《骸骨魔師のプレイ日記》侵塩の結晶窟 その四

『侵塩の結晶窟』の『5F』に降りるまでの道中はあまり苦戦しなかった。我々が最も早く『侵塩の結晶窟』にったので、現れる塩獣(ソルティア)の數はとても多かった。

だが、『5F』に降りるまでに遭遇するのは通常の塩獣(ソルティア)ばかり。中和剤を適度に攻撃にも使いながら降りれば大して苦戦はしなかった。

「やっぱりここだと乗って戦えないわねぇ」

「流石に騎乗のメリットよりもデメリットの方が大きいね」

珍しいことに今日の邯那は羅雅亜に騎乗していない。というのもここは大きいが所詮はビルの中。騎乗して戦うには広さが足りないのだ。

邯那は騎乗して戦うことが前提という職業(ジョブ)ばかり選択していることもあって、騎乗していると様々な恩恵がある。しかし、あまりにも狹いので騎乗して戦っては、他の仲間達の邪魔になってしまうのだ。

仕方がないので邯那は地面に立って戦っているし、羅雅亜は私と共に後方から魔で援護に徹している。騎乗していなければ威力が落ちたり使えなかったりする武技が多く、本來の戦闘スタイルよりも弱化していた。だが闘技大會で優勝する実力は伊達ではなく、戦力としては十分であった。

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「たまには降りて戦う練習をしておくのも悪くはあるまい?」

「それにも限度があるわぁ」

「まあまあ、そう言わないで。明日はどこかを思い切り走り回ろうよ」

不貞腐れる邯那を羅雅亜がなだめながら私達は『5F』に到著した。この階は全て服屋らしく、どの店もバックヤードにあったのは服か布ばかりだったと聞く。無理して探す必要はないだろう。

それよりも最優先するべきは塩獣(ソルティア)の上位種との戦いである。どんな魔なのだろうか?とても楽しみであった。

「魔力探知(マジックソナー)…ふむ、數はないが確かにいるな。孤立している個がいるから、そっちに行こう」

私が敵の位置を把握すると、ちょうど良く一だけで行している個を発見した。まずは様子を見るためにもその個を狙うとするか。

狙いの個は私達が目視可能な位置にまで來た時、こちらに気付いて振り返る。誰一人として隠が得意な者がいない上に、重裝備のエイジと邯那は鎧の音を立てているし羅雅亜は蹄の音を鳴らさずに歩けないのだ。気付かれるのは折り込み済みであった。

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「元々不意打ちするつもりはないのだがな。それにしても…」

「これが上位種ですか」

「へぇ?武持ちなのね」

兎路が言う通り、上位種の塩獣(ソルティア)は武を持っていた。ただし、それは古代の武だとか連中が作った武だとか、そんな大層なモノではない。単に武の形に固められた侵塩というだけなのだから。

今、目の前にいる塩獣(ソルティア)の武裝は片手剣に円盾というオーソドックスな戦士のスタイルだ。全的なの大きさは一回り大きくなっていて、頼りない印象をけた通常の塩獣(ソルティア)よりも逞しかった。よし、とりあえず【鑑定】はしておこうか。

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種族(レイス):塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン) Lv73

職業(ジョブ):侵蝕剣士 Lv3

能力(スキル):【剣

【盾

力超強化】

【筋力超強化】

【防力超強化】

用超強化】

【半流

【侵蝕】

【連係】

【限定武:侵塩】

【限定武強化:侵塩】

理耐

【魔

【狀態異常耐

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この上位種は塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)というらしい。見た目のままの捻りのない名前だが、この方がわかりやすいので問題はなかった。

塩獣(ソルティア)の持っていた能力(スキル)はそのままに、戦士の能力(スキル)と使うための武を生する能力(スキル)が増えている。侵塩でしか武が作れない代わりに、その武を強化出來るようだ。

「生には気をつけろよ。當たれば浴びるよりも速く侵塩の結晶が生えてくるらしいからな」

「わかりました!」

そう言ってエイジは大盾を前面に構えつつ、大きく踏む込んで突撃した。対する塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)はエイジの突進を盾でけ止め…ようとして吹っ飛ばされた。

エイジの重量とパワーが乗ったシールドバッシュは、羅雅亜に騎乗した邯那の一撃にも匹敵する。正面からけ止めるという選択をしたのは大間違いであった。

「ほう?あれでヒビがるだけなのか」

「結構頑丈ね。武を叩き折ろうかと思ってたけど、止めとくわ」

ただ、あのシールドバッシュをまともにけたのに塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)の持つ円盾はヒビがっただけで壊れていなかった。それだけの強度がある武を自由に生出來るというのはそれだけで脅威であろう。兎路は剣を叩き切るつもりだったようだが、円盾の強度を見てそれを諦めていた。

しかも通常の塩獣(ソルティア)のように侵塩を撒き散らすことも可能だ。今もエイジの追撃を防ぐために剣の切っ先から侵塩を噴して牽制している。浴びれば魔力が減ってしまう関係上、無理が出來ないエイジは追撃を諦めて守りに徹していた。

「橫がガラ空きね」

「えいやっ!」

エイジが無理をしなかったのは、する必要がなかったからでもある。巨漢であるエイジの背後にいると、羅雅亜ですらも前だと完全に隠れてしまう。そうやってかに接近していた兎路と邯那は左右から挾み込むように襲い掛かった。

【剣】と【盾】は上位の能力(スキル)になっていない程度の腕前で二人の攻撃を完全に防ぐことが出來るはずもない。塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)は剣で兎路の雙剣の一本を防げたが、もう一本によってを抉られてしまう。邯那の方天戟による一撃を円盾でけ止めたが、ヒビがっていたこともあって砕け散って下にあった腕まで斬り落とされてしまった。

「ここだな」

「そうだね」

そのタイミングで私と羅雅亜は魔を放つ。兎路によって抉られていた部分が完全に吹き飛び、中にいた塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)の本出した。

やはり本は紐のような形狀だが、ただの塩獣(ソルティア)よりもかなり太い。綱引きに使われる荒縄ほどはあるだろうか。一段階進化するだけでこれほど太くなるということは、さらに上位種になったらどうなるのだろうか?

塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)は侵塩で再び本を隠したが、油斷さえしなければ苦戦はしなさそうだ。このまま畳み掛けよう。

「おお、別の形狀の盾も作れるのか」

塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)もやられっぱなしではないらしい。斬られた腕部分と砕かれた円盾を再生している。しかも、その際に作られた盾の表面には小さな棘が幾つも生えていた。

どうやら作可能な盾の形狀は固定ではないらしい。だが、エイジの持つ大盾の方が守りには向いているのに、盾の大きさ自は変わっていない。大型の盾は作れないのか、それとも取り回しが悪くなるから作らなかっただけなのか。正確なことはわからないが、武を破壊しても効果は薄いことがよく分かる一幕であった。

「盾を使って何かやって來る可能は高い。気を付けてくれよ、エイジ」

「任せて下さいよ!」

そこからも基本的な戦い方は変えることはなかった。エイジがけ止め、兎路と邯那が崩し、私と羅雅亜で魔を放ってダメージを稼ぐ。崩し役と攻撃役がれ替わることもあったが、基本的で堅実な戦法によって塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)の力は瞬く間に減って行った。

塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)も無抵抗だった訳ではない。盾の棘を飛び道として発したり、切っ先から侵塩を噴しながら剣を振り回したりと工夫は見せていた。

しかし、エイジの守りを突破出來るほどではない。何かどんでん返しが起こることもなく、我々は塩獣(ソルティア)剣士(ソードマン)を倒してアイテムを剝ぎ取った。

「イザーム、何が取れたの?」

「侵塩と魔石だけ。ハズレだ」

「なら別の個を倒すだけですね」

エイジの言う通り、私達は新たな塩獣(ソルティア)の上位種を探す。次に目を付けたのは近くにいる群れである。數は三とこちらよりもない。安全を確保しながら戦うにはちょうど良いだろう。

「今度はあれだな」

「あらあら、隨分と違うのねぇ」

「そういう生なんだろうね」

次の獲である塩獣(ソルティア)の上位種は、狼のような四足獣である。そう、塩獣(ソルティア)は進化した際に人型のままだけでなく、獣型にもなるのだ。

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種族(レイス):塩(ソルティア)偽獣(ミミックビースト) Lv71〜74

職業(ジョブ):侵蝕獣 Lv1〜4

能力(スキル):【牙】

【爪】

力超強化】

【筋力超強化】

【防力超強化】

用超強化】

【半流

【侵蝕】

【連係】

【変形:獣】

理耐

【魔

【狀態異常耐

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獣型は塩(ソルティア)偽獣(ミミックビースト)というらしい。報によると人型は『剣士(ソードマン)』の他にも『戦士(ウォリアー)』や『魔師(マジシャン)』などが、人型以外ならば『偽鳥(ミミックバード)』に『偽蟲(ミミックインセクト)』などが確認されているそうだ。

強さに大差はなく、侵塩に注意しておけば地上の魔を相手する時のように立ち回るだけで良いようだ。さて、託はここまで。そろそろ君達にもアイテムになってもらおうか!

次回は5月18日に投稿予定です。

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