《ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~》第三百二十七話 軍議の黙禱
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第三百二十七話
軍議を行う會議室にグーデリアを始め、ライオネル王國のロメリアにヘイレント王國のガンブ將軍、ホヴォス連邦のディモス將軍とハメイル王國のゼファーが集まり席に著く。そして時間いっぱいまで兵士に指示を出していたヒュースが、最後にやってきて席に著いた。
「では、軍議を始めよう」
ヒュースが會議の開催を告げる。
通常であれば連合軍の方針が話し合われる。だがまず何よりやっておかなければならないことがあった。
「その前に一つよろしいだろうか」
グーデリアは席を立ちヒュースを見た。
「先代、ヒューリオン王のご逝去。心よりお悔やみ申し上げる」
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グーデリアはゆっくりと頭を下げた。ディモス將軍にガンブ將軍、ロメリアにゼファーも立ち上がり哀悼の意を表する。ヒュースも立ち上がり軽く頭を下げる。
「お心遣いありがとうございます。しかし亡くなったのは、我が父だけではありません。多くの將兵、そしてゼブル將軍もその命を落とされました。ゼファー様。お悔やみ申し上げます」
ヒュースがゼファーに向けて頭を下げる。一同もそれに倣う。
「ありがとうございます」
ゼファーが深々と頭を下げ、全員が目を伏せる。そして亡くなった者達に黙禱した。しばしの鎮魂の後、全員がゆっくりと顔をあげ、席に著いた。
「……さて、皆さん」
全員が著席したのを確認して、ヒュースが靜かに、しかし力強い聲で語りかけた。
「我々は多くの犠牲を出しました。しかし悲しみに暮れている時間はありません。魔王軍はまだ目の前に存在し、戦いは終わってはいないからです」
ヒュースは顔を引き締め、連合軍の代表達に目を向ける。
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その姿を見て、グーデリアはし心した。ヒューリオン王やその弟であったレガリア將軍もいないというのに、ヒュースは堂々と軍議を主導していた。語っている容は家臣がまとめた草案を話しているだけなのだろうが、原稿を見ずに自分の言葉として語っている。
ヒュースの態度に、どの國の代表も顔を引き締めて頷く。
「まずは早急にガンガルガ要塞の守りを固めねばなりません。そこで……」
ヒュースは一度言葉を區切り、グーデリアに目を向ける。
「要塞の守りには、フルグスク帝國についていただこうと思っている」
ヒュースの提案に、グーデリアをはじめ會議に參加していた全員が驚いた。
「それは、本気ですか?」
ディモス將軍が思わず言葉をらす。
「はい。グーデリア様と月騎士団が守りにつけば、要塞の守りは盤石と言えるでしょう」
「それは、そうでしょうが……」
ディモス將軍が一瞬だけグーデリアに視線を送る。
確かに、グーデリアと月騎士団が守りにつけば、どのような大軍が攻めてきても跳ね返せるだろう。巨大な城壁の上から、氷魔法やの魔道を使って斉するだけでいい。たとえガリオスが攻めてきたとしても押し返す自信がある。しかしグーデリアを始め、各國の代表はヒューリオン王國が要塞にるものと考えていた。
「ヒュース様はどうされるおつもりですか?」
「私はこのヒルド砦で兵を指揮します」
ディモス將軍の問いに、ヒュースは前線に立つと決意をあらわにする。各國の將軍たちは息を呑んだ。
上手いなと、グーデリアは再度心した。
ヘイレント王國やホヴォス連邦は軍の損耗も激しく、早く國に帰りたいと考えているはずだ。しかし王を失ったヒュースが、の危険を顧みず陣頭指揮に立つというのだから、帰りたいとは言えない。ヒュースは連合軍を維持するための一手を、すでに打ってきているのだ。
「グーデリア様、お願いできますか?」
「そこまで言われるのでしたら、要塞の守りはお任せください」
ヒュースに対して、グーデリアは顎を引く。
「さて、今後の課題は目の前に殘る魔王軍と、そして北のディナビア半島に殘る魔王軍です」
ヒュースの視線は、部屋に置かれた大きな機に注がれた。
機の上には地図が広げられている。地図にはガンガルガ要塞が存在するダイラス荒野を中心に、西にはローバーン。北には海に突き出たディナビア半島が描かれている。半島にはジュネーバという文字も書かれていた。
「我々連合軍の目的は、ガンガルガ要塞を制圧することで魔王軍に奪われたディナビア半島を奪還することです」
ヒュースが力強く拳を固める。
ディナビア半島にはジュネブル王國と呼ばれる國が栄えていた。しかし魔王軍の攻撃により王國は滅び、ジュネブル王家の人間は赤子に至るまで殺された。生き殘った國民達も魔王軍に奴隷とされ働かされているという。現在ではジュネーバと名を変え、魔王軍に支配されている。
「ディナビア半島には、魔王軍が今なお多く殘っています。しかし我らがガンガルガ要塞を制圧した今、魔王軍は出することは出來ません」
ヒュースはディナビア半島が描かれた地図に指を向ける。ディナビア半島は海に突き出た形をしており、大陸とつながる點はただ一か所、ガンガルガ要塞が存在するこのダイラス荒野のみだ。連合軍が陸路を封鎖すれば、ジュネーバに殘された魔王軍は逃げ場がない。
もちろん半島であるため海に面しており、船を用いての出は可能だ。しかしジュネーバには一萬の魔王軍の兵士に加え、移住してきた六萬の魔族がいるといわれている。輸送能力の面から、殘されたほとんどの魔族は逃げることが出來ない。
「今後の課題はガンガルガ要塞の守りを維持しつつ、ディナビア半島への道を封鎖。そしてジュネーバに殘る魔王軍をせん滅することと言えるでしょう」
ヒュースは語りながら、連合軍の代表達を見た。
フルグスク帝國がガンガルガ要塞の守りにつき、ヒューリオン王國がヒルド砦にり、ディナビア半島へとつながる道を封鎖する。そうなればジュネーバの制圧は殘り四か國で分擔することになる。
ディナビア半島へと進軍し、ジュネーバを制圧する。これは本來おいしい仕事と言えた。敵の數はなく、制圧する街には財貨が蓄えられている。何より制圧した土地を連合軍で分割統治することがすでに決まっている。
待ちに待ったご褒の時間だ。もしこれが開戦した當初であれば、各國の代表は我先にとは名乗りを上げたことだろう。しかし――。
ディモス將軍やガンブ將軍は、周りをうかがうように視線を送り、ロメリアとゼファーも目を閉じたまま言葉を発することが出來なかった。
無理もない。ガンガルガ要塞の攻略は予想以上に長引き、多くの損害を出している。どの國も戦力は半減し、これ以上損害を出すことを恐れていた。
ディナビア半島はしいが、これ以上戦いたくはない。相反する要求の板挾みとなり、誰もが聲をあげることが出來ないでいた。だがその時、小さな聲が張を破った。
「あの、一つよろしいでしょうか?」
白い手を掲げ発言の許可を求めたのは、ライオネル王國のロメリアだった。
「もちろんです。ロメリア様」
ヒュースが快諾すると、ロメリアは咳払いをして語り始めた。
「実は私の方から提案があるのですが」
ロメリアの提案と聞き、グーデリアをはじめ各國の代表が息を呑む。また何をやりだすのかと、誰もが気が気でなかった。しかしロメリアの提案は、行き詰った狀況を常に打破してきた。今回もこの閉塞した事態を好転させることが出來るかもしれない。
「ロメリア様の提案か。ぜひ聞きたい」
グーデリアが頷くと、ロメリアはにめた提案を語った。その話は驚くべきものだった。とてもあり得ないようなことだった。
「それは……あり得ますか? そのようなことが?」
ロメリアの提案に、ディモス將軍は言葉を無くしそれ以上言えなかった。
戦歴の長いガンブ將軍も口を閉じ考え込んでいる。グーデリアにしても、信じられない提案だった。
「ロメリア様。本當に可能だと思っているのですか?」
「はい、今だからこそ、可能であると」
ヒュースが問うと、ロメリアは力強く顎を引く。その瞳には確信のがあった。
「ふむ……では、やってみるか」
「本気ですか、ヒューリオン王」
ディモス將軍がありえないと目を剝く。グーデリアにしても、このロメリアの提案がうまくいくとは思えなかった。
「たとえうまくいかなくても損はありません。やってみてもいいでしょう」
ヒュースの判斷は明快だった。確かに、試してみても損はない。一方でうまくいけばディナビア半島を制圧する手間が大きく省ける。
「では、やらせていただけますか?」
ロメリアの言葉に、各國の代表は頷きをもって応えた。
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