《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》93 フェリクス様の10年間 2

「えっ?」

私はびっくりしてフェリクス様を見つめた。

一國の王が、一何を言っているのかしら。

もちろんそんなことができるはずもないから、これはフェリクス様の冗談なのだろうけれど、どうしよう。どの辺りが冗談なのかが、ちっとも分からないわ。

私は曖昧に微笑むと、無難な答えを返す。

「それは、ディアブロ王國に力添えしてくれるということかしら? フェリクス様の政治的手腕が素晴らしいことは、部屋に引き籠ってばかりの私の耳にも屆いているわ」

そう言いながら、ミレナに開けてもらった窓を再び閉めてもらうとともに、溫かい飲みを淹れてもらう。

「フェリクス様、お時間は大丈夫なの? 晝食の時間だから、何か軽いものを運ばせるわね」

ここ最近、フェリクス様がお晝に現れるときは必ず、晝食を削って時間を捻出していることに気付いたため、紅茶を出し終わったミレナに目配せすると、彼は一禮して部屋を出て行った。

「ルピア」

フェリクス様はどこか悲しい様子で私の手を握ってくると、俯いたまま口を開く。

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「もちろん生まれた國ほどに心地いい場所はないから、君が母國へ戻りたい気持ちは理解できる。だが、たとえば年に何度か里帰りをするといった形ではダメだろうか?」

それはフェリクス様がディアブロ王國に一緒に付いてくる、という提案よりは現実的だったものの、私がこの國に殘ることが前提になった質問だった。

けれど、私はこの國に殘って、フェリクス様が新たな王妃を迎えるのを見たくないのだ。

そう考えて返事ができずにいると、彼は顔を上げて私を見つめてきた。

「ルピア、一旦、君が私と別れるという考えを橫に置いてもらえないかな。君の言う通り、スターリング王國國民の虹の神信仰は強い。しかし、3の虹髪の私が王となっているのだから、これ以上は必要ない。私はレストレア山脈の積雪のように白く輝く君の髪を、非常にしいと思うよ」

それは本當に優しい言葉だった。

この國において虹髪に価値があることは紛れもない事実だから、そのこと自を否定できるはずもないのだけれど、それとは異なるところで、彼は私のいいところを見出して譽めてくれたのだから。

「フェリクス様はとても優しいのね」

思ったままのことを口にすると、彼は言葉に詰まる様子を見せた。

「そうでもない。……いつだって君に優しくしたいと思ってはいるが、できていないこともあるのだから」

フェリクス様はそう言ったけれど、目覚めて以降、1つだって嫌なことをされた覚えがなかったために首を橫に振る。

「そんなことはないわ」

すると、フェリクス様は言いにくそうに言葉を続けた。

「君が私から自由になりたがっていることは理解しているが、どうしても……手放すことができない」

彼の言葉を聞いた私は、びっくりして目を丸くした。

「フェリクス様、自由になるのは私でなくあなただわ。あなたは優しくて責任が強いから、代わりとなった私に申し訳ない気持ちを抱いていて、どうにかして埋め合わせをしたいと考えているのじゃないかしら。でも、私は見返りがほしくて代わりになったわけではないの」

「分かっている。そして、私の命を救ってくれたことに心から謝している。しかし、側にいてほしいのは私のためだ!」

フェリクス様は強い口調でそう訴えたけれど、すぐに「大きな聲を出してすまない」と謝罪してきた。

それから、落ち著こうとでもいうかのように、膝の上で両手をぎゅっと組み合わせる。

「ルピア、君はこの國をじっくり見ると約束してくれた。私は10年かけて、君が心地いいとじるようにこの國を作り変えたつもりだ」

彼がこの10年で々なことをし遂げたことは、クリスタやハーラルトを始めとした多くの者から聞いていた。

いい機會だから、その話をフェリクス様の口から聞きたいなと思う。

「ええ、よかったらフェリクス様がこの10年間で何を変化させたのかを教えてもらえるかしら?」

2國を併合した話から晩餐會や夜會を開かなくなったことまで、聞きたい話はたくさんあるのだ。

「あっ、でも、フェリクス様はお忙しいのよね。お時間がある時に、改めてうかがったほうがいいわね」

フェリクス様は晝食を抜いてまで時間を作っているのだから、忙しくないはずがない。

そのことを思い出したため、慌ててそう提案したけれど、彼は首を橫に振った。

「いや、午後の予定は書類仕事だけで、急ぎの案件はない。せっかく君が聞いてくれるのだから、今話をしたい」

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