《骸骨魔師のプレイ日記》侵塩の結晶窟 その三

ログインしました。ゴリゴリと侵塩を掘っている最中に、メッセージについての返信があった。まずコンラート以外についてだが、なるべくコンラートの意向を優先しないかとうような文面にしたのが良かったのか反応は上々だ。

そもそも側室選びなど、クエストの報酬で得られるアイテムのついででしかないと考える者達が大半だったというのも大きい。だが一方で、『ザ☆王國』と『Amazonas』は個人で選ぶという返事をもらった。

前者は他人に決められるのが嫌なタマの意向で、後者は立候補されたら是非ともクラン全で推したい人がいるようだ。無理強いするつもりはなかったので好きにするようにと返信しておいた。

そしてコンラート本人についてだが、やはり推したい候補者がいるらしい。まず間違いなく立候補するので、なるべく彼に投票するようにと頼まれていた。

一晩明けると立候補者は何人も現れており、そのはコンラートの予想通りにちゃんと立候補していた。名前はザビーネ・ヘルメスベルガー。侯爵のご令嬢で、コンラートはその父親である侯爵と直接大口の取引を行っているようだ。

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しかも、この取引に関しては我々も完全に無関係ではないらしい。というのも、侯爵の領地はルクスレシア大陸における穀や野菜など食糧の一大産地の一つであり、そこから輸した食糧は『エビタイ』を通じて『ノックス』にもっているからだ。

プロフィールによると信仰している主に神は『と秩序の神』アールルと『魔と研究の神』カミラ様だそうだ。アールル信仰が盛んなリヒテスブルク王國なので前者は當然として、後者のカミラ様は完全に本人の嗜好によるものらしい。そう、ザビーネ嬢はある研究に沒頭する才なのだ。

ザビーネ嬢の専門分野は魔道開発であり、侯爵邸には彼専用の研究所があるらしい。彼が作り出した魔導は多岐にわたり、利便とデザインにも凝っているそうだ。それ故に高価でもあるのだが、彼が作った魔導を所持していることが貴族のステータスとなっているそうだ。

コンラートと侯爵の取引はその大部分が食糧ではあるが、そのきっかけとなったのはザビーネ嬢のために大陸間貿易で得た珍しいアイテムを売り込んだことらしい。その取引は今も続いているどころか、どんどん量は増えているとコンラートは語る。その理由は、ここティンブリカ大陸産のアイテムにあった。

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ティンブリカ大陸産のアイテムはその有用さ以上に珍しいモノばかり。これを安定的に持ち込めるのはコンラートだけであり、そんな彼を優遇するのは無理もないことと言える。

特に最近持ち込んだ深淵産のアイテムの研究にザビーネは夢中だそうだ。その沒頭合は寢食を忘れるほどだそうで、侯爵は心配で困っているとコンラートは言う。ウチの研究區畫の連中と同等以上の熱を持って研究しているのかもしれない。

そんな研究大好きザビーネ嬢は、一般的にが興味を持つとされる事にはほとんど関心がない。寶石があれば魔道への使い方しか考えず、貴金屬は魔道の素材か裝飾にしてしまう。蕓鑑賞は売れる魔道のヒントとしてしか見ておらず、夜會は時間の無駄か百歩譲って販路の確保だと斷じていた。

唯一と言っても良いのは甘味が好きという點だが、これは脳への栄養補給だと公言している。事実、甘味以外の食事も普通に取っているし、甘味も研究に行き詰まった時にのみ接種するそうだ。

ただし、ザビーネ嬢のことで侯爵と侯爵夫人の間でし口論になることがある。それは…ザビーネ嬢の結婚についてであった。

ザビーネ嬢には兄と弟がいるので、侯爵家の存続には問題がない。兄弟間の仲も良好で、賢く優しい長男と才であるザビーネ嬢、そして武力に優れる次男とタイプが異なることも理由であろう。

この三人が結束すれば、侯爵家はますます栄えることは考えるまでもない。そう理(・)論(・)武(・)裝(・)した侯爵はザビーネ嬢に縁談が屆かないようにしていた…実際は溺する娘を嫁に出したくないからだそうだが。

しかし、侯爵夫人は違う。ザビーネ嬢のことはしているが、だからこそ結婚して幸せになってしいと考えていたからだ。娘を嫁がせるかどうかで夫婦は度々衝突しており、コンラートにも優良件があったら紹介してしいと頼んでいたようだ。

ちなみに尋ねられた時、真っ先に浮かんだのは私だったらしい。他の大陸の小國ではあるが、一國の國王となれば優良件だろう、と。あのさぁ…不死(アンデッド)との結婚を許す親なんているわけないだろ!?

閑話休題。悩める侯爵夫人の元に屆いたのが、この度の『王太子婚約者投票戦』であった。萬が一にも側室りが決まればザビーネ嬢は結婚出來るし、王家との繋がりも出來る。まさに一石二鳥であった。

夫人はザビーネ嬢に立候補するように迫った。ザビーネ嬢はこうなった母親は立候補するまでは止まらないことを知っており、加えてどうせ自分が選ばれることはないと考えたらしい。さっさと研究に戻るためにも手早く立候補の手続きを終わらせたそうだ。

プロフィール欄には顔寫真と一言もあるのだが、顔寫真を見る限り相當な人であるのは間違いない。長い金髪を腰までばした、どこか憂げな表のクールビューティだ。裏の事を知っているので憂げなのは面倒くさがっているだけなのだが、元が人なであるせいで妙な気がある上に他の候補者が笑顔ばかりということもあって意図せずして目立っていた。

さらに服裝は眼鏡に白という科學者そのものであり、ドレスばかりの中で際立っている。しかも本人のコメントは『別にどうでも良い』という誰よりも短く、誰よりも消極的な一言だ。やる気がないことはありありと伝わっていた。

ザビーネ嬢はわかっていない。こういうダウナー系にも一定の人気と需要があるということを。むしろコンラートに頼まれなかったとしても、私のような捻くれ者はザビーネ嬢に投票していただろう。

「しかしなぁ…まさか側室に選ばれるかどうかよりも投票結果の方に注目が集まるとは、流石に予想外だった」

最初、立候補させられたと知った侯爵はどうやればザビーネ嬢に票が集まらなくなるかを考えていたらしい。しかしながら、イベントの発表があったその日からまことしやかに囁かれるようになった風説がある。それは『この投票結果で令嬢達の格付けが決まる』というものだ。

一言で言うなら『投票數=令嬢の格』ということになると言われ始めたのである。ザビーネ嬢を溺する侯爵は王太子の嫁に選ばれてしくはないものの、格が低いとされるのも我慢ならなかった。

そこでコンラートに彼の人脈を使って『そこそこの格』になるように調整してしいと頼んだのである。ビジネスパートナーに恩を売る絶好の機會を逃すはずもなく、彼は侯爵の依頼を快諾し…私達に要請したのである。

「見栄が全てってじの世界だし、そんなものなんじゃない?當人は気にしなさそうだけど」

「確かに。っていうか王太子に口説かれてもスルーしそうなじだよ」

「そうねぇ。でもアイリスちゃんにわれたら飛んで來そうねぇ」

「ハハハ、言えてる」

まだ始まっていないイベントはさておき、私達は今日もまた深淵に降りていた。階層の攻略は順調であり、既に『4F』までは探索済みだそうだ。

ただし、『5F』からは塩獣(ソルティア)の上位種が現れると言う。これが中々に強く、先に『5F』に降りた者達がかなり苦戦したそうだ。そこで今日は侵塩採掘は切り上げて、塩獣(ソルティア)の上位種との戦いに挑むことにした。

同行しているのはエイジ、兎路、邯那そして羅雅亜である。彼らもまだ塩獣(ソルティア)の上位種とは戦っていないので、初見の敵との戦いを楽しみにしていた。

「そう言えば、準備って大丈夫なの?全部イザームに丸投げしたけど…」

「ああ。絶対に用意しなければならないのは品質の良い中和剤だ。それでなければ中和出來ないらしい」

「上位種の侵塩には高品質な中和剤ってことね」

「採取の重要が一段上がりましたね」

その際の注意點などは既に聞いており、最も注意しなければならないのが中和剤の品質であった。中和剤の品質が最低レベルだと効果が全くないというのだ。

それは侵塩を治療だけでなく、中和剤による攻撃に対しても同じこと。『5F』以降の階層では最低品質の中和剤は全く役に立たないようなのだ。

これを考慮すると、最下層に行く頃には更に品質の良い中和剤が必要になるだろう。幸いにも【錬金】によって低品質のアイテムを消費して一段階上のアイテムを作可能だ。それ故に高品質な中和剤を用意すること自は可能であった。

しかし、そのためには低品質のアイテムを大量が必要となる。つまり、より大量に侵塩を掘る必要があるのだ。幸いにも下に降りれば降りるほど採掘ポイントから得られる侵塩の品質も上がるので、高品質の中和剤のために延々と上層の侵塩を掘る必要はなかった。

「今日くらいは採取のことを思い出させないでくれよ。とにかく、降りるぞ」

しばらくの間、街作りの時のように侵塩掘りが続くのは確定だ。今だけはそれを忘れたい。そんなことを思いながら、私は仲間達と共に下へ下へと降りていくのだった。

次回は5月14日に投稿予定です。

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