOT1位ありがとうございます!(12/22 21:00) ※感想の取り扱いについては活動報告を參照してください。 ※カクヨム様でも連載しています。 ※アルファポリス様でも別名義で掲載していました。
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