《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》912 分岐點
HPが半分を割り込んだことで悪霊の形態変化発生して手が生えてきた――しかも頭頂部から!――ことで、迫したものから絶対に笑ってはいけない戦いへと変貌してしまった。
とはいえ、悪霊の三つ編み風な手ヘアーがクリティカルヒットしているのはボクだけなのよね……。みんな、我慢しなくてもいいのよ?いや、戦闘中だから笑わないですむに越したことはないのだけれどさ。微妙に納得がいかないところがあるというかなんというか、ぐぬぬ……。
その一方で戦いそのものは一進一退となっていた。頭に手が追加されたことと倒れ込むというきが加わったことで背面(あちら)側にいるうちの子たちからも一方的な攻撃ができなくなってしまったのだ。
その時には正面(こちら)側が手薄になるだろう?そこは敵も學習しているらしくて、腕を振り回して近寄らせないようにしていたのですよ。
まあ、遠距離からは安全かつ一方的に攻撃できたのでそれぞれ魔法攻撃に切り替えるなり、開き直って回復に時間をあてたりしていたけれど。
Advertisement
「ですが、このままではMPが盡きてしまいそうですの」
「うん。そこが問題だよね」
特に闘技でもMPを使用していたボクとミルファは殘り四割を下回っていた。同じく前線組のエッ君にリーヴやチーミルも似たようなものだろう。
そして間の悪いことにイベント中ということで『異次元都市メイション』での購量にも制限が付けられてしまったため、ついに薬系のアイテム類の殘りも心もとなくなってきていた。
こんなことなら狀回復薬(ポーション)にカレーフレーバーを付けたりカレー味の非常食(レーション)を作ったりしていないで、アイテム類を大量に製作しておけばよかったかしらん。と、これは後になってからだからこそ言えることでもあるのだよねえ……。
カレー大好きなNPCはパーティーメンバーたちだけではなかったのです。異世界の勇者だったという英さんは言うに及ばず、なんとスラットさんまでカレーにはまってしまったのだ。
「ああ、一いつ以來なのだろう。久方ぶりに人間らしい心を取り戻せている気がするよ」
などと幸薄げな笑顔で言われてしまっては、々振舞うしかないというものですよ。
なお、一番の好みは『金曜日の海軍式カレー』だった。いや、どこまで協賛のを広げているのかと。なにが運営をそれ程カレーに駆り立てるのかと小一時間問い詰めたくなったわ。
話が盛大にわき道にそれた上に、あらぬ方へと繋がる獣道を猛然とダッシュして行きそうなのでいったん元に戻すとしまして。そんな切実な事もあったために、ボクたちは今かなり切迫(せっぱく)したアイテム不足に陥りつつあった。
「回復ができなくなると勝てる見込みが一気に薄くなっちゃうと思うから、ボクとミルファが持っているMP回復系のアイテムは全部ネイトに渡しておこうと思うんだけど」
攻撃よりもけん制が主目的なことがバレバレな悪霊のパンチを避けながらミルファに方針を打診してみる。あ、もちろん嫌がらせでカウンターを叩き込んでいますよ。嫌がらせ程度にしかなっていないともいうけれど。
「大技を連発して勝負をかけるという手もありますわよ?」
同じようにチクチクしていた彼から逆に提案が返ってくるが、これには首を橫に振ることで否定の意を示す。
「殘念だけど、今の段階から削り切れるとは思えないよ。これがせめて殘り二割以下ならチャレンジしてみたんだけどね」
現時點での悪霊のHPは三割強といったところかな。なんだかんだで結構減らせているけれど、ここから最後まで走り抜けられるのかと問われると、「ほぼ間違いなく途中で息切れしてしまうことになる」というのがボクの答えだ。
「ここはダメージ効率を下げても著実に戦っていくべきかな」
もはやこれまでで死なばもろともな自も含めて、HPの殘りがなくなっていくほど攻撃が苛烈になっていく、というのはゲームではままあることだから。
今から総攻撃をしかけても倒しきなかった場合、強力な反撃をけることになってしまうだろう。手痛いどころではすまずに壊滅にまで持っていかれてしまうかもしれない。切り札は止めを刺すことができると判斷できるまで取っておくべきなのだ。
「敵の戦意がくじけるなら大技をぶつけるのもアリだとは思う、よ!……でも、こいつ相手だと意味がなさそう、でしょう!」
チクチクちまちまと攻撃をしながらミルファとの會話を続ける。意思の疎通及び意見の統一は大事なのです。そしてここに割ってってこないということは、ネイトはこちらの決定に従うつもりだろう。
「無理をして後もう一歩が屆かずに逆転負けしてしまっては目も當てられませんわね。了解ですわ。今はしずつダメージを蓄積させていくことに集中いたしますの」
「引き続き負擔をかけちゃうけどよろしく……、って危な!?」
ちょっと話し合いの方に意識を割り振り過ぎてしまったのか、気が付けば目の前を悪霊の腕が通り過ぎていった。なびいた髪にかすめてチリッ!と音を立てていた。狀況を忘れて「うおー!バトルものの年漫畫みたいだ!」とちょっぴり興したのはです。
「ごめん、いったん下がる!」
決定した方針通りネイトに手持ちのアイテムを渡すため、仕切り直しの意味も含めて悪霊から距離を取る。後から思えば、ここが分岐點になったのだと思う。
「ネイト、聞こえてた?」
「はい。しばらくは苦しい時間が続くことになりますね」
「うん。でも、はやって大失敗するよりはよっぽどマシだよ。という訳でボクも頑張ってくるよ。ネイトも回復で忙しくなっちゃうと思うけど任せたからね」
「もちろんです。まあ、あまり無茶な真似はしないでもらいたいところですが」
「死なないように気を付けるー」
あえて軽い調子で言い殘して、前線のミルファの隣へと舞い戻る。
「ぶっふう!?」
……つもりだったのだが、例の頭頂部三つ編み風手をバッチリ見てしまい、思いっきりふき出して足が止まってしまう。
時間にすればほんの數秒、距離にすればわずか數歩。
だけど、……屆かなかった。
「あ……」
何かがボクの真橫を吹っ飛んでいく。それがミルファのだと気が付いたのは彼のが床にぶつかり転がっていく音が聞こえた後のことだった。
ショックで頭の中は真っ白に、目の前が真っ暗になる、そんなことが本當にあるものなんだね。
大事なものがごっそりと抜け落ちていくというか、まるで心の中が空っぽになったようだった。
【書籍発売中】【完結】生贄第二皇女の困惑〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜
【書籍版】2巻11月16日発売中! 7月15日アース・スターノベル様より発売中! ※WEB版と書籍版では內容に相違があります(加筆修正しております)。大筋は同じですので、WEB版と書籍版のどちらも楽しんでいただけると幸いです。 クレア・フェイトナム第二皇女は、愛想が無く、知恵者ではあるが要領の悪い姫だ。 先般の戦で負けたばかりの敗戦國の姫であり、今まさに敵國であるバラトニア王國に輿入れしている所だ。 これは政略結婚であり、人質であり、生贄でもある。嫁いですぐに殺されても仕方がない、と生きるのを諦めながら隣國に嫁ぐ。姉も妹も器量も愛想も要領もいい、自分が嫁がされるのは分かっていたことだ。 しかし、待っていたのは予想外の反応で……? 「よくきてくれたね! これからはここが君の國で君の家だ。欲しいものがあったら何でも言ってくれ」 アグリア王太子はもちろん、使用人から官僚から國王陛下に至るまで、大歓迎をされて戸惑うクレア。 クレアはバラトニア王國ではこう呼ばれていた。——生ける知識の人、と。 ※【書籍化】決定しました!ありがとうございます!(2/19) ※日間総合1位ありがとうございます!(12/30) ※アルファポリス様HOT1位ありがとうございます!(12/22 21:00) ※感想の取り扱いについては活動報告を參照してください。 ※カクヨム様でも連載しています。 ※アルファポリス様でも別名義で掲載していました。
8 73勇者パーティーに追放された俺は、伝説級のアイテムを作れるので領地が最強になっていた
【今日の一冊】に掲載されました。 勇者パーティーから追放された俺。役に立たないのが理由で、パーティーだけでなく冒険者ギルドまでも追放された。勇者グラティアスからは報酬も與える価値はないとされて、金まで奪われてしまう。追放された俺は、本當に追放していいのと思う。なぜなら俺は錬金術士であり、実は俺だけ作れる伝説級アイテムが作れた。辺境の領地に行き、伝説級アイテムで領地を開拓する。すると領地は最強になってしまった。一方、勇者もギルドマスターも栄光から一転して奈落の底に落ちていく。これは冒険者ギルドのために必死に頑張っていた俺が追放されて仲間を増やしていたら、最強の領地になっていた話です。
8 54シェアハウス【完】
『女性限定シェアハウス。家賃三萬』 都心の一等地にあるそのシェアハウス。 家賃相場に見合わない破格の物件。 そんな上手い話しがあるって、本當に思いますか……? 2018年3月3日 執筆完結済み作品 ※ 表紙はフリーアイコンを使用しています
8 96久遠
§第1章クライマックスの35話から40話はnote(ノート)というサイトにて掲載しています。 あちらでの作者名は『カンジ』ですのでお間違いなく。表紙イラストが目印です。 ぜひぜひ読んでください。 また第2章は9月1日から更新します。第2章の1話からはまたこちらのサイトに掲載しますので、皆様よろしくお願いいたします。失禮しました~§ 「君を守れるなら世界が滅んだって構いやしない」 この直來(なおらい)町には人ならざるものが潛んでる。 人の生き血を糧とする、人類の天敵吸血鬼。 そしてそれを狩る者も存在した。人知れず刀を振るって鬼を葬る『滅鬼師』 高校生の直江有伍は吸血鬼特捜隊に所屬する滅鬼師見習い。 日夜仲間と共に吸血鬼を追っている。 しかし彼にはもうひとつの顔があった。 吸血鬼の仲間として暗躍する裏切り者としての顔が………
8 1982度目の転移はクラスみんなで(凍結中)
主人公、黒崎仁は元勇者だった しかし今はいじめられっ子 そんなある日突然、教室に魔法陣が現れた そして黒崎仁はまたもや勇者になって世界を救うことになってしまった やっと移動してきました!
8 56コミュ障だけど転生したし、なんだかいけそうな気がします!!
ある日から不登校になってしまって家でゲームばかりしていた少女にゲームの運営からあるプレゼントが屆く。 「プレイ時間が一定數以上のプレイヤーの中で抽選してあなたが當選しました」 中には可愛いスキンとかわいい裝備しかも能力はどれも飛び抜けていた。 ついでに頼まれた変な質問が多いアンケートに答えていざログイン! ゲームのバグかそれとも………ってやっぱり私転生しちゃったの!? 私、何年も人と會話すらしてない、というかそもそもコミュ障だから人に話しかけられないんだけど!! 神様からもらったかわいい見た目と飛び抜けた能力の裝備があるから平気?ほんと? 確かに、せっかくつまらない現実じゃなくなったんだし!今までいなかった友達も欲しい!勇気、出してみようかな。そう思うとなんだかいけそうな気がしてきた!! 時には癒し?時にはピンチ!?いきなり異世界にとばされた少女がコミュ障ながらも色んな出會いをして沢山の人と仲良くなっていくお話です。 小説家になろうでも書いてます。
8 81