《吸鬼作家、VRMMORPGをプレイする。~日浴と料理を満喫していたら、いつの間にか有名配信者になっていたけど、配信なんてした覚えがありません~》150.相談
「幻の華……気になるわね。良いじに王都からも離れられるし応募してみましょうか」
早速付カウンターでギルドカードを渡して応募したい旨を伝えると、僕達の予想に反してその場ですぐに諾された。報酬も高いしてっきり倍率は高いと思っていたのだけれど……?
「隨分とあっさり決まるんですね……? てっきり選考があると思ったんですが」
僕達の訝しげな表に気付いたのか、付のお姉さんは困ったような表で説明をしてくれた。
「こんな事教えて応募を取り消されたら困るんですけど……人気ないんですよ。この依頼」
「そうなんですか? こんなに報酬も高いのに」
「前は沢山の方が応募してくださったんですけどね。幻の華の映像を手するというのが一種のステータスになっているのか……、毎年冬になるとどこかの貴族が必ずと依頼をしてくるんです。ただ、過去に依頼を経験した人から北の山脈の過酷さや生息する魔獣の話なんかが徐々に広まって……、今では誰も応募しなくなりました。そもそも幻の華が咲く事が稀なんです。だから『幻の華』、と。苦労して辿り著いたのに、目當ての華がなければ功報酬は貰えません。一応経費分は支払われますが、かかる日數が日數ですから、もっと近場で別の依頼をけた方が実りも良いので」
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「なるほど。幻の華の開花日數が短いとは書いてありましたが、依頼そのものの報告期限は?」
「基本的には冬の間であれば問題ありません。本當に厳しい気候の地で、調を崩したりする方も多いですから。厳しい期限を設けて無理に強行する冒険者が続出しても困りますし。先方も求めているのは映像のしさであって、早さは二の次のようです」
「そうなんですね、ありがとうございました」
そういってクエスト諾の証明書とギルドカードをけ取り、そのままヴィオラと併設されている食堂へ。
料理を載せたお盆を手に、先に座っている筈のアインを探す。手を振っている彼を見つけ、席に著いてから口を開いた。
「そうそう、さっきの話だけれど。もし華が咲いてなかったら、いっその事そのまま國境を越えて他國へ向かってみる?」
「ああ、それも良いわね。他國に本當に行けるのか気になっていた所だし」
≪おお、ついに!≫
≪我らがホープが重い腰を上げたぞ!≫
≪これで真実が明らかになる筈!≫
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何やら視聴者さん達も騒ぎ出した様子。察するに、他國への移実績がない、のかな?
「もしかして、まだ誰も行けてないの? とっくに誰かしら國をいでいると思ってたんだけど」
「掲示板と配信畫の範囲ではまだ誰も功してないみたいね。私が知ってる限りでは告知も出てないし……他國へ行ったからって全プレイヤーに対して告知が出る訳じゃないのかもしれないし、それは分からないけれど」
「もし功していないなら、妨害するなにかがあるんだよね。それがシステム的な制限なのか、単純に危険過ぎて進めないだけなのか気になるなあ。アイシクルピークを超えた先にある國と言えば、確か……えー、ヴィラ……ヴォラスク連邦王國だったっけ、そんな名前の國だったよね。でも山頂にドラゴンが居るなら、かなり迂回しないといけないだろうし……西のバルティス共和國か、東のプサルディ王國へ向かうのも手かな?」
「やけに詳しいのね。世界地図をどこかで手したの?」
「ん、オルカの町から王都に行くときに、世界地図とシヴェフ王國の地図を商人のおじさんに見せてもらったんだ。まあ一瞬だったからあんまり覚えてないし、國の名前とか間違ってるかもしれないけれど」
「一瞬でも見ればシステム上のマップに記録されるわよね?」
「え?」
「え?」
≪お?≫
≪もしや……≫
≪NPC時代に見たから上手く反映されてないとか?≫
「あー。僕のマップはオルカと王都、東の森と子爵領しか解放されてないよ。そっか、見るだけで解放されるなら全部表示されてないとおかしいね……」
「運営に報告しておきましょ。地図が見れなきゃ困るもの。……商人……盲點だったわね……」
ぶつぶつと呟いている辺り、もしかしたらヴィオラは地図の解放が出來ていないのかもしれない。図書館には見當たらなかったし、普段から僕と行を共にしているのだから、出會う前に解放していなければ今に至るまで解放出來ていない筈だ。
食事も終わったので、北への移準備をする為に買いをする事にした。夜にはクラン設立についての話し合いもある筈だし、旅支度は今のうちに済ませておきたい。ギルドを出よう……としたそのタイミングで、後ろから聲をかけられた。
「おや、蓮華くんにヴィオラさん。丁度良い所に。……しお時間をいただけますか?」
ニコニコと笑顔のダニエルさんが怖い。そしてその隣にはユリウスさん。厄介事の予がひしひしと伝わってくる。
「はい……大丈夫ですけど……」
ヴィオラは? そう視線で問うと、彼も「問題ないわ」と頷いた。
「それではいつもの部屋で話をしましょう」
うーん、結局こうなるんですね。二階に行かずに済む日が殆どない……。
≪知ってた≫
≪結局二階w≫
≪VIP待遇じゃん……≫
≪ユリウスさんの依頼かな≫
「それで、話とは?」
いつもの応接室に通され、全員が席に座ったあと。待てど暮らせどダニエルさんもユリウスさんも口を開く気配がないので、僕の方から問いかけた。
「うむ……折りって頼みがあるんだ。すまない、呼び止めておきながら心の準備が出來ていなかった。……実は、妹の事なんだ。まずはこれを見てほしい」
そう言って差し出されたのはし古びた手紙らしきもの。本當に目を通して良いのかと視線で問いかけると、ユリウスさんは強ばった表で靜かに頷いた。
ヴィオラと二人で黙読する。簡潔に言ってしまえば書だった。容的に、ペトラ・マカチュ子爵令嬢が兄であるユリウスさん宛に送ったのようだ。
「王都で妹がどのように言われているのかを調べた。単刀直に言う。妹の不名譽な噂を払拭する為に協力してほしい」
「ユリウスさんは、無理心中が事実誤認だと?」
「ああ。私はその手紙に書いてある事が真実だと思っている。相手の男を殺したのは私の父だ。その事実は消えないし否定する気もない。だが、妹はあくまで最初から最後まで被害者だった。私はそう思っている。そこにある通り、ペトラは確かに男に心は抱いていたようだ。だが……」
「だが無理心中をするほど錯してはいなかった」とでも続いたのだろうが、ユリウスさんは最後まで口に出さずに沈黙した。確かにこの手紙の容が事実であれば、彼はきちんと現実を見て、貴族の娘としての義務を果たそうとしていたように思える。
それにしても、まさかペトラ嬢がまだ未年だったとは……。王都クエストのとき、だいぶきつい言いをしてしまった事を後悔した。それどころか、ユリウスさんの言う通り無理心中ですらないのであれば僕は的外れな理由でひどい対応をした事になる。
「しかし、噂を払拭するにしても今から事実関係を洗い出すのは難しいですよね。その……妹さんもお相手も、お父上も亡くなっていますし」
「ああ。私がどれだけ『無理心中は事実ではない』と言った所で誰も信じてはくれなかった。だから、その件ではなく、ペトラの婚約相手について調べてもらいたいんだ」
「……というと、この手紙にある『侯爵様』ですね?」
「そうだ。侯爵には元々黒い噂がある。前妻三人は既に亡くなっていて、それも結婚して數年以。本來であれば四人目がペトラだったが、彼が亡くなって白紙になった。それ以降、現在までに新たな婚約者は居ない。どうやら貴族令嬢だけでなく、奴隷や平民のにも手を出しては殺めているようなんだ。だが彼らも確たる証拠もなく貴族を訴える事は出來ない。前妻三人に関しても我が家のように沒落寸前の貴族から娶っている。恐らく金で買ったのだろう、実家の方も口をつぐんでいるから、今に至っても立証出來ずにいるんだ」
「……なるほど。事は分かりましたが、どうして僕達に依頼をしようと?」
「我が家は子爵家。それに恥ずかしながら父の殘した負債を返済するのに手一杯の、明日をも知れぬ。対して相手は侯爵家。私の力でどうにか出來る相手ではない。だが貴方達は、あの男と同等の位であるバートレット侯爵家と懇意にしている。そして最速でランクD冒険者にもなった。このままいけば貴方達自も近いうちに侯爵位と同等の立場になってもおかしくない。だから折りって頼みたい。一朝一夕でなせる事だとは思っていない。數年……それ位の期間をかけて、証拠を集められればと。妹はもう戻ってこない。それでも……それでも私はあの男に罪を償わせたいのだ」
この書だけでは証拠にならないし、そもそもペトラ嬢は結局侯爵とは結婚をしていない。縁関係にならなかったのだから尚更ユリウスさんがを調べるのは難しいのだろう。
「今すぐにどうこう、という話でもないようですし、依頼をける事自は構いません。ただ、僕達はバートレット侯爵家と懇意ではありません。先日の教會の一件でちょっと話をした程度です。自主的に連絡を取れる訳でもないですし、しがない冒険者である僕達だけで調べるのも難しいと思います」
「頭の片隅に置いておいてくれれば良い。期限も否も一切問わないと誓おう。ただ、前金を払う余力もなくて……依頼とすら言えないのだが」
相當無理難題を言っている自覚があるのだろう。ユリウスさんは両手を握ったり開いたりとせわしなくかしている。隣のダニエルさんも何を考えているのか良く分からない表でこちらを見ているだけ。「依頼」ではなく「頼み」と最初に言っていた辺り、ギルドの依頼掲示板経由の依頼ではないし、子爵家の経済狀況を考えれば完全にボランティアになってしまう可能もあり得るという事だ。それでもけるか、否か。
「……そうですね……分かりました、協力します」
し悩んだものの、結局僕はける事にした。隣に居るヴィオラも頷いており、彼自も協力する事に決めたようだ。
立ち上がり、腕を差しべてくるユリウスさん。握手という事か。そう思って僕も立ち上がり、彼の腕を取ったその瞬間、元に違和をじた。視線を下げると、著の襟の下で何かがっている。……そういえば、ペトラ嬢のペンダントをにつけていたんだった。
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