「ああ、大丈夫……じゃ、ないな。悪い皆」

俺がやらかしたことだ。言わないといけない。

二人もそんな俺の様子から何かを察してくれたのか、神妙な面持ちで待ってくれている。

「俺が、俺が……」

言葉が詰まる。呼吸がし難い。

目を見て、顔を上げて話さないといけない容なのに出來ない。

今までこんな狀態になったことはない。だからどうしてなのか、どうすれば良いのかが分からない。

こんなの無視して話しを続けたいのに、なんで出來ないんだ？

「っ！　……っ　」

「旦那様。落ち著いてください。焦らなくても大丈夫ですから」

「そうよ。深呼吸でもしてゆっくりで良いわ。どんな話でも聞くから安心して」

いくら待っても続きを話そうとしない俺に二人は急かすのではなく、優しく待ってくれると言ってくれる。

ありがたい。そうだ落ち著かないと話を進めることも出來ない。

ゆっくり、深呼吸を……

「すぅー……はあー……」

數回深呼吸を繰り返す。深く、長い呼吸をする。

自分がやったことはもう取り返しがつかない。だからってそれを黙っていて良い訳ではない。

それが原因で仲間が危険な目に遭っている。そして次にまた危険な目に遭わないためにも報告は必要だ。

「ふぅー。二人共悪かった。もう大丈夫だ。ありがとう」

呼吸が安定するようになると、不思議と顔を上げられた。

サナが心配そうに、しかしどこか安心がり混じった顔を向けている。

その顔を見るとこっちも安心出來るのだから不思議なものだ。

「恐らくリリーがクロシオモ草の毒とは違う癥狀が出ているのは、俺がニーナの応急処置後にゲートを使って俺ののとリリーの中のを換したからだと考えられる」

落ち著いてしっかり自の過ちを告げる。

勘違いが起こらないように詳しく。

「俺は醫療の知識なんてほとんどない。だから本來ならメルマンさんに相談して行うべきだったことなんだけど、その場で勝手にやってしまった。本當に申し訳ない！」

深く頭を下げる。

本業の人に相談をせず迷をかけている。仲間であり友達である人に辛い想いをさせている。

そしてそれを俺の過失で起こしてしまった。謝罪だけで済むなんて思っていない。

怒られるのはもちろん、罵詈雑言や侮蔑の扱いをされても仕方がない。

それだけのことを犯したのだから當然だ。

「……旦那様、一つだけ確認させてください」

言葉を待つ俺に、しばらくの間を置いた後にメルマンさんが厳かに口を開く。

「その換を行ったのはどのくらい前のことか憶えておりますか？」

彼が投げかけた質問に、しの間考えて時間を割り出す。

「だいたい二十分くらい前だと思う。換の後にユキナたちと一緒にゲートを使ったから、こっちに來た頃と大差ないと思う」

優男との戦闘が思ったより長引いたからもうし長いかもしれない。

太から割り出す方法もあるのだろうけど、分単位の場合は日時計でもないと無理だろう。

いや、知識があれば出來るのか？

だから正確な時間を伝えることが出來ない。

「それでしたら三十分ほど前ですな」

十分もズレていた。覚は當てにならないな。

「なるほど……」

回答に何か思う所があったのか、メルマンさんは最後にそれだけ言って黙ってしまう。

サナは何故か何も言わない。

俺に呆れているのか失しているのか。言葉を失わせるほどの衝撃だったのか。

どんな顔で俺を見ているのか、怖くて見られない。『天眼』はすでに解除している。

メルマンさんに確認を取った辺りから『天眼』の視點が消えたから、多分その時に無意識に解除してしまったのだろう。

顔を見ようとしていたのに勝手に瞑った目を開かない。

どうしようもないな、俺は……

「旦那様」

自嘲していると、最後の言葉からしばらくの間黙っていたメルマンさんが呼ぶ。

その聲はさっきの質問の時と同様靜かで重い。

そしてそれを聞いた瞬間、が強張る。